作成日
:2023.12.08
2023.12.08 15:45
2023年12月のポンド相場は、要人発言と英金利に注目!
円高とポンドの上値の重さによりポンド円はレンジまたは下落予想
12月のポンド円は、クロス円の上値の重さからレンジもしくは下落が強くなるのではないかと予想しています。
欧米と日本の金融政策の差から円売りが進み、先物市場における円売りポジションは2017年以来の水準まで積み上がっています。ただし、欧米が利上げサイクルを終了しているのに対して、日本では来年前半にもYCC(イールドカーブ・コントロール)の撤廃やマイナス金利の解除が予想される展開となっています。
したがって積み上がっている円売りポジションは解消に向かうと考えています。また来年の利下げをマーケットが織り込み始めたことで米国の金利が低下し始めています。YCCの柔軟化で金利が高止まりしている日本と、日米の金利差は低下傾向にあり円売りスピードは低下しています。
円売りの要因である貿易赤字は、エネルギー輸入価格が低下傾向にあることから縮小すると予想しています。
原油価格は9月に年初来高値93ドルを付けましたが、その後OPECプラスの減産調整が進まないことなどから、2023年11月には75ドル付近まで低下しています。11月後半に予定されていたOPECプラス閣僚級会合も延期されたことで、さらに原油価格が低下する可能性があるのです。
エネルギー輸入国である日本にとって原油価格の低下は、輸入価格の低下つまり貿易収支改善につながります。したがって原油価格の低下によって実需筋による円売りドル買い取引の減少につながると考えられます。
原油価格と日本の金融政策見通しに注目!
11月末時点におけるポンド円の日足チャートです。11月のポンド円は、レンジ相場を形成しています。
画像引用:Tradingview
画像引用:Tradingview
利下げ織り込みのドル安により、ポンドドルは上昇!
12月のポンドドルは、米国の金利低下によるドル売りが進み上昇すると予想しています。
12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、金利の見通しが確認できるドットチャートが発表されます。結果次第では一時的に金利は上昇する可能性がありますが、マーケットは来年前半での利下げをすでに織り込み始めています。
またパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が「金利の上昇により引き締め効果」と発言しました。そのことからFRBによる利上げサイクルは終了したとマーケットは受け止め、利下げ時期に注目が移っています。
11月に発表された雇用統計やCPI(消費者物価指数)からは物価低下、ISM製造業景況指数やPMI(購買担当者景気指数)などの景況感を表す指標からは米国経済の縮小が確認されています。
欧州などと比べれば経済の縮小は限定的だと考えられます。しかし元々経済の縮小が織り込まれていた欧州と強い経済が確認されていた米国では、経済縮小の織り込み度合いに違いがあり、ドル売りが進んでいます。
英欧の要人発言からは「利下げについて議論していない」「時期尚早」などと否定的な発言が出ています。しかし米国のウォラーFRB理事は利下げについて「インフレ率がさらに数カ月間低下し続ければ、政策金利を引き下げる根拠は十分にある」と発言しています。
利下げに関する発言が出始めたことで利下げ織り込みが一気に進み、米金利は大きく低下しドル売りが進んでいます。
来年の利下げを否定するような材料(雇用市場の急激な逼迫や物価の大幅上昇など)が出てこない限り利下げの織り込みが徐々に進み、ドル売りが進んでいくと予想しています。最大の利下げ否定材料として注目しているのはドットチャートであり、前回よりも上方修正されていないかに注目です。
前回と同様の予想や下方修正されていた場合は、利下げ織り込みが加速すると考えています。したがってドル安が進み、ポンドドルは上昇すると予想しています。
12月FOMCのドットチャートと米金利の動向に注目!
11月末時点における、ポンドドルの日足チャートです。ポンドドルは、上昇トレンドを描いています。
画像引用:Tradingview
画像引用:Tradingview
金融政策に関しては先月同様にベイリーBOE総裁をはじめ英中銀メンバーの多くは据え置きを支持、10月の金融政策発表時よりも11月における据え置き支持票は増えていました。このことから英中銀の利上げサイクルは終了したとの見方が濃厚となり、マーケットの注目は利下げ時期に移ることとなりました。
英国の経済は、第2四半期・第3四半期ともにゼロ成長となっています。良くいえばマイナス成長ではなかったといえますが、悪くいえばリセッションと隣り合わせの状況です。
物価に関しては前年比11.1%をピークに低下傾向が続き、最新の数字は前年比4.6%となっています。ただし、変動の激しいエネルギーや食品を除いたコア指数は5.7%とやや低下傾向にはあるものの高止まりしています。
この状況から英中銀としては、これ以上引き締めて景気を悪化させたくないという思いと、引き締めた状態を維持し物価を抑制したいという思いが交錯している状況と考えられます。
米国ではパウエルFRB議長が米金利の上昇は引き締め効果があると発言したことで、利上げサイクル終了をマーケットが意識しています。以降、来年の利下げを織り込み始めたことで米金利は低下、せっかくの引き締め効果が後退しています。
英中銀は米国のような状況を避けるため、マーケットに対してタカ派姿勢を強めて、利上げサイクルの終了と利下げを織り込ませないように動いてくると予想されます。
したがって、経済指標の結果から利上げ終了や来年の利下げにつながるような結果が出てきても、要人発言からはタカ派発言が出てきて、結果的に方向感に乏しい状況になると予想しています。
12月のポンドは、方向感に乏しい1か月になると予想しています。
作成日
:2023.12.08
最終更新
:2023.12.08
英ポンドを中心にトレードを行う大学生トレーダーで、2021年の合計利益は4,000万円にのぼる。公式Twitterでもテクニカル分析等の情報発信を行い、フォロワー数は5,000人以上。ファンダメンタル分析とテクニカル分析を組み合わせた手法を用い、Myforexでは月初にポンド通貨ペアの戦略を連載している。
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