作成日
:2022.10.18
2024.01.07 05:42
USDTやUSDCのステーキングに対応しているプラットフォームは数多くありますが、預け先や利用するサービスの種類などで利率は変わります。
そこで本記事では、日本語対応の主要な仮想通貨(暗号資産)取引所で、USDT・USDCをステーキングを利用した場合に得られる利率を比較しています。さらに、ステーキングする上で知っておきたいリスクについても解説します。
前提として、「ステーキング」には複数の意味があることを理解しておきましょう。意味を理解しておくと、より適切に、より安心してサービスを利用できます。
「USDTをステーキングする」といった場合、ステーキングが指すのは、保有資産の貸し出しにより金利を得るサービスです。このサービスには複数の呼び名があり、「レンディング」や「セービング」などの表現が使われることもあります。
USDT・USDCのステーキング先を探す上では、レンディングやセービングを提供しているプラットフォームも資産の預け先の候補になるでしょう。
PoS(プルーフ・オブ・ステーク)のステーキングとは、ブロックチェーンの取引承認システムに貢献して報酬を得る仕組みのことです。
保有通貨を預けて報酬を得るという点では共通していますが、異なる点もあります。
まず、PoSのステーキングで預け入れができる通貨は、PoSを採用するブロックチェーンのネイティブトークン(ETHやBNBなど)のみです。USDTなどのトークンでは、PoSのステーキングは行えません。
また、報酬の出所という観点でも異なります。PoSのステーキングの場合、一般的にはトランザクション手数料やブロックチェーンが新規に発行する仮想通貨(暗号資産)が報酬のもとになります。一方、レンディングと同義のステーキングの場合、報酬は借り手から支払われます。
PoSは、ブロックを生成するためのルール「コンセンサスアルゴリズム」の1つです。PoSは、ビットコインなどが採用するPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と比較して電力消費が少ない点や、拡張性が高い点などで注目されています。
USDTやUSDCをステーキングした場合、利率はどれくらいなのでしょうか。ここでは日本語に対応している主要な仮想通貨(暗号資産)取引所ごとに、サービス名と年利を紹介します。(2023年5月11日現在)
(バイビット) |
・積立ステーキング:0.60~5.50%
・定期ステーキング:2.50~3.00%
|
---|---|
(バイナンス) |
・Simple Earn :1.97%(※1)
・DeFiステーキング :0.90%
|
(ゲート) |
・ステーキング(フレキシブルターム):1.75%
・ステーキング(7~90日間ロック):1.00%~3.20%
・暗号資産貸付 : 3.65%
|
(メクシー) |
・セービング:0.80〜8.80%
・フレキシブルEarn:0.95%
|
(ビンエックス) | 取り扱いなし |
(ビットゲット) | セービング:0.30~8.00% |
(コインイーエックス) | 金融口座:2.6278% |
(※1) 500USDTまでは1.50%の金利が上乗せされる
(バイビット) | 積立ステーキング:1.80~8.00% |
---|---|
(バイナンス) | Simple Earn :2.72% |
(ゲート) | ステーキング(フレキシブルターム):2.63% |
(メクシー) |
・セービング:0.85%
・フレキシブルEarn:1.25%
|
(ビンエックス) | 取り扱いなし |
(ビットゲット) | セービング:0.30~8.00% |
(コインイーエックス) | 取り扱いなし |
年間の獲得報酬量を表す単位には、主にAPRとAPYが用いられます。APRは複利を考慮せずに計算されますが、APYの計算では複利が考慮されます。そのため同じ報酬額でも、どちらを用いて表すかによって数値が変わります。単位に何を用いるかは取引所によってさまざまです。
様々な仮想通貨(暗号資産)取引所がUSDTやUSDCのステーキングサービスを提供しています。ここでは、国内でも特に人気の高いBybit(バイビット)とBinance(バイナンス)のサービスの特徴を紹介します。
BybitでUSDTやUSDCのステーキングを行うには、積立ステーキングもしくは定期ステーキングを利用することになります。
積立ステーキングは、期間の制限なくずっと預け入れることができ、さらに好きなときに引き出しができる点が特徴です。一方、定期ステーキングはステーキング期間が固定されています。いつでも払戻しができる訳ではありませんが、基本的に年利は高く設定されています。
Bybitでは、過去に利用者数1,000万人突破記念キャンペーンを実施し、最大12%ものUSDTの積立ステーキング年利が提供されたこともあります。高い利率で運用できるキャンペーンが定期的に開催されるので、積極的に利用したいですね。
BinanceでUSDTやUSDCのステーキングを行うには、Simple EarnもしくはDeFiステーキングを利用することになります。
Simple Earnには期間が決まっているものと決まっていないものがありますが、USDT・USDCの取り扱いがあるのは、預け入れ期間の縛りがない「フレキシブル」です。Bybitの積立ステーキング同様に、いつでも好きなときに預け入れと引き出しができます。
Binanceでは、Bybitほど高い年利は提供されていませんが、預け入れ額に関係なく固定利回りで運用できる点はメリットだといえるでしょう。
また、DeFiステーキングを利用すると、BinanceがDeFiプロジェクトへの参加を代行してくれ、ユーザーは運用益を受け取れます。
仮想通貨(暗号資産)取引所が提供するステーキングサービスを比較しましたが、レンディングに特化したプラットフォームも存在し、USDT・USDCのステーキングはそこでも行えます。レンディングプラットフォームの特徴を中央集権型と分散型に分けて紹介します。
代表的な中央集権型のレンディングプラットフォームには「nexo(ネクソ)」などがあります。2023年5月11日現在、nexoでUSDT・USDCを預けて得られる年利は以下の通りです。
仮想通貨銘柄 | 年利 |
---|---|
USDT | 4.00〜12.00% |
USDC | 4.00〜12.00% |
年利は比較的高いといえます。トレード機能ではBybit(バイビット)などの取引所に劣るものの、取引所同様に管理者が存在するため、初心者でも使いやすいサービスです。
代表的な分散型のレンディングプラットフォームには、「Aave(アーベ)」や「Compound(コンパウンド)」などがあります。2023年5月11日現在、USDT・USDCを預けて得られる年利は以下の通りです。
仮想通貨銘柄 | 年利 |
---|---|
USDT | 2.53% |
USDC | 2.56% |
仮想通貨銘柄 | 年利 |
---|---|
USDT | 2.86% |
USDC | 2.01% |
本人確認(KYC)なしで誰でも利用できる点や高い透明性が、分散型プラットフォームの魅力です。ただし、外部ウォレットでの資金管理や技術面の学習が必要になります。
KYCとは、「Know Your Customer」の略で、取引者が本人であることを確認する手続きを指します。一般的には身分証明書、銀行取引明細書、公共料金請求書など公的な書類の提出が必要で、場合によっては身元確認なども行われます。
ステーキングはトレードと比べて安定的に資産を増やせる手段です。また、USDTやUSDCなどのステーブルコインは、価格変動が起きないようにデザインされています。しかしリスクは存在するので、事前に確認しておきましょう。
中央集権型のプラットフォームを利用する場合、中央の管理者を信用することになります。管理者が安全にサービス運営をしてくれれば、利用者がトラブルに見舞われるリスクは低いです。
しかし、実際にどのように運営されているかを知ることは難しく、管理者側の過失でユーザーが不利な状況に立たされる可能性はあります。大手レンディングプラットフォームだったCelsius Network(セルシウス・ネットワーク)が出金を停止するといったことも実際に起こっています。
Celsius Networkは中央集権型の仮想通貨レンディングサービスです。経営破綻に伴い、大量に抱えるstETHの精算リスクが高まりました。最終的に破産申請しましたが、stETHの価格崩壊は起きませんでした。
管理者が存在するおかげで、初心者でもサービスが使いやすくなりますし、手厚いサポートを受けられますが、デメリットもあるのです。
分散型プラットフォームを利用する場合は、管理者ではなくスマートコントラクトを信用することになります。
スマートコントラクトは契約を自動履行するプログラムです。自動販売機でたとえると、「利用者が必要なお金を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」という二つの契約条件が満たされた場合に、自動的に「その飲料を利用者に提供する」という契約が実行されます。
スマートコントラクトはコードに従って動くプログラムなので、それ自体が不正を働くことはありません。しかし、脆弱性(セキュリティ上の弱点)に目を付けたハッカーに攻撃を仕掛けられることがあります。それにより、利用者の資金が抜き取られてしまう事態が度々起こっています。
中央集権型サービスにも分散型サービスにもリスクはあるので、どちらを利用するにしても、信頼できるプラットフォームかを自分で調べることが重要です。預け入れ先を複数のプラットフォームに分けることも、リスクを軽減してくれるでしょう。
仮想通貨(暗号資産)市場で広く利用されているUSDTですが、マーケット参加者からの信頼が失われれば、一気に価値が下落する恐れもあります。過去には、発行元のテザー社が監査結果の詳細を公開しなかったことで信用不安につながり、USDT価格が不安定になったことがあります。
近年、テザー社は担保資産の健全化に取り組んでいます。しかし2023年5月現在でも、担保資産には米ドルや米国債の他に、短期の社債やローン、その他の投資が含まれています。また、保有している社債の社名が公表されていないため、完全な透明性を確保しているとは言い難いでしょう。
USDCは、アメリカに拠点を置くCircle社が発行するステーブルコインです。準備金内訳を詳細に公開していることや、米国の上場会社であるCoinbase(コインベース)がバックについていることなどから高い信頼性を誇っています。
しかし、現状より広く利用されているのはUSDTです。USDTはレンディング以外の資産運用や取引にも用いられていますが、それと比べるとUSDCは利用できる範囲が限定的です。過去にはUSDCの運営陣がトルネードキャッシュ規制に際して、一部アカウントの凍結を行ったことで、USDCに対して不信感を持っている人もいます。
また、Circle社は2023年3月に経営破綻したSVB(シリコンバレー銀行)に、準備金の一部を預けていました。それにより準備金の棄損が懸念され、一時期米ドルと10%以上の価格乖離を記録しました。
画像引用:CoinMarketCap
こういったリスクを考えると、USDTとUSDCはどちらも一長一短といえるでしょう。
USDTやUSDCのステーキングは魅力的な資産運用方法ではありますが、自分の資産を守るためにはリスク管理は欠かせません。現状、ステーブルコインは仮想通貨(暗号資産)市場に大きな懸念が広がるタイミングなどで、デペッグを起こすことも多いです。
また、ステーキングをする際は、年利の高さ以外にも注目するようにしましょう。引き出しの自由度も考慮する、保有資産やプラットフォームを分散するなどの工夫をすれば、より安心して利用できます。
作成日
:2022.10.18
最終更新
:2024.01.07
2017年に初めてビットコインを購入し、2020年より仮想通貨投資を本格的に開始。国内外のメディアやSNSなどを中心に、日々最新情報を追っている。ビットコインへの投資をメインにしつつ、DeFiを使って資産運用中。
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