作成日
:2023.01.20
2024.02.12 12:54
イーサリアム(ETH)2.0において、ステーキング向けの預け入れ資産が増加しており、2023年5月時点ではおよそ1,790万ETH(4.5兆円相当)になっています。イーサリアムのステーキングに関する投稿がSNS上で複数見られることからも、仮想通貨(暗号資産)で稼ぐ手段の一つとして浸透しつつあるようです。
しかし、イーサリアム2.0のステーキングでは年率何%の報酬を期待できるでしょうか。特別な機器を用意することなく、少額でステーキングを行うにはどうしたら良いのでしょうか。
2023年1月13日、メタマスク(MetaMask)がイーサリアム(ETH)のステーキングに対応しました。ユーザーはメタマスクから直接、LidoとRocket Poolのリキッドステーキングを利用できます。
イーサリアム2.0とは、イーサリアムの次世代ブロックチェーンとして開発が進められているものです。
イーサリアム(ETH)はビットコイン(BTC)に次ぐ規模を誇り、日本でも絶大な支持を集めています。このイーサリアムの基盤となるのがイーサリアムブロックチェーンであり、イーサリアムの発行や送金などに必要なシステムを構成しています。
従来、イーサリアムはコンセンサスアルゴリズムとしてPoS(プルーフ・オブ・ステーク)の採用方針を示してきました。これはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と比較すると、電力効率やシステムの拡張性に優れています。
コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックを生成するためのルールです。PoWやPoSに加え、DPoS(デリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステーク)やPoI(プルーフ・オブ・インポータンス)などが存在します。それぞれ長所や短所があり、開発思想などの違いによって採用するコンセンサスアルゴリズムが変わってきます。
レイヤー2に比べてレイヤー1のコンセンサスアルゴリズム変更は難易度が高く、イーサリアムはPoSへの移行を何度も延期してきました。しかし、2022年9月15日、アップグレード「マージ」が完了し、PoSへの移行が完了しました。
多くのブロックチェーンは、異なる役割を持つブロックチェーンが階層別に独立して相互通信する「レイヤー構造」になっています。
基礎的な役割を担うブロックチェーン層をレイヤー1と呼びます。レイヤー1の情報処理を助け、処理能力不足に起因する問題(スケーラビリティ問題)の解決を目指す層をレイヤー2と呼びます。
イーサリアムブロックチェーンは、DApps(分散型アプリケーション)のプラットフォームとして利用されてきました。DAppsとは、レンディングやゲームなどのアプリケーションを利用できる機能です。
分散型プリケーション(Dapps)とは、管理者不在で自律的に行動を行う非中央集権のアプリケーションのことをいいます。ブロックチェーンを利用したサービスなどを提供するアプリケーションの総称であり、データを改ざんされる心配が少なく、中央管理ではなく分散管理であるためサーバーダウンによるサービス停止の心配も少ないといった特徴を持ちます。
イーサリアム2.0では、より優れたDAppsプラットフォームとなるために、様々な機能が強化されます。その結果、DApps開発が活性化して高品質なサービスが増加すると期待されています。
イーサリアム2.0では、ステーキングで報酬を得ることができます。そこで、一般的なステーキングを紹介しつつ、イーサリアム2.0のステーキングに参加する方法や注意点を解説します。
ステーキングはブロックが生成される仕組みの一部であり、PoSを採用するブロックチェーンで利用されています。必要な機器等を揃えた上でステーキングを行った人は「バリデーター」となり、トランザクションの検証・承認を行うのです。
バリデーターは、PoWでマイニングを行うマイナーと同様の役割を担っています。
バリデーターはトランザクションの検証・承認を行うことで、報酬を得られます。2023年5月現在、イーサリアムブロックチェーン上で稼働しているバリデーター数は56万以上です。
バリデーターが不正を働けば、ブロックチェーンの健全性が損なわれて仮想通貨(暗号資産)価格が暴落する可能性があります。つまり、多くのETHを預け入れているバリデーターにとって、不正を働くインセンティブがありません。預け入れ資産は保証金のような性質を持っています。
なお、仮想通貨取引所の中には、レンディングサービスを「ステーキング」として提供しているところがあります。レンディングとは、保有資産の貸し出しにより金利を得るサービスであり、数多くの仮想通貨に対応しています。
一方PoSのステーキングは、PoS系のブロックチェーンのネイティブトークン(ETHやBNB、ADAなど)でのみ可能です。
イーサリアムではバリデーターを募集しており、預け入れ資産が増加しています。では、どうすればイーサリアムのステーキングに参加できるでしょうか。その方法を紹介します。
32ETH以上を保有している場合、専用のソフトを用いてノードを運用し、ステーキング報酬を獲得することができます。ノードを運用するには、自身でコンピュータの設定や管理などを行う必要があるので、上級者向けの方法です。
ノードとは、ブロックチェーンのネットワークを構成するコンピュータ(パソコンやサーバ、スマホなどを含む)を指します。ノードはブロックの検証だけでなく、取引情報の記録や情報伝達などの機能を提供します。
ステーキングプールとは、仮想通貨を預かってステーキングを代行するサービスです。ステーキングプールにステーキングを委任すれば、預け入れた仮想通貨の額に応じて報酬を得ることができます。
イーサリアム2.0に対応するステーキングプールは、公式ウェブサイトで確認できるだけでも30以上存在します。こういった幅広い選択肢から条件の良いプールを選び、ステーキングを委任することが可能です。
ステーキングプールにステーキングを依頼してしまえば、放置しても自動的に報酬を獲得できますので、初心者にも利用しやすいサービスです。
ステーキングサービスを提供する取引所もあります。国内取引所では利用できず、Bybit(バイビット)やBinance(バイナンス)やコインベースなどが対応しています。口座で保有しているイーサリアムを使って、簡単な手続きでステーキングできることが特徴です。
Bybitでは、ステーキングプールLido(ライド)の独自トークンstETHを使った、「ETH2.0流動性ステーキング」を提供しています。Bybit上でETHをステーキングすると同額のstETHを獲得でき、年間で最大6.0%の報酬を獲得できます。
では、ステーキングに参加すればどれくらい稼げるでしょうか。イーサリアムのステーキング報酬の大きさは、世界中でステーキングされたイーサリアムの総数によって変化します。
下のグラフは、ステーキング総数と利率の関係を描いています。横軸はイーサリアムのステーキング総数、縦軸は利率です。ステーキング数量が増えれば増えるほど、利率が低下する様子が分かります。
当記事執筆時点(2023年5月2日)において、ステーキング総数は1,790万ETHほどで利率は6.1%となっています。
では、ステーキングプールや取引所のサービスを利用すると、年率でどれくらい稼げるでしょうか。2023年5月2日時点の数字は、以下の通りです。公式サイトに掲載されている数字を転記しています。
名称 | 種類 | 年率 |
Bybit | 取引所 | 〜6.00% |
Binance | 取引所 | 4.00%(*1) |
StakeWise | ステーキングプール | 5.75% |
Rocket Pool | ステーキングプール | ~4.85% |
Lido | ステーキングプール | 4.80% |
Ankr Staking | ステーキングプール | 5.40% |
Bybit(バイビット)
種類 | 年率 |
取引所 | 〜6.00% |
Binance(バイナンス)
種類 | 年率 |
取引所 | 4.00%(*1) |
StakeWise
種類 | 年率 |
ステーキングプール | 5.75% |
Rocket Pool
種類 | 年率 |
ステーキングプール | ~4.85% |
Lido
種類 | 年率 |
ステーキングプール | 4.80% |
Ankr Staking
種類 | 年率 |
ステーキングプール | 5.40% |
(*1)2023年5月1日時点のAPR実績
MEXCはETH2.0ステーキングというサービスを提供しておりましたが、すでに停止されています。2023年5月現在、サービスページへのアクセスは可能であるものの、預け入れはできません。
BybitとBinanceを比較しますと、Bybitが断然有利に見えます。しかし、実際にはほぼ変わりないと想定できます。Bybitの6.00%は最大値であり実勢値は不明である一方、Binanceは実勢値を掲載しているからです。
それ以外にも、預け先によって数字が大きく異なります。しかし、イーサリアムブロックチェーンは、特定の取引所やステーキングプールを優遇することはありません。このため、短期的には預け先によって数字が上下動することがあっても、中長期的にはほぼ同じ数字に落ち着くと想定できます。
イーサリアム以外にも、PoSを採用する仮想通貨(暗号資産)は多数あります。そのうち、時価総額が大きく、一般ユーザーでもステーキング可能な仮想通貨のステーキング利率は、以下の通りです(2023年5月2日時点)。
仮想通貨 | 年率 |
---|---|
ADA(Cardano) | 4.6083% |
ATOM(Cosmos) | 9.7% |
ATOMはインフレ通貨です。すなわち発行済総数が増えていきますので、実質的な年率はこの数字よりも小さくなります。また、上の数字は公式が発表しているもので、ステーキングプールによって利率は異なります。
単純に数字を比較すると、イーサリアムはやや見劣りするかもしれません。しかし、数字の低さは信用度・信頼度の高さを示しているともいえそうです。仮想通貨の将来性も併せて考えて、どの仮想通貨でステーキングするかを決めることになります。
イーサリアムは、Shanghai(上海)アップデートを成功させ、ステーキングしているETHを引き出せるようになりました。しかし、Shanghaiアップデート後でも知っておきたい注意点がいくつかあります。
2023年4月、イーサリアムはステーキングされたETHを引き出せるShanghaiアップデートを成功させました。
しかし、ステーキング開始以降、多くの人がイーサリアムを引き出せないまま、長い時間が経過しています。そのため一度に大量のETHが引き出されないように、申請から出金までに一定の待機期間が設けられています。
これは一度に大量の出金申請が殺到し、イーサリアムブロックチェーンが不安定になることを防ぐためのものです。特に攻撃者にとって、このような機会は絶好のチャンスになり得ます。
Shanghaiアップデートが成功したからといって、ステーキングしているETHをすぐに引き出せるわけでないので、その点は注意しましょう。
Shanghaiアップデート後、ステーキングを代行する取引所やステーキングプールも、ETHの預け入れ量をコントロールできるようになりました。そのため取引所やステーキングプールも、ETHの引き出しに順次対応する予定です。
大手取引所のBinance(バイナンス)は、2023年4月19日に代替トークンのBETH保有者の出金申請を開始しました。また、ステーキングプール最大手のLido(ライド)は、出金テストや監査を行った上で、2023年5月中に引き出し機能を実装する計画をしています。
Shanghaiアップデートにより、ステーキングしたETHが出金できるようになりつつあります。しかし、取引所やプロトコルによっては、すぐに出金できないケースがあることも覚えておきましょう。
前述の通り、Shanghaiアップデート前まではひとたびステーキングすると、いつ引き出せるか分からない状況でした。このデメリットを解決する方法として、リキッドステーキングがあります。
これは、イーサリアムをステーキングすると、代わりにリキッドステーキングトークンというトークンをもらえる仕組みです。これを使って送金したり、各種DeFiで利用したりできます。
最終的には、リキッドステーキングトークンと引き換えに、ステーキングしたイーサリアムをもらうことができます。また、リキッドステーキングトークンを市場で売却することで、実質的にステーキングしたイーサリアムを出金することも可能です。
個人でも利用しやすい取引所のステーキングサービスの利用方法と、ステーキングプールの利用方法を簡単に紹介します。
Lido(ライド)は、ステーキングプールを提供しています。イーサリアムのステーキングプールはさまざまなプロジェクトから提供されていますが、Lidoのイーサリアムステーキングプールは大規模であり代表的なものとなっています。
Lidoでイーサリアムをステーキングする方法は、簡単には以下の通りです。
Lidoは分散型のサービスであり、サポート体制はあまり充実していません。不安がある人は、日本語でのチャットサポートにも対応しているBybitのステーキングサービスを利用するほうが良いかもしれません。
イーサリアムとビットコインと比べますと、価格水準は異なるものの概ね似たような値動きをしてきました。2021年末の最高値と現在値を比較しましても、下落率は概ね同じです。下のチャートは、上側がイーサリアム、下側がビットコインです。
この2つの仮想通貨(暗号資産)は、それぞれ主な用途が異なります。今後も同様の値動きになるのか、それともそれぞれ独自の値動きをするようになるのか、注目できます。
画像引用:CoinMarketCap
画像引用:CoinMarketCap
イーサリアムは、ビットコインと並んでどの仮想通貨取引所でも売買可能です。日本語対応の海外取引所における、イーサリアムの取り扱い状況(USDT建て現物・デリバティブ)は下記の通りです。
仮想通貨取引所 | 現物 | デリバティブ |
(バイビット) | 〇 | 〇 |
---|---|---|
(バイナンス) | 〇 | 〇 |
(ゲート) | 〇 | 〇 |
(メクシー) | 〇 | 〇 |
(ビンエックス) | 〇 | 〇 |
(ビットゲット) | 〇 | 〇 |
(コインイーエックス) | 〇 | 〇 |
Bybit(バイビット)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
Binance(バイナンス)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
Gate.io(ゲート)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
MEXC(メクシー)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
BingX(ビンエックス)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
Bitget(ビットゲット)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
CoinEx(コインイーエックス)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
海外取引所なら、日本語対応が充実しているBybit(バイビット)がおすすめです。
イーサリアムは大型アップデートの「Shanghai」が無事に完了し、ユーザーにとってステーキングしやすい環境が整いつつあります。将来的には、送金速度が劇的に改善して使いやすくなると見込まれていますので、今後の動向に注目です。
作成日
:2023.01.20
最終更新
:2024.02.12
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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