作成日
:2022.09.05
2023.04.19 00:31
仮想通貨(暗号資産)市場では、日々新しいサービスが開発されています。特にDeFi(分散型金融)分野では、これまでの金融市場になかった新しいサービスが台頭しています。
最近では、ステーキングの派生系「リキッドステーキング(Liquid Staking)」が注目を集めています。大手取引所もサービスを開始しており、利用環境が整ってきています。
そこで当記事では、リキッドステーキングに興味がある、または、深く理解したいという方に向けて、その概要や特徴、リスクなどについて解説します。
リキッドステーキングとは、その名称の通り、「流動性のあるステーキング」です。これを理解するために、まず基本的なステーキングを紹介します。
ステーキングの意味は、稼ぐという視点とブロックチェーンの維持という視点に分けられます。
稼ぐという点に注目しますと、ステーキングはインカムゲイン(受動的な収入)を得る手段です。ステーキングするだけで、定期的に一定の仮想通貨を自動的に得られます。ステーキングが登場する前は、仮想通貨を保有してキャピタルゲイン(価格変動による収入)を狙う方法が一般的でした。ステーキングは保有するだけで稼げますので、長期保有の投資家に重宝されています。
もう一つ、ステーキングには、新規にブロックを作るという視点があります。PoS(プルーフ・オブ・ステーク)系のブロックチェーンにおいて、仮想通貨を保有するユーザーはバリデータに投票します。バリデータは、獲得した投票数を利用してブロックを検証・承認します。
この仕組みを絵にしますと、下の通りです。
この仕組みを知らなくても、ステーキングすれば報酬を得られます。しかし、仕組みを知ると、ステーキングのイメージを掴みやすいでしょう。
では、リキッドステーキングを紹介しましょう。文字通り「流動性のあるステーキング」です。では、流動性があるとは、どのような状態でしょうか。
ステーキングで報酬を得るには、取引所やブロックチェーンに仮想通貨を預け入れなければなりません。預け入れた仮想通貨は、自由なタイミングで引き出しできる場合があります。しかし、サービスによっては、数か月から数年にわたって引き出しできない場合もあります。
すなわち、ステーキング期間中は、仮想通貨を他の用途に利用できません。この状態を改善するために、リキッドステーキングが登場しました。
リキッドステーキングを利用すると、預け入れた仮想通貨の額に合わせて、リキッドステーキングトークンと呼ばれるトークンをもらえます。このリキッドステーキングトークンは、他のサービスで運用したり、送金したりできます。
これが、「流動性がある」といわれる理由です。
リキッドステーキングは、ETH2.0の登場で注目を集めました。
イーサリアム(ETH)は、ETH2.0への移行に際して、ステーキングを行うユーザーを募りました。しかし、ステーキング向けに預け入れたイーサリアムは、ETH2.0が完成するまで引き出せません。この点が、デメリットとなっています。
マージ(Merge)は、イーサリアムのETH2.0移行に向けた大型アップグレードです。幾度となく延期を繰り返しており、預け入れたイーサリアムを引き出せない期間が長期化しています。
そこで、リキッドステーキングが登場しました。ユーザーは、リキッドステーキングトークンを売却したり、さらに利益を得るためにDeFiを利用したりできます。このように、リキッドステーキングには、ステーキング益を得ると同時に、柔軟な投資判断に対応できるメリットがあります。
Lido Financeは、ETH2.0のリキッドステーキングで有名になりました。具体的な活用例は、以下の通りです。
Lido Financeでは、リキッドステーキングにイーサリアムを預け入れると、リキッドステーキングトークン「stETH」を得られます。そして、stETHは他のDeFi関連サービスで活用可能です。例えば、Curve.Financeでのイールドファーミング、AAVEでの仮想通貨レンディング、MakerDAOでのステーブルコイン貸し出しの担保などです。
Lido Financeでは、ステーキング報酬に加え、これらのDeFi関連サービスからも報酬を得られます。
リキッドステーキングトークンは、預け入れた仮想通貨の量に応じて発行されます。
Lido Financeでは、1ETHを預け入れると1stETHが発行されます。stETH価格は基本的にイーサリアムに連動するものの、需要と供給によって日々変動しています。
当記事執筆時点(2022年9月)では、1stETH=0.97ETH付近です。概ね安定していますが、チャートを見ますと一定の範囲で変動していることがわかります。
画像引用:CoinMarketCap
stETHなどのリキッドステーキングトークンは、預け入れた仮想通貨の交換券のような役割も持っています。ステーキング期間の終了後に、預け入れた仮想通貨と交換可能です。
リキッドステーキングは、革新的なDeFi関連サービスだといえるでしょう。しかし、仮想通貨の運用にレバレッジをかけるのと同じような性質を持っていることから、そのリスクを心配する声も挙がっています。
どのようなサービスにもリスクがあるので、それを承知した上で利用することが重要です。リスクを認識していれば、それに見合った利用が可能です。
リキッドステーキングには、以下のようなリスク例があります。
リキッドステーキングトークンは、現物の仮想通貨に価値が紐付いています。しかし、需要と供給のバランスが急激に変化すると、値崩れを起こす可能性もあります。
例に挙げたLido Financeでも、一時期、stETHの売り圧力が高まる懸念がありました。大手仮想通貨レンディングのCelsius Networkが経営破綻し、撤退したことが原因です。実際にstETHが崩壊することはありませんでしたが、このような出来事はトークン価格の乖離を生む原因になりえます。
リキッドステーキングトークンが現物仮想通貨の価格を下回れば、心理的に現金化しにくくなります。現金化は、すなわち損切りになるためです。
しかし、ステーキング終了時までリキッドステーキングトークンを保有すれば、損することなく預け入れた仮想通貨を取り戻すことができます。長期的な目で見ると、あまり気にすることのない問題なのかもしれません。
DeFi関連サービスには、ハッキングのリスクが潜んでいます。リキッドステーキングも例外ではありません。多くのプロジェクトは技術的な監査を受けているものの、リスクが完全に消えることはないでしょう。
もし、リキッドステーキングを司るスマートコントラクトがハッキングされると、預け入れた仮想通貨は手元に戻らない可能性が高いです。加えて、その場合、担保の後ろ盾を失ったリッキドステーキングトークンも価値を失ってしまうと予想されます。
仮想通貨市場では、DeFi関連サービスを狙ったハッキングが横行しています。DeFi関連サービスにはシステムの管理者がおらず、全てが自己責任となるので、補償などが確約されているわけではありません。
ハッキングはDeFi関連サービスの一般的なリスクであり、利用する際にはその可能性を頭に入れておく必要があります。特にリキッドステーキングは、存在自体が新しいので、未発見の脆弱性がある可能性があります。
仮想通貨市場では、リキッドステーキングの利用が拡大しています。最大のシェアを誇るLido Financeを含め、利用環境が整いつつあります。
当記事執筆時点(2022年9月)で、DApp(分散型アプリ)だけでなく、CEX(中央集権型取引所)からも利用可能です。例えば、以下のサービスが存在します。
Lido Financeは、現時点で仮想通貨市場最大のリキッドステーキングサービスとなっています。
イーサリアムを中心に、ソラナ(SOL)やクサマ(KSM)、ポルカドット(DOT)、ポリゴン(MATIC)などのブロックチェーンに対応しています。数多くのDeFi関連サービスと提携しており、選択肢がたくさんあります。
米大手取引所のCoinbaseは、2022年8月末からリキッドステーキングに対応しています。CoinbaseでETH2.0のステーキングを利用すると、独自のリキッドステーキングトークン「cbEHT」を獲得できます。
cbETHは、ETHとそのステーキング報酬の価値に連動します。cbETHはコインベースで取引できるだけでなく、様々なDeFi関連サービスに組み込まれることが期待されています。下は、cbETHのチャートです。cbETH=1.0ETHでなく、やや安い価格で推移していることが分かります。
画像引用:CoinMarketCap
pSTAKEは分散型のリキッドステーキングサービスで、コスモス(ATOM)やBNBチェーン(BNB)を基礎としています。2021年に10億円越えの資金調達に成功しており、その勢力を拡大しています。
BNBを預け入れると、それに対応するリキッドステーキングトークン「stkBNB」を得られます。stkBNBを活用すれば、BNBチェーン上の豊富なDeFi関連サービスで収益獲得が可能です。
下のチャートを見ますと、stkBNB=1.0BNBが概ね成立している様子が分かります。なお、チャートの最初期に異常値が見られるため、その部分の表示を調整しています。
画像引用:CoinMarketCap
Ankrは、企業向けのブロックチェーンソリューションを提供するプロジェクトです。2022年8月、Ankrはリキッドステーキングを実装することを発表しました。アバランチ(AVAX)、ポリゴン、イーサリアムなど、多様な仮想通貨のリキッドステーキングに対応しています。
リキッドステーキングは、イーサリアムだけでなく、主要なブロックチェーンで利用されるようになっています。例えば、BNBチェーンでは、ブロックチェーンに預け入れられた仮想通貨の合計額が40億円を突破したことが報告されています。
このまま拡大を続ければ、リキッドステーキングが業界のスタンダードとなる日が来るかもしれません。リキッドステーキングにはリスクもありますが、それ相応のメリットもあるので、許容できる範囲内で利用してみるのも良いかもしれません。
作成日
:2022.09.05
最終更新
:2023.04.19
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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