作成日
:2022.09.05
2022.10.12 19:24
2022年9月のポンド相場は、物価と次期首相によってポンドの上値が抑えられそうです。
9月は円高が進み、ポンド円は下落するとみています!
緩和政策の継続による円安トレンドから、緩和政策の終了観測による円高トレンドに転換するのではないか、との予測が出てきています。
次期日銀総裁候補である雨宮日銀副総裁が「出口戦略、まったく考えていないという事ではない。出口の具体的議論は時期尚早だが、方法は常に考える必要」と出口戦略について発言したことで、緩和政策の終了観測が高まり円高が進む場面がありました。緩和の終了観測が高まれば、今までの円安トレンドが一気に巻き戻され、円高が進む可能性は高いです。
また、貿易赤字による円安は継続していますが、この円安も少しづつ圧力が後退しています。一時120ドルを超えていた原油価格が100ドルを割り込むなど、エネルギー価格も低下しており、貿易赤字の縮小に繋がると見られています。
緩和の終了観測が意識されて円高が進む場面が出たことに、貿易赤字の縮小による円安圧力後退も加わって、やや円高傾向が強くなると考えています。
円安圧力の後退からポンド円は下げ目線に
8月末時点におけるポンド円の日足チャートです。8月のポンド円は月初に一時160円を割り込んだものの、8月末は調整局面が続いています。
画像引用:Tradingview
9月は円高に進む可能性があるので、押し目狙いは慎重に。
画像引用:Tradingview
ファンダメンタルズの大きな変化がない限り、上記の価格では売りを検討しています。
ドルが底堅いため、ポンドドルは下落するとみています。
FRBは、物価抑制を優先させるために急ピッチで引き締めを進めています。すでに大部分の利上げに関しては織り込み済みですが、マーケットの予想以上に物価高が続くと考えています。
織り込み済みとは、相場が好材料・悪材料の影響を既に反映している状態のことです。その材料が出現したときに相場が反応するのではなく、前もって周知されたときから相場に反映されていき、材料出現時にはその影響力がほとんどなくなっている様子を指します。
例えば、好調な経済成長率の数値が発表されたり、逆に悪化した失業率の数値が発表されたりしても、それが事前に予想されている場合は、あまり相場に影響を与えません。
予想以上に物価高が続く要因として注目しているのが、強すぎる雇用市場です。労働参加率が低下しており、人手不足からくる人件費の高騰によって、物価高が根強く残ると考えています。予想以上の物価高が続くとFRBの引き締めも継続され、ドルが底堅く推移する予想です。
一部では、来年のFRBは利下げするとの観測も出ていることから、利下げ観測が後退するとドル買いに繋がる可能性も注目しています。主要通貨の国の中で、日本以外は引き締め政策を進めています。引き締めによる景気後退が各国で懸念されていますが、その中では相対的に米国経済が底堅く、そのほかの通貨に比べて米ドルは買われやすいです。
これらの要因から、米ドルは底堅く推移してポンドが売られることで、ポンドドルは下落すると考えています。
8月末時点での、ポンドドルの日足チャートです。
ポンドドルは、8月後半に7月安値の1.180ドルを抜けて下落がさらに進んでいます。
画像引用:Tradingview
しっかり下に引きつけて買うようにしてください
画像引用:Tradingview
戻り売りを狙うか、あるいはブレイクしたら高値を追いかけるかは、ファンダメンタルズ分析も参考にしてください。
9月のポンドは「次期首相選」と「物価高」の2点に注目です。
ジョンソン首相が辞任して、後任を決める保守党党首選(次期首相選)の結果発表が9月5日に行われます。スナク前財務相とトラス前外務相の2名が決戦投票に進んでおり、保守党党員16万人が投票し、次期保守党党首(次期首相)が決定します。国民からの支持が高いのはスナク前財務相ですが、保守党員の支持率が高いのはトラス前外務相のようです。
8月の英中銀政策発表のベイリーBOE総裁記者会見では、記者からトラス前外務相が首相となった場合の金融政策について質問が集まっていました。経済専門通信社のブルームバーグによると、トラス前外務相は中銀の責務見直しを呼び掛けており、英中銀の責務見直しとなれば英国債とポンドは急落すると予想されています。
トラス前外務相は、英中銀の責務見直しとしてインフレ目標の撤廃は明言していませんが、GDPを英中銀の目標に含める可能性を示唆したことには注目です。世界的に中央銀行は独立性が重要視されており、英国は特に独立性を重要視しているなか、トラス前外務相が責務見直しを示唆したことは、中銀の独立性を侵す行為と受け止められているためです。
決選投票前の現時点では、トラス前外務相が優勢なだけにポンドの上値が重くなっており、9月5日にトラス前外務相が首相になった場合は、ポンドが大きく下落する可能性が高いのではないかと注目しています。
英国の物価高は9月に10%を超え、第4四半期には13%を超えると予想されています。物価高により英国経済は後退し、スタグフレーション懸念が高まっています。
物価高から消費が低下→景気が後退してポンド安に→ポンド安から輸入物価が上昇→さらなる物価高で消費が低下
という悪循環が警戒されているのです。
英国における物価上昇の大きな要因としては、エネルギー価格の上昇と人手不足があります。エネルギー価格はロシアによる影響が大きく、長期化する可能性が高いです。人手不足は、コロナ禍で早期リタイアした人が多く労働参加率が上昇しないことと、英国がEUから離脱したために欧州からの出稼ぎ労働力が減少したことが要因で、こちらも長期化する可能性が高いと思われます。
物価高を抑える目途が立たないと、英国経済の減速が嫌気されポンド売りが進むと考えています。
雇用統計で発表される平均賃金や、英国のCPI(消費者物価指数)の指標結果に注目です。
作成日
:2022.09.05
最終更新
:2022.10.12
英ポンドを中心にトレードを行う大学生トレーダーで、2021年の合計利益は4,000万円にのぼる。公式Twitterでもテクニカル分析等の情報発信を行い、フォロワー数は5,000人以上。ファンダメンタル分析とテクニカル分析を組み合わせた手法を用い、Myforexでは月初にポンド通貨ペアの戦略を連載している。
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