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米銀行の相次ぐ経営破綻とUSDCのデペッグ | 仮想通貨市場への影響を解説

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update 2023.03.16 17:33
米銀行の相次ぐ経営破綻とUSDCのデペッグ | 仮想通貨市場への影響を解説

update 2023.03.16 17:33

2023年3月、シルバーゲート銀行が事業清算を発表したのに続き、シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行が相次いで経営破綻しました。

これらの銀行は、多数の仮想通貨(暗号資産)関連企業を顧客に抱えています。このため、仮想通貨市場にも影響が出ており、USDCなどのステーブルコインがデペッグしました。なお、当記事執筆時点(2023年3月16日)で事態はほぼ沈静化しています。

シルバーゲート銀行が事業清算へ

2023年3月8日、シルバーゲート銀行が事業を清算すると発表しました。

シルバーゲート銀行はニューヨーク証券取引所に上場しており、仮想通貨関連企業を中心にサービスを提供していました。規制が厳しい米国で仮想通貨分野に友好的な銀行として重宝されており、コインベースやサークルなどの顧客を抱えていました。

今回、大手取引所FTXが経営破綻した影響を受けて事業清算に追い込まれたと推測されています。

knowledge FTXの経営破綻

2022年、FTXはハイリスクな経営をした結果、手持ち資金が枯渇して顧客資産を払い出せない状況に陥りました。競合のBinance(バイナンス)が買収による救済を模索しましたが、結局失敗に終わっています。この影響は仮想通貨市場全体に波及しており、CEX(中央集権型取引所)の信頼が揺らいでいます。

シルバーゲート銀行は、FTXの経営破綻と同時期に、預金口座からの資金流出に見舞われました。資金調達を試みましたが、米当局との協議の末に事業清算が決まりました。なお、シルバーゲート銀行は全ての預金を顧客に返金する方針です。

米銀行の経営破綻が相次ぐ

シルバーゲート銀行が事業清算を決定した後、シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行が立て続けに経営破綻しました。

銀行名 経営破綻等発表日
シルバーゲート銀行 2023年3月8日
シリコンバレー銀行 2023年3月10日
シグネチャー銀行 2023年3月12日

シリコンバレー銀行については、FRB(米連邦準備制度)の度重なる利上げで保有国債の価格が下落し、多額の評価損を抱えていました。これが引き金となり、預金者の取り付け騒ぎに耐えることができませんでした。

この騒ぎが、シグネチャー銀行にも飛び火しました。シグネチャー銀行は、シリコンバレー銀行と同様に仮想通貨業界に好意的な銀行でした。

knowledge 金利と債券価格の関係

金利と債券価格は互いに反対の動きをします。金利が下がれば債権価格は上がり、反対に金利が上がれば債権価格は下がります。FRBは2022年から金利を上昇させており、利上げ前からの長期債券保有者にとって厳しい状況が続いています。

FDICによる預金保護が決定

FDICは、3行を管理下に置いて預金を全額保護することを発表しました。

point FDICとは

FDIC(Federal Deopsit Insurance Corporation)は連邦預金保険公社と呼ばれる米連邦政府の企業です。加盟する金融機関に預け入れられた預金を保護することを目的にしています。FDICはひとりあたり最高25万ドルまでの預金を保証します。

銀行の相次ぐ破綻で、第二のリーマンショックとなるリスクが懸念されています。しかし、FDICが全額保証を発表したことを受けて、市場は落ち着きを取り戻しています。

この方針はFDICだけでなく、FRBや米財務省、ジョー・バイデン大統領やジャネット・イエレン財務長官が協議した上で決定されました。

USDCのデペッグが発生

USDCはサークル社によって発行されるステーブルコインです。サークル社は発行済みUSDCよりも多額の米ドルを保有しており、この信頼を背景にしてUSDCの価値が保たれています。

しかし、銀行の経営破綻騒動を受けてデペッグが発生しました。

point デペッグとは

ステーブルコインの価値が基準値から大きく乖離することをデペッグと呼びます。準備金の運用などに対する信用不安が懸念されると、デペッグが発生します。

サークル社はUSDCの準備金約400億ドルのうち、33億ドルをシリコンバレー銀行に預け入れていました。この結果、シリコンバレー銀行の破綻を受けてUSDCは0.8ドル台まで急落しました。

FDICが預金保護を発表したこともあって、当記事執筆時点(2023年3月16日)で1ドル付近まで回復しています。2023年13日、サークル社は準備金が100%安全な状態にあることを公表しました。

USDCのチャート

画像引用:CoinMarketCap

リスクヘッジに動くBinance

USDCのデペッグ発生を受け、BinanceのCEOであるチャンポン・ジャオ氏はリスクヘッジに動きました。

Binanceは保有する10億ドル相当のBUSDをビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)、バイナンスコイン(BNB)に両替しました。なお、BUSDの大幅な下落は確認されておらず、逆に、一時的に1%の価格プレミアムをつけました。

BUSDと米ドルの価格チャート

画像引用:CoinMarketCap

その他のステーブルコインへの影響

その他、USDTやUSDPが一時的に不安定になりましたが、デペッグには至りませんでした。

一方、DAIはUSDCに連動する形でデペッグが発生しましたが、元の価格に戻っています。DAIは仮想通貨を担保に発行されるステーブルコインです。本来、銀行の経営破綻とは無関係ですが、USDCを担保として採用していたためデペッグしました。

DAIと米ドルの価格チャート

画像引用:CoinMarketCap

仮想通貨市場への影響

仮想通貨市場への影響としては、以下が挙げられます。

主要な決済ネットワークが停止される

シルバーゲート銀行は、仮想通貨取引所やヘッジファンド向けにSEN(Silvergate Exchange Network)と呼ばれる決済ネットワークを提供していました。しかし、事業を停止したため、SENが利用できなくなりました。

これに伴って、多くの企業が別の決済ネットワークへの移動を余儀なくされています。

ビットコイン価格が乱高下

今回、シルバーゲート銀行とシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行が立て続けに破綻したことで、ビットコイン価格は大幅な下落を記録しました。

2023年3月3日、ビットコイン価格は330万円を超える水準にあったのが、これら3行の破綻を受けて260万円台にまで急落しました。その後、FDICの発表等で安堵感が広がり、ビットコイン価格は一気に戻して年初来高値を記録しました。

ビットコインと日本円の価格チャート

画像引用:CoinMarketCap

DEXの取引需要が増加

USDCのデペッグが発生する中、ユーザーは自分の資産を避難させています。また、CEX(中央集権型取引所)への不安感からか、DEX(分散型取引所)での取引が増加しています。

主要なDEXであるUniswapでは、2023年3月13日前後の日間取引量が激増し、およそ35億ドルとなりました。

Uniswapにおける日間取引量のチャート

今後の展開

銀行の相次ぐ経営破綻は、仮想通貨市場に大きなインパクトとなりました。

銀行の仮想通貨に対する姿勢

今回、破綻した3行は仮想通貨に友好的な銀行でした。米政府機関が介入して事業を停止したのは、資金繰りの悪化による倒産を恐れたためだとされていますが、一部では仮想通貨市場への締め付けを強化するのが目的だったのではないかと推測されています。

また、報道によると、シグネチャー銀行のBarney Frank氏は「これは規制当局による反仮想通貨の強烈なメッセージだと思う」とコメントしています。

加えて、ブロックチェーン調査会社MessariのRyan Selkis氏は、シルバーゲート銀行とシグネチャー銀行には依然として健全で支払い能力があるが、政府機関の標的にされたとツイートしました。

これらを踏まえますと、銀行の仮想通貨に対する姿勢が今以上に非友好的になる可能性があります。

DeFiへの移行

近年、仮想通貨市場ではDeFi(分散型金融)分野が力を付けています。中央集権型のサービスの安全性が損なわれれば、DeFi関連サービスへの移行が加速する可能性があるでしょう。

仮想通貨規制が進む可能性

2023年に入ってから、FRB・FDIC・通貨監督局(OCC)は、仮想通貨のリスクが高いことを説明した上で、「仮想通貨関連のリスクが銀行システムに影響を及ぼさないことが重要です」としています。

米国が規制を強めれば、仮想通貨市場の透明性が改善して成長産業となる可能性があります。しかし、短期的には規制が厳しい米国市場を避ける動きが生じるかもしれません。

ステーブルコインの安全性

従来、ステーブルコインの安全性について、担保となる米ドルが十分にあるかどうかという点に注目が集まっていました。しかし、今回の銀行の経営破綻とデペッグを受けて、米ドルの保管場所の重要性も認識されました。

仮想通貨は新しい産業であり、どこまで確認すれば安全を確保できるのか、誰にも分からない状態が続いています。常に情報を得て知識を深めていくことが大切でしょう。


Date

作成日

2023.03.16

Update

最終更新

2023.03.16

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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