作成日
:2022.11.10
2023.03.16 15:30
2022年11月11日、FTXは米連邦破産法11条(チャプター11)に基づいて破産申請し、経営破綻しました。破産申請にはFTX Japanも含まれます。チャプター11は日本の民事再生法に相当し、経営を継続しながら負債を削減して経営再建を目指す制度です。
FTX破綻により中央集権型取引所への不信感が広がっており、各取引所の対応に注目が集まっています。
2022年11月8日、大手仮想通貨(暗号資産)取引所FTXが流動性危機に見舞われ、Binanceに救済買収を求める事態に発展しました。これに対してBinanceは同意したものの、FTXの財務状況等を確認した結果、買収の基本合意を破棄すると発表しました。
仮想通貨市場はFTXの流動性危機を発端に急落しており、FTXの倒産を恐れた顧客は出金しようとしているものの、できない状況に陥っています。
BinanceとFTXはライバル関係にあり、この一連の出来事には両社の思惑が絡んでいると考える人もいます。当記事では、騒動の経緯や原因、仮想通貨市場に対する影響などを解説していきます。
FTXは総合的なサービスを展開する大手取引所で、財務的に大きなリスクを抱えていることが報道によって明らかになりました。
リークされた書類に基づく報道によると、FTXの姉妹会社アラメダリサーチの資産の大部分は、FTXの独自仮想通貨FTXトークン(FTT)で構成されており、現金同等物はわずかな割合に留まっていました。
アラメダリサーチの資産は、2022年6月30日時点でバランスシート上に146億ドルあり、そのうち約36.6億ドルがUnlocked FTT(自由に利用できるFTT)、約21.6億ドルが担保として使用中のFTTでした。その他も勘案すると、アラメダリサーチの資産の多くはFTTで構成されていました。
FTXトークンはFTXが発行する独自仮想通貨で、Binanceが発行するBNBコイン(BNB)などと同様、取引所トークンの一種です。FTXトークンの価格は、FTXの業績などに左右される傾向にあります。
この報道などを受け、Binanceは自社保有のFTTの売却を発表しました。これをきっかけにFTT価格は下落し、FTXの倒産を恐れた顧客から出金依頼が殺到しました。その結果、出金停止措置が取られるに至り、この出金停止はFTXの日本子会社FTX Japanでも同様です。
アラメダリサーチのCEOであるキャロライン・エリソン氏は、リークされたバランスシートは一部の資産を示したものであると主張していました。
また、バランスシート記載の資産以外にも、数十億ドル相当の資産が存在するとしました。負債に関しても、そのほとんどは返済済みだとして、流動性に問題がないことをアピールしていました。
しかし、2022年第2四半期に、Three Arrows Capital(3AC)破綻に関連して痛手を負い、FTXからFTTで資金の補填を受けていた可能性が浮上しています。
CoinMetricsのLucas Nuzzi氏によると、その額は41.9億ドルに相当することがわかっています。これはアラメダリサーチのバランスシートにおけるFTTの額が増大し、よりリスクが高まったことを意味します。
真相は明らかではありませんが、FTX関連企業への疑念が高まっています。
3ACは大手仮想通貨ヘッジファンドであり、テラ(LUNA)の大暴落などを受けて債務超過に陥り、精算命令が出ています。その影響は他の仮想通貨関連企業にも波及しており、業界での連鎖倒産や信用不安につながりました。
結局、FTXは顧客資産を返還できない事態となり、Binanceに救済を求めました。これを受けて、Binanceはグローバル市場向けの「FTX.com」の買収に基本合意しました。この買収には、米国市場向けの「FTX US」や日本市場向けの「FTX Japan」は含まれません。
その後、BianceはFTXの財務等を調査した結果、買収を見送ると発表しました。その理由として、財務状況調査の結果のほか、FTXによる顧客資産の不適切な使用や米当局による調査実施を挙げ、Bianceの能力を超えていて支援できないとしました。
これを受けて、FTXの経営破綻が現実味を帯び、これが仮想通貨市場の価格下落をさらに促進しました。
Binanceのジャオ氏は、FTXが独自仮想通貨を担保に事業を行なっていることや、準備金が十分でないことを指摘しています。ジャオ氏はBinanceの運営を引き合いに、FTXのハイリスクな運営を批判しています。
米大手取引所CoinbaseのCEOであるブライアン・アームストロング氏も、「この出来事は複雑に絡み合った組織間の利益相反や顧客資金の流用など、リスクの高い運営を続けた結果だと思われます」とコメントしています。
FTXは各所から批判を受けており、経営破綻危機を招いた組織運営の脆さが浮き彫りになっています。
FTT暴落の直接のきっかけは、Binanceが保有するFTTの売却発表です。Binanceは以前からFTXを支援しており、2021年時点で21億ドル相当のバイナンスUSD(BUSD)とFTTを保有していました。
当記事執筆時点での保有額は不明ですが、相当額が仮想通貨市場に放出されることが予想されています。ジャオ氏は市場への影響を最小限に留めるために、数か月間をかけて売却を進めるとしていますが、既に仮想通貨市場は大荒れとなっています。
特に、FTT価格はアラメダリサーチの財務状況リーク後に約90%下落しています。11月2日時点でFTT価格は3,300円付近で推移していましたが、当記事執筆時点(2022年11月10日)では360円程度です。
画像引用:CoinMarketCap
その他、ビットコイン(BTC)価格は同期間で約20%、イーサリアム(ETH)は約27%下落しています。また、アラメダリサーチはソラナ(SOL)を多数所有していることから、SOLが大暴落しています。
今回、BinanceがFTTの売却を公言したのは、FTXとの競争に勝つための戦略だとの見方もあります。Binance側は純粋な投資判断でリスクコントロールのためだと強調しており、CEOのジャオ氏もこれを否定しています。
しかし、結果的に暴落の引き金を引いてしまったため、仮想通貨コミュニティでは憶測が広まっています。
FTXは米政府を中心にロビー活動を展開してきました。仮想通貨規制の草案を提案するなど、自社に有利になるように規制面で影響力を発揮しようと試みていた模様です。
ロビー活動とは、特定の企業や団体、個人が政府に影響を与えるために行う政治活動を指します。具体的には、政治献金などを通じて法案の可決や変更などを促します。
一方、Binanceは中華系企業のため、米国政府へのロビー活動で不利であり、FTXに対して敵対心を抱いていたと予想されています。ジャオ氏は名指しさえしなかったものの、業界の発展を阻害するようなFTXの動きを批判していました。
なお、元々BinanceはFTXを支援する立場でした。しかし、FTXが米国を中心に影響力を強めていることを懸念して、敵対した可能性があると推測されています。
BitDAO(BIT)は、大手取引所Bybitが支援するDAOです。BitDAOはDeFi(分散型金融)を軸とするエコシステムの発展を促すことを目的としており、仮想通貨市場で様々な投資を行なっています。
2021年、BitDAOは300万通貨を超えるFTXトークンを獲得したため、今回の暴落で被害を受けています。
この出来事は、業界全体を巻き込む大規模な損害に発展する可能性があります。例えば、FTXの関連会社FTX Venturesは主に仮想通貨関連プロジェクトに投資しており、投資先は約50件になります。
その中には、高額なNFTコレクションのBored Ape Yacht Club(BAYC)を手がけるYuga Labsや、ブロックチェーンプラットフォームのニア(NEAR)、元Facebook(フェイスブック)社のエンジニアが立ち上げたブロックチェーンAptosなどが含まれています。
FTX Venturesはこれらプロジェクトのトークンを多く保有しているので、資金繰りが逼迫して大量売却に至る可能性が懸念されます。実際に売却されると、仮想通貨価格が更に暴落して負の連鎖を生み出し、連鎖倒産に至る可能性もあります。
その他、FTX.comやFTX USは多数の企業から巨額の出資を受けており、ソフトバンクのグループ会社や資産管理会社のBlackRockなどが投資しています。FTXが経営破綻すると、これらの投資家にも損害が及ぶ可能性があります。
FTXのCEOであるフリード氏は、FTXを立ち上げてから怒涛の勢いで事業を拡大してきました。企業との資本提携も積極的に行なっており、仮想通貨レンディングのBlockFiやステーブルコインを発行するCricleなどにも資金を供給しています。
FTXは仮想通貨市場で影響力を強めてきましたが、これを達成できたのはレバレッジをかけたハイリスクな運営が原因の一つと予想されています。FTXやアラメダリサーチの財務状況はまだ明らかになっていませんが、今回の経営破綻危機は急速な成長が招いた弊害だったのかもしれません。
作成日
:2022.11.10
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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