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ステーブルコインのテザー(USDT)をヘッジファンドが空売り、価格への影響は?

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update 2023.03.16 15:54
ステーブルコインのテザー(USDT)をヘッジファンドが空売り、価格への影響は?

update 2023.03.16 15:54

2022年6月27日、一部のヘッジファンドが、価格崩壊を狙ってステーブルコインのテザー(USDT)に空売りを仕掛けていることが明らかになりました。

テザーは米ドルに価値を裏付けられた世界最大のステーブルコインです。仮想通貨(暗号資産)取引所やDeFi(分散型金融)関連サービスなどで広く利用されていることから、価格が暴落すれば仮想通貨市場全体に影響が波及する可能性もあるといえるでしょう。

ステーブルコインのテザーとは

テザーとは、テザー社が2015年に発行を開始したステーブルコインです。仮想通貨市場には異なるタイプのステーブルコインが存在しますが、テザーは最も一般的な中央集権型のステーブルコインだと考えられます。

2022年6月末時点で、その時価総額は600億ドルを超えており、仮想通貨市場全体でビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)に次ぐ規模を誇っています。

knowledge 異なるタイプのステーブルコイン

ステーブルコインにはいくつかのタイプが存在します。大別すると、テザーやUSDコイン(USDC)などの中央集権型のものと、ダイ(DAI)やテラUSDなどの分散型のものに分けることができます。中央集権型のステーブルコインが特定の企業によって管理されるのに対し、分散型のステーブルコインはブロックチェーンを介して運用されるのです。

発行会社であるテザー社は米ドルと1対1の固定交換レートでテザーを発行・償還することを約束しています。発行の際に入金された担保の米ドルは、準備金として第三者機関の監査の下、安全に運用されるようになっています。この仕組みがテザーのステーブルコインとしての安定性を実現しているのです。

テザー社とテザーとの関係性

一般ユーザーは、取引所などを介してテザーを売買することが可能です。テザーは他の仮想通貨と同じく需要と供給のバランスで若干変動することはありますが、概ね1テザー=1ドルのレートで推移しています。

テザー社が固定レートでの交換を保証できる限り、理論上、テザーのステーブルコインとしての安定性は維持されると考えられます。

空売りを仕掛けるヘッジファンド

米ビジネス誌の「ウォール・ストリート・ジャーナル」が、財政の健全性が損なわれている可能性があることから、テザーに空売りを仕掛ける投資家が増えているとの記事を公開しました。

機関投資家に仮想通貨サービスを提供するGenesis Global Tradingの営業責任者はその記事の中で、特にここ1カ月間でヘッジファンドが数億ドル単位で空売りしていると証言しています。[1]

空売りは、仲介業者等の企業から仮想通貨を借り入れて、それを仮想通貨市場で売却することで成立します。通常の取引とは異なり、空売りを仕掛けた者は、仮想通貨価格が下落すると利益となり、反対に上昇すると損失を被ることになります。従って、空売りは、仮想通貨価格の下落が予想される際に仕掛ける戦略だといえます。

空売りの仕組み

仮想通貨市場が全体的に下落傾向にあり、同じ米ドルのステーブルコインであるUSTが2022年5月に大暴落したことで、同じような暴落が起きる可能性があることが懸念されています。

テザー社CTOのツイート

この報道を受け、テザー社の最高技術責任者を務めるPaolo Ardoino氏は、Twitter(ツイッター)上で「USTとLUNAが崩壊して以降、更なる混乱を招こうとするいくつかのヘッジファンドの企てに関して隠さずに語ってきたが、組織的な攻撃に見えた」とコメントしました。

加えて、Ardoino氏は、これらのヘッジファンドが先物や空売りでショートポジションを構築したり、DeFi関連サービスのバランスを崩すことで、テザーに売り圧力をかけて値崩れを起こそうとしていると分析しています。[2]

ショートポジションを構築するヘッジファンドは、テザー社の準備金に問題があり、それが明らかになれば、テザーが大暴落するだろうと踏んでいる模様です。

これに関してArdoino氏は、「テザーが100%以上の準備金に裏付けられており、過去に償還に失敗したことはない」と言及して、財政面での健全性をアピールしました。また、Ardoino氏は、テザー社が過去48時間で70億ドルのテザーを償還した事実に触れて、十分な流動性があることを強調しています。[3]

テザー価格への影響

渦中のテザーですが、価格に影響は見られるのでしょうか。

当記事執筆時点では、テザー価格に大きな変動は見られません。2022年6月27日にヘッジファンドの空売りが報道される以前、テザー価格は0.9995ドル付近を推移していました。その後、3日間は若干の下落に見舞われており、0.9985ドルの安値を記録しています。この期間に影響がなかったわけでありませんが、下落率は0.1%程度で少なくとも市場がパニックに陥ることはありませんでした。

テザーと米ドルの価格チャート

画像引用:CoinMarketCap

knowledge USTディペッグ騒動とテザー

2022年5月、テラUSDTが米ドルとの連動性を失い、価格が崩壊しました。この影響は他のステーブルコインにも波及し、テザー価格も基準の1ドルから0.97ドル付近まで急落することとなりました。ペッグを維持できなくなるステーブルコインも出てきましたが、テザーは直ぐに回復に向かい、信頼性の高さを示したのです。

燻り続けるテザーの準備金問題

以前から仮想通貨市場では、テザー社が運用する準備金の透明性に疑問が投げかけられています。

前述の通り、テザー社が運用する準備金は、定期的に第三者機関による監査を受け、レポートが公開される仕組みになっています。しかし、過去には虚偽の申告があったとして、米商品先物取引委員会(CFTC)から罰金を支払うよう命じられるなど、何かと問題になってきました。

最近では、準備金のポートフォリオに大量のCP(コマーシャルペーパー、無担保の約束手形)が含まれていたことが明らかになっています。

point 準備金の質の問題

準備金は、金額以外にも質が重視されます。時価総額では同等の準備金を保有していても、価値の変わらない現金などで構成されている場合は高く評価される一方で、CPなどは不安定な資産として低く評価されます。

準備金の問題に関してArdoino氏は、「テザーはCPを450億ドルから84億ドルに減らしており、今後数カ月で完全に削減する予定です」と説明しました。また、Ardoino氏は、満期を迎えたCPはよりリスクの低い米国債に転換されており、その割合がゼロになるまで継続すると言及しています。

その他、出金を停止した仮想通貨レンディングのCelsius Network(セルシウスネットワーク)や、債務不履行に陥ったと噂されるThree Arrows Capitalに貸付を行なっていたのではないかとの疑念が持ち上がっていました。これに対して、テザー社は全てFUD(大衆心理を煽る恐怖や不確実性、疑念)だと否定しています。

黒い噂が尽きないテザーですが、Ardoino氏は「テザーのポートフォリオはこれまでよりも更に強固だ」と太鼓判を押しています。[4]

CeFiの透明性が問われる

テザーを含むCeFiは、全てがブロックチェーン上で完結するDeFiと比較して、透明性に課題を抱えています。

今回、ヘッジファンドがテザーをターゲットにしたのも、透明性の低さに漬け込んで仮想通貨市場を混乱に貶めることで利益を上げるためだと考えられます。反対にテザー社がきちんと準備金の根拠を提示することができれば、ヘッジファンドの企ては空振りに終わるので、今こそ透明性を示す時だといえるでしょう。

2022年に入ってから仮想通貨市場の低迷に同調する形で、CeFi関連サービスが次々と問題を露呈し始めていますが、テザーはどのような結末を迎えるのでしょうか。


Date

作成日

2022.07.01

Update

最終更新

2023.03.16

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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