Select Language

ステーブルコインUSTの崩壊懸念!その要因と今後の見通しは?

ステーブルコインUSTの崩壊懸念!その要因と今後の見通しは?

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2023.03.16 15:54
ステーブルコインUSTの崩壊懸念!その要因と今後の見通しは?

update 2023.03.16 15:54

2022年5月8日以降、人気ステーブルコインUSTの価格が急落しています。1UST=1米ドルであるはずが一時的に0.3ドル付近まで下落し、その後も乱高下しています。仮想通貨市場では何が起こっているのでしょうか。当記事では、ステーブルコインとしてのUSTの仕組みから価格変動の要因、今後の見通しなどに迫ります。

なお、この記事を読み進めるために、以下の3点をご確認下さい。

  • Terra(テラ):ブロックチェーンの名前
  • LUNA(ルナ):Terraブロックチェーン上で発行されるトークン
  • UST:Terraブロックチェーン上で発行されるステーブルコイン

価格暴落の様子

USTの仕組みや暴落の要因を考察する前に、価格下落の様子を紹介します。下のチャートは、USTの7日間の価格推移を示しています。本来ならば1ドル付近で安定的に推移しなければならないのに、一時的に0.3ドル付近まで急落していることが分かります。

USTのチャート

画像引用:CoinMarketCap

次に、LUNAの値動きを確認しましょう。LUNAは、UST価格の維持で重要な役割を担っています。下の表示期間1年のチャートを見ますと、右端部分で一気に暴落していることが分かります。わずか1週間で価格が99%も下落してしまいました。

LUNAのチャート

画像引用:CoinMarketCap

なぜ、このような事態になってしまったのでしょうか。これを考えるために、USTの仕組みから順に紹介します。

ステーブルコインUSTの仕組み

ステーブルコインの仕組みには、いくつかの種類があります。最も一般的な方法は、法定通貨を準備金として保管する方法です。

例えば、テザー(USDT)の場合、ユーザーがテザー社に米ドルを支払って同額のUSDTを受け取ります。テザー社は、受け取った米ドルを準備金として保管したり、一定割合の米ドルを資産運用に回して収入を確保したりします。また、ユーザーはUSDTをテザー社に返却すれば、米ドルを取り戻すことができます。USDTの価値の源は、USDTに対応する米ドルが現実に存在するという安心感です。このような、準備金がある仮想通貨を担保型ステーブルコインと呼びます。

テザー

一方、USTは無担保型ステーブルコインに分類されます。その名の通り、担保となる資産がありません。担保の代わりに裁定取引アルゴリズムを採用しており、USDTと仕組みは違えど1UST=1米ドルの維持が可能です。

point 裁定取引

裁定取引とは、同じような価値を持つ商品等の一時的な価格差を利用する取引手法です。何らかの理由で一方の商品等が理論値よりも高くなる場合、市場参加者はその商品を売ると同時に、割安になっている側を買います。すると、割高な側の価格は下落し、割安な側の価格は上昇して元の安定的な価格に戻ります。こうして、これら2つの価格は安定的に推移します。

ユーザーは、1米ドル分のLUNAで1USTを新規発行したり、1USTで1米ドル分のLUNAを償還したりできます。そして、UST価格が1米ドルから離れると、裁定取引の機会が生まれます(詳しくは下の記事で解説しています)。価格が上がれば売り圧力が高まり、価格が下がれば買い圧力が高まる構造のおかげで、USTは安定性を保つことができるのです。

なお、Terra(テラ)を支援する団体LFG(Luna Foundation Guard)は、USTの準備金としてビットコイン(BTC)等をいくらか保有してきました。よって、USTは完全に無担保型ステーブルコインというわけではありませんが、価格維持の仕組みとして裁定取引を基本に据えています。

UST価格暴落の要因

USTが暴落したことに関して、暴落の要因は確定していません。しかし、特定の大口ウォレットが暴落前にUSTを大量売却したことが確認されており、組織的な攻撃を疑われています。

また、DeFi(分散型金融)関連サービス「Anchor」に預けられていたUSTが大量に引き出されたことも、要因の1つになったと報道されています。Anchorは仮想通貨レンディングサービスを展開しており、UST総供給量180億ドル相当のうち約140億ドル分が預け入れられていました。しかし、今回の暴落を受け、大幅に減少しています。下のグラフを見ますと、預入額(緑色)と借入額(黒色)のグラフが急落している様子がわかります。

AnchorプロトコルにおけるTVLの大幅な減少

画像引用:Anchor Protocol

point 仮想通貨レンディング

仮想通貨レンディングは、仮想通貨の貸し借りができるサービスです。ユーザーは、仮想通貨を預け入れて金利を受け取ったり、金利を支払って借り入れることが可能です。Anchorプロトコルはステーブルコインに高い報酬を付与してきたため、人気を集めていました。

価格下落の連鎖

きっかけは大口の売りだったとしても、それがUSTやLUNAの暴落につながった理由は何でしょうか。LUNAに至っては、1週間で価格が99%も下落しました。これは、USTの仕組みが原因です。

USTは、価格維持のために裁定取引を利用しています。具体的には、UST価格が上昇したら、ユーザーはLUNAをバーン(焼却)してUSTを新規発行します。逆に、UST価格が下落したら、ユーザーはUSTをバーンしてLUNAを新規発行します。ところが、これが機能しなくなったため、暴落の連鎖となりました。

USTが暴落する前から、仮想通貨市場全体で価格が下落基調でした。すなわち、USTやLUNAの保有者は価格維持に不安を抱えていました。そこに大口の売りが重なり、UST価格が1米ドルよりもわずかに下方向に動きました。すると、UST保有者は1UST=1米ドルを維持できるか不安になりますし、LUNA保有者も、LUNAの価格維持についてさらに不安になります。

不安になれば、手元のLUNAを売って現金化して安全を確保します。すると、LUNAはさらに価格が下落します。これを見たUST保有者は安全を確保したくなり、保有しているUSTをバーンしてLUNAを新規発行し、そのLUNAを売って現金化します。この過程で、LUNAは新規発行され続けますので総発行量が劇的に増加し、価格が暴落します。

なお、USTには、ビットコイン(BTC)などの準備金があります。その準備金を売ってUSTを買えば、価格をある程度維持できます。しかし、LUNA価格は継続的に下落し続けます。

LUNAやUSTは国内取引所での取り扱いがなく、日本の仮想通貨コミュニティでは、海外ほど大きな話題になっていません。しかし、USTが安定性を回復できなければ、他の仮想通貨の大幅下落を通じて、国内市場でも開発や事業面で影響を受けることになるかもしれません。

UST価格は回復するか

USTはステーブルコインですが、実際には米ドルとの価格連動性が失われています。そこで、Terra(テラ)創設者のDo Kwon氏は2022年5月9日のツイートで、15億ドル相当の資金を投じてビットコイン(BTC)とUSTを確保し、これを利用してUST価格を安定化させるとしました。

これに対して仮想通貨コミュニティでは、価格が下落しているビットコイン保有がUST安定化にどの程度効果を発揮できるか、疑問が出ています。価格変動が激しい仮想通貨を準備金にする場合、テザーなどの担保型ステーブルコインとは勝手が異なるため、価格安定に効果的かどうかわかりません。ビットコイン価格は2021年7月以来の安値を更新しており、更なる下落も予想されています。加えて、Terraの中心であるLUNAも大幅に下落しており、USTの見通しは不透明です。過去にも、USTは価格変動に悩まされた経緯があるだけに、安定化は前途多難です。


Date

作成日

2022.05.12

Update

最終更新

2023.03.16

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

仮想通貨USUALの将来性は?RWA活用のステーブルコインプロトコルを解説

仮想通貨USUALは、ステーブルコインプロトコル「Usual」のガバナンストークンです。Usualは、BlackRockなどからRWA(現実資産)を集約してステーブルコインを発行し、その収益をコミュニティに再分配するプロトコルとして注目を集めています。
update2024.11.20 20:00

Milton Marketsが2024年11月より最大100%分入金ボーナスを開催

Milton Marketsで期間限定の100%入金分ボーナスキャンペーンが開催されます。当記事では100%入金分ボーナスの概要や、注意点を中心に解説していきましょう。
update2024.11.20 19:30

スマホ版MT4のやさしい使い方ガイド~iPhone&Androidの基本操作~

この記事では、優先的に押さえておきたいMT4アプリの機能を5つのグループにまとめ、iPhone版とAndroid版での使い方を解説します。「基本操作を手っ取り早く確認したい!」という方はぜひご活用ください。
update2024.11.20 19:00

ZoomexがクリプトバトルZを開催!毎週開催の取引大会で現物USDTやボーナスを獲得

2024年11月1日、海外取引所のZoomex(ズーメックス)が、取引大会シリーズ「クリプトバトルZ」を開催しました。ラウンドごとの特典総額は3,480ドル相当です。当記事では、クリプトバトルZの詳細や参加方法、注意点を解説します。
update2024.11.15 20:00

ゴールドラッシュXMは本当に儲かるのか?ほぼ破綻リスクゼロのEAの実力は

ゴールドラッシュXMのランディングページで謳われている「1ヵ月で取引資金が2倍に」、「破綻リスクはほぼゼロ」という宣伝文句に違わぬ実力が備えられているのか、フォワードテスト・バックテストを実施して検証しました。
update2024.11.14 20:30

Titan FXがブラックフライデーキャンペーンを開催!取引でキャッシュバックが付与

Titan FXが、2024年11月25日(月)からブラックフライデーキャンペーンを開催します。今回のキャンペーンでは、FX通貨ペア銘柄またはゴールドを1ロット取引するごとに500円のキャッシュバックが付与されます。
update2024.11.14 20:00

XMTradingが仮想通貨CFDのスプレッドを縮小!どのくらい狭くなったか検証

2024年10月25日にXMTradingが仮想通貨CFDのスプレッドを縮小しました。この記事では、BTCUSDとETHUSDのスプレッドの計測結果やほかのFX業者と比較した結果を解説します。
update2024.11.14 19:30

Milton Marketsが11月の1万円FXチャレンジとXリポストキャンペーンを開催!

Milton Marketsで、11月の1万円チャレンジが開催されます。この記事では、開催期間や上位入賞の条件、これまでの1万円チャレンジと変わった点などを解説します。
update2024.11.14 19:00

XMTradingがお歳暮プロモを開催!100%入金ボーナスを付与

海外FX業者のXMTradingが2024年10月15日から11月15日までお歳暮プロモを開催することを発表しました。キャンペーン期間中に対象口座へ入金すると、100%の入金ボーナスが付与されます。新規・既存ユーザーの両方が対象です。
update2024.11.12 19:30

Zoomexがあったか冬支度応援キャンペーンを開催!総額76万円相当のビットコインとAmazonギフト券がもらえる

Zoomex(ズーメックス)が、あったか冬支度応援キャンペーンを開催しました。各種条件をクリアすると、総額76万円相当のビットコインとAmazonギフト券を獲得できます。キャンペーン開催期間は、2024年11月19日〜11月25日までです。
update2024.11.07 19:30
youtube youtube

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル