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分散型取引所のdYdXとは?取引手数料が無料になる注目のDEX

分散型取引所のdYdXとは?取引手数料が無料になる注目のDEX

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update 2022.12.15 17:58
分散型取引所のdYdXとは?取引手数料が無料になる注目のDEX

update 2022.12.15 17:58

dYdX(ディーワイーディーエックス)は、高いデリバティブ取引高を誇る分散型取引所(DEX)です。Coingeckoのデリバティブ取引所一覧を見ますと、2022年11月7日時点のdYdXの24時間取引高は約3.8億ドルであり、DEXとしてはトップに位置します。

その透明性や革新性が注目されるDEXの中でも、dYdXは中央集権取引所に近いUIや、取引時にガス代が発生しない等の特徴から支持を得ています。

2022年6月には独自チェーンに移行すること、8月には10万ドル分までの取引手数料を無料にすることが発表され、その点でも話題となりました。

分散型取引所dYdXとは

分散型取引所(DEX)のdYdX(ディーワイディーエックス)は、2017年にCoinbase(コインベース)の元ソフトウェアエンジニアであるAntonio Juliano氏によって立ち上げられました。

dYdXはスワップ(ブロックチェーンを介した仮想通貨の交換)に特化したDEXと異なり、永久先物契約をメインのサービスとしています。トレード環境を重視しており、そのインターフェースは、Binance(バイナンス)やBybit(バイビット)が提供するような本格的な仕様となっています。

dYdXのユーザーインターフェース dYdXのユーザーインターフェース

dYdXは他のDEXと同じように、ウォレットを接続することで利用可能です。KYC(顧客確認)などのプロセスで個人情報を提出する必要はありません。ウォレットを接続後は、保有通貨を預け入れるだけで取引が可能となります。

dYdXは日本での知名度はまだ低いですが、デリバティブ取引が可能なDEXとして、高い支持を得ているといえます。

Coingeckoのデリバティブ取引高ランキングでは、2022年11月7日現在、dYdXの24時間取引高は、約3.8億ドルでDEXとしてはトップです。同ランキングにおいて、DEXとして2位のPerpetual Protocolは取引高が約158万ドルですので、高いシェアを占めていることがわかります。

貴重な日本語対応のDEX

仮想通貨サービスで日本語対応のものは数が少なく、DEXも例外ではありません。その中で、dYdXは公式サイトが日本語に対応しており、日本向けのコミュニティも存在します。

なお、言語の切り替えはサイト左上から可能です。

dYdXの日本語表示 dYdXの日本語表示

また、まだコンテンツの数は少ないながら、ヘルプセンターの記事も日本語化されています。

レイヤー2による安価かつ高速な取引

dYdXは、トランザクションを行うコストの高騰がたびたび問題になるイーサリアムブロックチェーン上に構築されたDEXです。この問題を解決するため、dYdXではStarkWare社が開発するレイヤー2のソリューションを統合しており、安価かつ高速な取引が可能となりました。

レイヤー1とレイヤー2の関係
point レイヤー2とは

メインとなるブロックチェーンであるレイヤー1に対して、それを基礎に構築され、情報処理を手助けする副次的なブロックチェーンをレイヤー2と呼びます。レイヤー2は、ブロックチェーンの処理を高速化し、取引承認の遅延や手数料の高騰などのスケーラビリティ問題を緩和することに貢献しています。

取引手数料が無料になる仕組み

CEXであってもDEXであっても、一般的に取引時には手数料がかかります。しかし、dYdXでは30日間の取引量が10万ドルに達するまで、全ユーザーの取引手数料が無料となります。取引量は30日ごとにリセットされる仕組みなので、ユーザーは継続的に恩恵を受けられます。

取引高が10万ドルに到達すると、それ以降は取引手数料が発生します。その際の手数料は直近30日間のトレードボリュームによって変動する仕組みであり、BinanceやBybitといった中央集権取引所と同様です。

レベル 30日間の取引量(ドル) 手数料
Free 10万未満
メイカー:0%
テイカー:0%
1 10万以上100万未満
メイカー:0.02%
テイカー:0.05%
2 100万以上500万未満
メイカー:0.015%
テイカー:0.04%
3 500万以上1,000万未満
メイカー:0.01%
テイカー:0.035%
4 1,000万以上5,000万未満
メイカー:0.005%
テイカー:0.03%
5 5,000万以上2億未満
メイカー:0%
テイカー:0.025%
VIP 2億以上
メイカー:0%
テイカー:0.02%

手数料は比較的安く設定されています。加えて、独自仮想通貨のDYDXやDYDXの預け入れにより受け取れるstkDYDX、NFTのHedgiesを保有していれば、手数料割引を受けられます。

point 取引時にガス代がかからない

dYdXでは取引時にガス代がかかりません。注文時にガス代を請求される仕様だったら、スムーズに取引を行うのは難しかったでしょう。

ノンカストディアルなサービス

分散型取引所(DEX)は、ブロックチェーンを活用することで、中央管理者がいない状況でのサービス利用を可能としています。

DeFiと既存金融の仕組みの違い

中央管理者が存在しないDEXでは、ユーザーはウォレットの秘密鍵を自分で管理します。このように資産を自分だけで管理する性質を、第三者に管理してもらう性質と比較して「ノンカストディアル」と呼びます。

第三者に管理される場合、自己資産の取り扱いにおいて第三者による制限を受けます。一方で、ノンカストディアルなサービスであるdYdXでは、ユーザーの資産は個人ウォレットまたはスマートコントラクト上で保管されるので、基本的に第三者による介入を受けません。

中央集権取引所などと異なる形で資金を管理できる点も、dYdXを使うメリットです。

非中央集権型に特有のデメリットも

非中央集権という特性もあって、dYdXを利用するには一定以上の知識や経験が必要になります。

また、従来型の取引所のような専属のサポートスタッフが存在しません。サポートはコミュニティで受けられますが、取引やDeFiに慣れていない場合、不安に感じる可能性があります。

point サポートは公式Discord内で

dYdXに関する質問は、公式Discord(ディスコード)の「open-a-ticket」というチャンネルから行えます。中央集権型サービスのサポートと比べると簡素ですが、他の人にやり取りを見られることなく質問できます。また、日本語も利用できます。

独自仮想通貨DYDXも注目を集める

dYdXは、独自仮想通貨のDYDXを発行しています。保有するとdYdXで取引をする際の手数料が割引となるなど、取引所利用者向けの特典が用意されています。

Binance(バイナンス)などの他の取引所が発行する独自仮想通貨は、過去に大きく値上がりをしました。そのことから、値上がり益狙いの投資対象として保有している人もいることでしょう。

DYDXの将来性

2022年11月現在、時価総額は200位圏内となっており、メジャーな仮想通貨とは言い難い状況です。

しかし、エアドロップ(「給付金」付与)が行われた際に当時の時価総額で1,000万円を超える利益を得た人が出たこともあり、名前を聞いたことがある人は比較的多いでしょう。

dYdXはやや敷居の高かったDEXの使いやすさを向上させました。また、現在の使いやすさを維持したまま完全分散化することを目指しています。dYdXのサービスが向上すれば、ユーザーが増加し、DYDXの価格が上昇する可能性もあります。

透明性向上に向けた開発

dYdXは代表的な分散型取引所です。しかし、実際は開発企業などの影響を強く受けているので、中央集権型と分散型の中間に位置するハイブリッド取引所と認識されています。

それでも、dYdXはコミュニティを中心とした透明性の高い環境の構築を目指しています。完全な中央取引所のように、規制の問題や詐欺、一方的な都合でサービスが停止されるリスクは比較的低いと考えられます。

現在は完全分散化を目指して、DAOによる運営に移行する段階にあるので、今後も透明性の向上が望めます。

point DAOとは

DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、日本語で「分散型自立組織」と訳されます。つまり、中央管理者が存在しなくとも、参加者の活動によって機能する組織を指します。中央集権型の組織と比較して民主的で透明性の高い存在と見なされており、ブロックチェーンの普及で広く採用され始めています。

DAOは数年前から存在していましたが、話題に上ることは限られていました。最近はBybit(バイビット)が支援するBitDAOが注目を集め、DAOの知名度が上昇しています。

使い勝手が中央集権取引所に近いDEX

dYdX(ディーワイディーエックス)は通常のDEXと異なる機能を兼ね備えています。中央集権型の取引所と同等の環境を構築することに成功しています。

point スマートフォンアプリ対応

2022年11月現在、dYdXはiOSのアプリに対応しています。Androidには未対応ですが、2023年前半にリリースできるよう開発が進められています。

TradingViewチャートで板取引ができる

dYdXでは、TradingViewのチャートを利用した板取引が可能です。TradingViewのチャートは多くの中央集権型取引所が採用しているものであり、同じような感覚で利用できます。

dYdXのTradingViewチャート dYdXのTradingViewチャート
point 板情報の活用方法

注文の数が多ければ、その価格帯で売買したい参加者が多く存在し、反対に注文の数が少なければ、参加者があまりいないと読むことができます。板情報はリアルタイムで変化するので、市場における需要と供給を見るためのツールとして利用されることがあります。

板情報を公開するなど、トレード環境を向上させているdYdXは本格派ということができるでしょう。

レバレッジが掛けられる

dYdXではレバレッジを掛けることもできます。現時点でdYdXにおける最大レバレッジは、通貨ごとに以下のようになっています。

仮想通貨 最大レバレッジ
BTC 20倍
ETH 20倍
その他の通貨 10倍

成行の場合は注文画面の「レバレッジ」欄から、注文ごとにレバレッジを調整します。

dYdXでの成り行き注文時のレバレッジ調整 dYdXでの成り行き注文時のレバレッジ調整

成行以外の注文時には、レバレッジ調整ができない仕様です。注文数量に保有残高以上の数値を入れると、レバレッジがかかるようになっております。

なおdYdXは、クロスマージン(通貨ペアを超えてアカウント全体のリスクで証拠金を計算する方法)を採用しております。

point BybitやBinanceと比べるとレバレッジは低め

Bybit(バイビット)の最大レバレッジは全通貨ペア100倍、Binance(バイナンス)では全通貨ペア125倍までです。そのため、dYdXの最大レバレッジが低く感じる人もいるでしょう。dYdXを利用する場合、この点も踏まえてトレードを行うことになります。

多様な注文タイプ

dYdXでは多様な注文タイプを駆使して、取引することが可能です。新規注文時には、主に以下の2種類の方法が利用されます。

注文の種類 意味
成行注文 注文時点で最も有利な価格で注文する方法です。利確の価格を設定できる「利益確定成行」注文もあります。
指値注文 現在レートより有利な、指定された価格に達した際に注文する方法。利確の価格を設定できる「利益確定指値」注文もあります。

保有ポジションの決済は、成行もしくは以下の注文方法を利用して行います。

種類 内容
ストップリミット 市場価格より不利な価格をトリガーとして設定します。相場がトリガーに達すると、指値注文が出され、損切り等の役割を果たします。
ストップマーケット 市場価格より不利な価格をトリガーとして設定します。相場がトリガーに達すると成行注文が出され、損切り等の役割を果たします。
トレーリングストップ 価格が有利な方向に動いたときのみ、逆指値注文も有利な方向に動きます。一方向に動く相場で効果を発揮します。
利益確定指値 市場価格より有利な価格をトリガーとして設定します。相場がトリガーに達すると、指値注文が出され、利益確定の役割を果たします。
利益確定成行 市場価格より有利な価格をトリガーとして設定します。相場がトリガーに達すると成行注文が出され、利益確定の役割を果たします。

これらの注文タイプを活用することで、幅広い戦略を用いて取引することが可能です。なお、成行と指値以外の注文方法は、チャートの「逆指値」をクリックすると切り替えることができます。

dYdXの注文方法切り替え dYdXの注文方法切り替え
caution 切り替えても表示は変わらない

「逆指値」の表示をクリックして注文方法を切り替えても、表示そのものは変更されません。中に表示される価格指定などの項目が変わることで、注文方法の変更が反映されていることは確認できます。表示の不具合と思われます。

dYdXで利用可能なサービス

dYdX(ディーワイディーエックス)は、DEXとして以下のようなサービスを展開しています。

  • 永久先物契約
  • コンペティション

dYdXでは、需要やプロジェクトの将来を踏まえたサービスの追加・廃止が活発です。以下の機能は過去利用可能でしたが、現状は利用できません。

  • スポット(現物)取引
  • マージン取引
  • 仮想通貨レンディング
  • 仮想通貨の借入
point スポット廃止で永久先物契約に注力

2021年11月1日に閉鎖した旧プラットフォームでは、スポット取引が可能でした。しかし、主力サービスの永久先物契約に注力するために、2022年11月現在は利用できません。

dYdXは独自ブロックチェーンの開発を進めており、取引所もそちらに移行させる予定です。移行後には、スポット取引に対応する可能性があります。

永久先物契約

永久先物契約とは、現物のやり取りをせず、差益決済のみを目的とした取引です。永久先物契約は、価格の上下を予想する際に利用します。保有し続けるのに資金調達料を請求される可能性があるので、長期投資には向いていないですが、レバレッジをかけることができるので、短期投資に向いています。

ウォレット接続後に「取引」タブをクリックすることで、永久先物契約を行えます。

dYdXの取引メニュー dYdXの取引メニュー
knowledge 仮想通貨の永久先物契約

一般的な意味での先物契約は、将来の値動きを予測して、ある資産の売買を約束する契約です。これが永久先物契約になると、売買の期間が無期限となるため、実質的に差益決済を目的とした取引になります。仮想通貨取引所では、満期日が定められておらず永続的に特定のポジションを保有可能な「永久先物取引」の取引が盛んに行われています。

dYdXでは、米ドルを裏付けにするステーブルコインであるUSDコイン(USDC)を証拠金として預け入れて、永久先物契約を行います。

多くの中央集権取引所では、テザー(USDT)が証拠金として利用されますが、USDCの方が信頼性が高いといわれています。現在Binance(バイナンス)では、USDCはBUSDに変換されますがUSDTは変換されません。この仕様にはUSDCの信頼性が影響したと見ることもできます。

2022年11月現在、dYdXで取引できる銘柄は37銘柄であり、これは中央集権的な取引所と比べて多いとはいえません。しかし、dYdXのコミュニティが需要が高く流動性が確保できると判断した銘柄は、取引可能となるでしょう。

コンペティション

コンペティション(トレードリーグ)は、dYdXで開催されているトレードバトルです。期間ごとの損益を競うという点で、コンペティションは一般的なトレードバトルと同じですが、以下のような特徴もあります。

  • 毎週開催される
  • 5つのリーグに分かれている
  • 結果に応じてリーグ昇格・降格がある
  • 勝つとNFTのHedgiesがもらえる

コンペティションに関する基本的な情報は、「コンペティション」タブから確認可能です。

dYdXのコンペティシンタブ dYdXのコンペティシンタブ

dYdXを使い始め、有効証拠金残高が500ドルをクリアしたユーザーは「ブロンズ」リーグに参加できます。そして、ブロンズリーグでトップ50%の結果を出すことで、「シルバー」リーグに昇格します。

この他、日次のコンペティションや日本人限定のトレードバトルも開催されているので、報酬を目指して参加してみるのも良いでしょう。

NFTのHedgies

HedgiesはハリネズミをモチーフにしたNFTアバターコレクションです。2022年2月にコミュニティ参加者やトレーダー達に対して初回配布が行われました。現在では、dYdXのコンペティションの勝者に報酬として配布されています。

dYdXのNFTのHedgies

Discord(ディスコード)やTwitter(ツイッター)のアイコンとして利用できることに加え、Hedgies保有者はdYdXの手数料割引を受けられます。

dYdX FOUNDATIONとは

取引所としてのdYdX(ディーワイディーエックス)の特徴を紹介しましたが、プロジェクト全体を把握する上では「dYdX FOUDATION(dYdX基金)」を理解することも重要でしょう。

dYdX FOUDATIONは、コミュニティ主導による継続的な成長を支援する組織です。dYdX FOUNDATIONのサービスページでは、オンチェーンガバナンスへの参加ができます。ステーキングや取引報酬という機能も存在します。

ガバナンス

現在のdYdXの活動は、独自仮想通貨(暗号資産)のDYDX所有者による提案と投票により決まります。提案権と投票権の大きさは保有するトークン量によって変わる仕組みであり、トップページから確認可能です。

保有するガバナンス権を他の人に委任することも可能です。

ステーキング

dYdX FOUNDATIONのページ内には、ステーキングという項目があります。

2022年11月9日現在では「流動性プール」と「セーフティプール」が存在します。流動性プールはUSDCの預け入れ、セーフティプールはDYDXトークンの預け入れが可能でした。しかし、現在では利用できません。

SNS上ではステーキング機能の存続を求める声もありましたが、コミュニティの判断により廃止となりました。

取引報酬

取引報酬とは、dYdX上で支払った手数料額に応じて、ユーザーにDYDXトークンを付与する機能です。dYdX利用者にインセンティブを与えることや、流動性を向上させることを目的として実装されています。

報酬は「エポック」という28日区切りの期間ごとに計算され、エポック終了から7日後に獲得可能となります。

中央集権型取引所のシェアを奪えるか

これまで仮想通貨市場では、Binance(バイナンス)やBybit(バイビット)などの中央集権型の取引所が主流となってきました。DEXはスケーラビリティやユーザビリティ、機能性の問題で、万人向けとはなっていませんでしたが、dYdX(ディーワイディーエックス)はそれを変える可能性を秘めています。

中央集権取引所は、24時間対応のライブチャットが主流であり、それと比較すると不便であることは否めませんが、どの国の規制も受けない、自動化されており人為的介入のリスクがないという点に魅力を感じている人もいます。

今後、DEXがどこまで普及するか、中央集権型取引所のシェアを奪えるかに注目が集まります。


Date

作成日

2022.11.08

Update

最終更新

2022.12.15

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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