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BNBチェーンでハッキング被害が発生、中央集権型ブロックチェーンのメリット・デメリット

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update 2023.03.16 15:30
BNBチェーンでハッキング被害が発生、中央集権型ブロックチェーンのメリット・デメリット

update 2023.03.16 15:30

2022年10月7日、BNBチェーンのクロスチェーンブリッジである「BSC Token Hub」がハッキングを受けました。BNBチェーンは、大手取引所Binance(バイナンス)の独自ブロックチェーンです。仮想通貨(暗号資産)BNBの基盤となっています。ハッキングに対し、BinanceはBNBチェーンを緊急停止して被害拡大を防止しました。

当記事では、ハッキングの詳細やBNBチェーンの概要、中央集権型ブロックチェーンのメリット・デメリットを解説します。

ハッキングの詳細

2022年10月6日、BNBチェーンに不規則な動きがあったとして、一時的に稼働が停止されました。その後、Binance(バイナンス)のCEOであるチャンポン・ジャオ氏が、「クロスチェーンブリッジであるBSC Token Hubのハッキングにより、BNBが発行されている」とTwitter(ツイッター)の公式アカウントを通じて報告しました。

point クロスチェーンブリッジとは

クロスチェーンブリッジとは、複数のブロックチェーンをつないで規格の異なる仮想通貨を相互に利用可能にする技術です。この技術が普及すれば、ブロックチェーンを跨いで仮想通貨をやり取りできます。ブロックチェーンが乱立している現在、クロスチェーンブリッジは重要な存在です。

犯人のハッカーはクロスチェーンブリッジのBSC Token Hubをハッキングし、BNBを不正に発行しました。その額に関しては様々な憶測が飛び交っており、合計200万BNB(約5.6億ドル)程度だといわれています。

1億ドル以上の仮想通貨が、イーサリアム(ETH)やファントム(FTM)等に変換された模様です。

ブロックチェーンが緊急停止

ハッキング被害を受けたBNBチェーンは、一時的に停止しました。これにより、ユーザーの資金がさらに危険にさらされることは無くなりました。BNBチェーン外に送金された1億ドル以上の仮想通貨に関しても、その内の700万ドル分が凍結されました。

この措置は、BNBチェーンのバリデータやコミュニティが結束したことで可能となりました。BNBチェーンは必要なアップグレードが施されて、その後再稼働しています。

BNB価格が下落

この騒動で、BNB価格が軟調になっています。ハッキングが報告された2022年10月7日、BNB価格は4万2,000円台から約4万円付近にまで、約5%%近く急落しました。

その後、アップデートが施されて再稼働していますが、BNB価格は事件前の水準に戻っていません。BNBチェーンの脆弱性や、運営判断でブロックチェーンを停止したことがどのように影響するのか、様子を見る展開が続いています。

当記事執筆時点(2022年10月)で、BNB価格は3万9,000円付近で推移しています。

BNBと日本円の価格チャート

画像引用:CoinMarketCap

なお、上のチャートでは価格が急落しているように見えますが、下の長期チャートを見ますと、ほとんど影響を受けていないことが分かります。すなわち、ハッキングはマイナス材料であるものの、少なくとも現時点では、BNBチェーンの信頼を大きく揺るがす事件になっていないことが分かります。

BNBと日本円の価格チャート

画像引用:CoinMarketCap

BNBチェーンの概要

BNBチェーンは、Binance(バイナンス)が開発する独自ブロックチェーンです。以前はBinance Smart Chainという名称でしたが、リブランディングでBNBチェーンに変更されています。

イーサリアムキラーの有力候補として期待されており、そのエコシステムは年々拡大しています。DeFi(分散型金融)やブロックチェーンゲームなどのDApp(分散型アプリ)が、数多く開発されています。

代表的なDAppとして、DEX(分散型取引所)のPancakeSwapや、仮想通貨連レンディングのVenusなどが存在します。

point イーサリアムキラーとは

イーサリアムキラーとは、将来的にイーサリアムに取って代わる可能性がある仮想通貨を指します。その特徴として、スケーラビリティ問題をある程度解決しており、また、新しい技術を取り入れていることが挙げられます。

中央集権型ブロックチェーン

BNBチェーンはコンセンサスアルゴリズム(ブロックを生成するルール)として、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)から派生したPoSA(プルーフ・オブ・ステーク・オーソリティ)を採用しています。

PoSではバリデータがブロックを生成し、これはPoSAでも同様です。多くの場合、バリデータは多数のノードから選出されるようになっています。

BNBチェーンは21名のバリデータによって安全性が維持されており、その仕組みは他のPoSを基礎とするブロックチェーンと何ら変わりありません。しかし、バリデータがBinanceや関係者で固められていることから、BNBチェーンはより中央集権型のブロックチェーンだと考えられます。

PoSとバリデータの説明画像
point バリデータとは

PoS(プルーフ・オブ・ステーク)型のブロックチェーンでは、バリデータがブロックの検証と承認を行います。バリデータはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)のマイナーのような立ち位置で、報酬と引き換えにネットワークの保全に努めます。

BNBチェーンの対応

BNBチェーンは今後の対応について、DAO(分散型自立組織)による投票で決定する方針です。すなわち、ガバナンストークン保有者による意思決定を行います。

具体的には、流出した資産を凍結するか、BNBの自動バーンの資金を損失の補填に充てるか、100万ドル規模のホワイトハッカープログラム(バグを検証するためのプログラム)を実施するか、取り戻した資金の一部をハッカーの懸賞金として活用するかなどが含まれます。

point DAOとは

DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、日本語で「分散型自立組織」と訳されます。つまり、中央管理者が存在しなくとも、参加者の活動によって機能する組織を指します。中央集権型の組織と比較して民主的で透明性の高い存在と見なされており、ブロックチェーンの普及で広く採用され始めています。

コミュニティからは批判の声も

BNBチェーンは、ブロックチェーンを迅速に停止できたことで、被害を最小限に抑えることができたとコメントしています。しかしTwitter上では、ハッキング被害が理由とはいえ、ブロックチェーンを停止したことに批判の声も挙がっています。

本来、パブリックブロックチェーンは、管理者がいないことや不可逆な性質が前提になっています。従って、中央集権型の組織に依存しない、誰にでも公平で信頼できるシステムを構築可能です。

元々、BNBチェーンは中央集権型のブロックチェーンだと認知されていました。今回、ブロックチェーンが停止されたことで、そのリスクが改めて周知されることとなりました。

このことから、Twitter上では、BNBチェーンが「実は分散型組織に見せかけた中央集権型のブロックチェーンだ」と警告するツイートが大量に投稿されています。

中央集権型のメリット・デメリット

中央集権型のブロックチェーンは、短所もありますが長所もあります。一般的な分散型のブロックチェーンと比較した場合、中央集権型ブロックチェーンの特徴は以下の通りです。

中央集権型のメリット

中央集権型ブロックチェーンのメリットとして、以下のようなものが考えられます。

トラブルに迅速に対応できる

中央集権型のブロックチェーンは、今回のBNBチェーンのように、ハッキングやバグなどのトラブルに対して迅速に対応できます。DeFiが登場して以来、ブロックチェーンの脆弱性を狙ったハッキングが流行しているので、これは大きなメリットです。

過去には、イーサリアムで大規模なハッキングが発生したことがあります。しかし、BNBチェーンのような措置が取られることはありませんでした。

コミュニティ分裂のリスクが少ない

分散型のブロックチェーンでは、開発方針の違いなどからコミュニティが分裂することが多々あります。例えば、ビットコイン(BTC)からは、ビットコインキャッシュ(BCH)などの多数のプロジェクトが独立しています。

コミュニティの分裂は悪いことばかりではありませんが、一般的にコミュニティの弱体化やブランドイメージの低下などにつながります。中央集権型のブロックチェーンは、主体がはっきりしているので、開発方針の違いなどによるコミュニティの分裂が起きにくいです。

中央集権型のデメリット

中央集権型のブロックチェーンのデメリットは、次のようなものが考えられます。

運営母体の動向に左右される

中央集権型のブロックチェーンは、運営母体の動向に左右されるというデメリットを抱えています。

例えば、BNBチェーンはBinance(バイナンス)が開発するブロックチェーンです。従って、Binanceが撤退したり、事業が不振になったり、規制の対象になったりすると、BNBチェーンにも影響が及ぶと考えられます。

Binanceは、グローバル市場向けに事業を展開しているオフショア取引所です。近年、犯罪利用の抑止目的で仮想通貨規制が強まっているので、Binanceはその煽りを受ける可能性があります。

リップル(XRP)は、BNBチェーンと同じく、中央集権型のブロックチェーンとして知られています。そして、米SEC(証券取引委員会)に証券法違反で訴えられたことをきっかけに、価格が大幅に低下しました。

knowledge リップルと米SECの戦い

米SECは、リップル社が当局に届け出ずに違法な資金調達を行ったと主張しています。これに対してリップル社は、リップルは有価証券に該当しないため証券法に反しないと反論し、徹底抗戦の構えを見せています。2022年10月時点で、この裁判の決着は付いていません。

このような例からも、中央集権型のブロックチェーンは、運営母体の動向に左右されるといえるでしょう。

ガバナンスが難しい

一般的なパブリックブロックチェーンは、DAOによる投票などで、より民主的な方法で運用されています。一方、中央集権型のブロックチェーンは、運営母体が全てを掌握しています。このため、信頼度と透明性の高いガバナンスモデル構築は難しいかもしれません。

運営母体がしっかりとした運営を行っていれば、何も問題はありません。しかし、悪意がある者が組織に存在したり、状況が悪くなったりすると、コミュニティを顧みない行動に走る可能性もあります。実際、プロジェクトによる詐欺的な行為が横行しています。

当記事執筆時点(2022年10月)において、BNBチェーンのガバナンスは上手く行われています。それでも、分散型のブロックチェーンと比較すると、中央集権型のブロックチェーンは、ガバナンスが弱点となることが多いです。

中央集権型への投資

中央集権型のブロックチェーンは、分散化されたブロックチェーンとは異なるリスクを抱えています。コアな仮想通貨ユーザーや投資家の中には、中央集権型のブロックチェーンはサトシ・ナカモトの意思に反するとして、邪道だと考える者も存在します。

しかし、中央集権型のブロックチェーンにもメリットがあります。今回のBNBチェーンのように、ハッキングによるダメージを緩和できるのは、明らかな長所だといえるでしょう。

中央集権型のブロックチェーンは、分散型と同様に一長一短です。そこで、投資する際には、どのような面がリスクになるか把握することが重要です。リスクに見合うだけのリターンがあると考えれば、投資を検討する余地がありそうです。


Date

作成日

2022.10.12

Update

最終更新

2023.03.16

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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