作成日
:2022.03.03
2024.05.30 11:50
イーサリアム(ETH)は、ビットコイン(BTC)に次ぐ規模の仮想通貨です。しかし、イーサリアムがスケーラビリティ問題で手数料高騰や取引遅延などに苦しめられており、徐々にイーサリアムキラーが台頭しつつあります。
イーサリアムキラーとは、イーサリアムの地位を奪う可能性があるDApp(分散型アプリケーション)プラットフォームです。今後も、NFTやメタバース、DeFi(分散型金融)関連サービスの需要が増す見込みであり、利便性の高いイーサリアムキラーに対する期待が高まっています。
2022年現在、どのようなブロックチェーンがイーサリアムキラーとして注目されているでしょうか。
スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンの障害の一種です。ブロックチェーンの処理能力が送金需要よりも小さいと発生します。主な障害は、取引手数料の高騰と送金遅延です。
イーサリアムキラーとは、DAppプラットフォームとしてイーサリアムの座を狙うブロックチェーンを指します。
特徴としては、イーサリアムと同じくスマートコントラクトを採用しており、コミュニティがDApp開発を活発に行なっていることが挙げられます。加えて、より効率的なPoS(プルーフ・オブ・ステーク)型のコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーンを利用した契約の自動履行プログラムを指します。「特定の条件」と「条件が満たされた場合の行動」を記載しておけば、条件が満たされた際にプログラムが自動で実行されます。このスマートコントラクトがDAppの基礎となっており、様々な機能の実装を可能にしています。
2022年8月時点で、イーサリアムはスケーラビリティ問題を解決できずにいます。これに対して、イーサリアムキラーは、高速取引や安い手数料を実現しています。すなわち、イーサリアム(ETH)が抱えている課題をある程度克服しているのです。
これを受けて、イーサリアムキラーの需要が高まっています。期待のイーサリアムキラーの中には、仮想通貨価格が数十倍に膨れ上がっているものもあり、投資対象としても注目を集めています。
仮想通貨市場では、多数のイーサリアムキラーが名乗りを上げています。今回は、そんなイーサリアムキラーの中でも、主要なブロックチェーンを8種類ご紹介します。
8つのブロックチェーンのTVLを比較すると、下のグラフになります。TVLとは、DeFiプロジェクトに預けられた資金量であり、下のグラフはブロックチェーンごとに集計したものです。縦軸の最大値は100%、横軸は2022年1月から9月上旬までの推移です。イーサリアムが圧倒的で、BNBチェーンやソラナがそれに続いている様子が分かります。
ちなみに、グラフ半ばでシェアを突然失っているブロックチェーンがあります。テラです。
参照データ:DefiLlama
ブロックチェーン | BNBチェーン |
---|---|
TVL | 約 7,593億円 |
ネイティブトークン | BNB |
時価総額(ランキング) | 約 6兆4,618億円(5位)(*1)(*2) |
(*1) 2022年9月8日時点
(*2) ETHの時価総額は、28兆7,160億円で2位(2022年9月8日時点)
BNBチェーンは、かつてバイナンス・スマート・チェーンと呼ばれていたブロックチェーンで、大手取引所Binance(バイナンス)が開発しています。イーサリアムとの互換性を確保しつつ、安価な手数料で高速な取引を可能にしており、既にメタバースゲームやDeFi関連サービスなど多くのプロジェクトで利用されています。実質的にBinanceの中央集権型のブロックチェーンであることから、他と比較して特異な存在かもしれません。その一方、中央集権的ですから、変更や開発を迅速にできるというメリットがあります。
なお、ネイティブトークンとしてBNBを発行しています。BNBの時価総額は仮想通貨市場全体で第5位であり、イーサリアムとの差を縮めています。また、多数の新規プロジェクトが計画されており、今後もイーサリアムキラーとして影響力を増していく可能性があります。
ブロックチェーン | ソラナ |
---|---|
TVL | 約 2,016億円 |
ネイティブトークン | SOL |
時価総額(ランキング) | 約 1兆6,481億円(9位)(*1) |
(*1) 2022年9月8日時点
ソラナ(SOL)は、1秒間に5万件の取引処理が可能で、レイヤー2が不要な高性能なブロックチェーンとされています。また、ブリッジと呼ばれる機能で他のブロックチェーンとの相互運用性を高めており、イーサリアムとの互換性を確立しています。
レイヤー2とは、メインとなるブロックチェーン(レイヤー1)の負荷を軽減するために利用される、副次的なブロックチェーンを指します。
ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンは、独立した技術です。これらは本来、異なる規格の仮想通貨に対応できません。しかし、ブロックチェーンの相互運用性が確立されれば、ブロックチェーンを跨いだ仮想通貨の送金やDAppの利用などが可能になり、利便性を飛躍的に向上させることができます。
ソラナは、最も有力なイーサリアムキラーのひとつだと考えられています。大手取引所のFTXや、大手ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツなどから支援を受けています。現状、DApp開発が積極的に進められ、DeFiやNFT、ブロックチェーンゲームなどの分野で利用が拡大しています。
ソラナは、イーサリアムキラーの筆頭と目されている一方、立て続けにトラブルに見舞われています。2022年には、ブロックチェーンの稼働停止などがあり、再起動を余儀なくされました。
その要因は複合的です。例えば、送金手数料の安さが仇となって、ボットが大量のトランザクションをスパム的に送信したことが明らかになっています。結果的に、ブロック生成時間が理論値の倍近くまで増加し、パフォーマンスが低下しました。
セキュリティ面では、ソラナ関連のウォレットから仮想通貨が流出しました。その金額は、800万ドル以上とされています。原因はソラナではなく、攻撃を受けた一部のウォレットに問題があったとの話もありますが、どちらにせよ、セキュリティ面で投資家やユーザーに懸念を抱かせる結果となりました。
技術的な不安が表面化していることは、ソラナにとってマイナス要因となっています。
ブロックチェーン | ポルカドット |
---|---|
TVL | リレーチェーン:0円 パラチェーン:約 410億円 |
ネイティブトークン | DOT |
時価総額(ランキング) | 約 1兆1,436億円(11位)(*1) |
(*1) 2022年9月8日時点
ポルカドット(DOT)は、2020年5月にメインネットが立ち上げられたプロジェクトです。異なるブロックチェーンとの相互運用性を高めることを念頭に、開発が進められています。仕組みとしては、メインとなる「リレーチェーン」と、それに接続される「パラチェーン」で構成されており、この二重構造で取引処理の高速化やセキュリティの強化などを実現しています。また、パラチェーンは独立したブロックチェーンとしてDAppの運用にも利用できるので、相互運用性の高いDAppプラットフォームとなると予想されています。
なお、ポルカドットでは、様々なプロジェクトが稼働しています。例えば、日本発のプロジェクト「Astar Network(ASTR)」がパラチェーンスロットオークションを勝ち抜いて話題になっており、イーサリアムキラーとしての成長が見込まれています。
ポルカドットには数多くのプロジェクトが参画していますが、自由に本番環境で有効化できるわけではありません。プロジェクトを厳選するために、ネイティブトークン「DOT」を使った投票システムを採用しています。これが、パラチェーンスロットオークションです。パラチェーンスロットオークションでは、最も多くの票を集めたプロジェクトから順に、リレーチェーンに接続する権利を得ます。
ブロックチェーン | カルダノ |
---|---|
TVL | 約 120億円 |
ネイティブトークン | ADA |
時価総額(ランキング) | 約 2兆3,238億円(8位)(*1) |
(*1) 2022年9月8日時点
カルダノは、2021年後半にスマートコントラクトが実装されたことで、イーサリアムキラーとして有力視されるようになりました。元イーサリアム開発者であるチャールズ・ホスキンソン氏が考案し、効率的なPoS(プルーフ・オブ・ステーク)ベースのコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
スマートコントラクト実装後、初のDEX(分散型取引所)であるサンデースワップ(SUNDAE)が立ち上げられ、他のDAppも続々とリリースされています。また、ネイティブトークンとしてエイダコイン(ADA)を発行しており、その時価総額は上位10位以内の規模に達しています。
ブロックチェーン | アバランチ |
---|---|
TVL | 約 2,460億円 |
ネイティブトークン | AVAX |
時価総額(ランキング) | 約 8,009億円(16位)(*1) |
(*1) 2022年9月8日時点
アバランチ(AVAX)は、分散型のメリットを損なうことなくスケーラビリティ性能を改善しており、以下の3つのブロックチェーンで構成されています。すなわち、仮想通貨の生成や取引などを担当する「X-Chain」、バリデータ(ブロック承認を担当するノード)を管理してサブネット(アバランチ上で誰でも利用可能なネットワーク)を稼働させる「P-Chain」、スマートコントラクトの実行などを担う「C-Chain」です。通常、これらの機能はひとつのブロックチェーンで実行されます。しかし、アバランチは役割を分散して最適化し、処理効率を高めています。
こうして、アバランチはDeFiやNFTなどの分野で広く利用されています。特に、2021年から2022年にかけてTVLが急増しており、新たなイーサリアムキラーの候補として注目度が増しています。
ブロックチェーン | テゾス |
---|---|
TVL | 約 49億円 |
ネイティブトークン | XTZ |
時価総額(ランキング) | 約 1,959億円(39位)(*1) |
(*1) 2022年9月8日時点
テゾス(XTZ)は、独自の検証機能を実装して、安全性の高いスマートコントラクトを実現しています。また、アップグレードに際して、ブロックチェーンの分裂を防止する仕組みを採用しており、安定的に開発できる環境を構築しています。この機能は、かつてのイーサリアムとイーサリアム・クラシック(ETC)の様な分裂を踏まえたものです。
テゾスでは、DeFiだけでなくNFTやゲーム関連のプロジェクトも稼働しています。当記事執筆時点で、テゾスの時価総額は主要なイーサリアムキラーとしては比較的小さいですが、強力な独自技術を背景に更なる飛躍が期待されています。
ブロックチェーン | コスモス |
---|---|
TVL(Cosmos hub) | 約 547万円 |
ネイティブトークン | ATOM |
時価総額(ランキング) | 約 5,314億円(22位)(*1) |
(*1) 2022年9月8日時点
コスモス(ATOM)は、異なるブロックチェーン間の相互運用性を高めるプロジェクトであり、主に2つの仕組みで稼働しています。すなわち、Hub(ハブ)とZone(ゾーン)です。下の図の通り、ハブはブロックチェーンの中継地点となります。ゾーンは、ハブに接続しています。この仕組みを使って、他のブロックチェーンとの通信が可能になります。このような試みはポルカドットでも行われており、コスモスはポルカドットとも共存可能だと考えられています。
なお、コスモスはネイティブトークン「ATOM」を発行しています。時価総額は仮想通貨市場全体で20位前後ですが、イーサリアムキラーとしての存在感は小さくありません。また、コスモスは日本の大手自動車メーカーのトヨタ傘下企業との実証実験が実施されるなど、企業向けのソリューションとしても利用が検討されています。
ブロックチェーン | テラ(テラクラシック) |
---|---|
TVL | 約 18億円 |
ネイティブトークン | LUNA(LUNC) |
時価総額(ランキング) | 約 4,646億円(26位)(*1) |
(*1) 2022年9月8日時点
テラ(LUNA)は、韓国企業が開発を手がけるブロックチェーンです。グローバルな決済システム構築を目指しており、ステーブルコインのテラUSD(UST)やテラKRW(KRT)を発行したり、その他多様なDeFi関連サービスに利用されたりしています。また、韓国では、テラKRWがEコマースで利用可能となるなど、決済手段としても実際に利用され始めていました。
テラのネイティブトークン「LUNA」は、2021年半ば頃から人気が上昇しました。また、TVLがイーサリアムに次ぐ第2位の200億ドル規模にまで拡大し、イーサリアムキラーとしての地位を確立しつつありました。
しかし、2022年5月、UST価格が99%以上の暴落を記録したことをきっかけに、エコシステム全体が崩壊しました。
USTと、その発行や償還に利用されていたLUNAは、ほぼ無価値となりました。これを受けてテラのコミュニティが救済を検討した結果、最終的に新しいブロックチェーンに移行して、新しい独自仮想通貨を発行することが決定しました。
当記事執筆時点(2022年9月)で、旧LUNAとUSTの仮想通貨は、「TerraClassic」と「TerraClassicUSD」に改名されて存続しています。新しいプロジェクトは「テラ」のブランド名と「LUNA」のティッカーシンボルに加え、エコシステムやその他のリソースを受け継ぎました。そして、本筋のプロジェクトとして開発活動が進められています。
イーサリアムは、2022年9月中に大型アップグレードのマージ(Merge)を完了し、PoSを採用します(イーサリアム2.0)。
イーサリアム2.0が稼働すると、イーサリアムキラーと同等に競争力のあるブロックチェーンになります。しかし、イーサリアムが直ぐにイーサリアムキラーを駆逐してしまうことはなく、むしろ成長を促す可能性もあります。
主要なイーサリアムキラーに関しては、既に時価総額が大きくなっており、飛躍的な成長は難しいかもしれません。それでも、仮想通貨市場全体の需要が高まっていることから、成長の余地はあると考えられます。
イーサリアム2.0が稼働しても、スケーラビリティ問題は直ぐには解決しないことが予想されています。しばらくは、レイヤー2の助けを借りながら、スケーラビリティ問題の緩和を図る必要があります。
本格的な解決が図られるのは、シャーディングが有効化されてからだと予想されています。シャーディングが採用されるのは、2023年の見込みです。
シャーディングとは、トランザクションの検証を複数のバリデータグループで並行して処理する技術です。メインとなるブロックチェーンの他に、シャードチェーン(シャーディングを実行するブロックチェーン)を構築することで、トランザクションを並列処理することができます。シャーディングを採用すると、TPS(1秒間あたりのトランザクション数)が大幅に上昇します。
主要なイーサリアムキラーはEVM(イーサリアム仮想マシン)を実装しており、イーサリアムとの互換性を有しています。従って、DAppなどのプロジェクトも、マルチチェーンやクロスチェーンの考え方が当たり前になってきました。マルチチェーンとは、複数のブロックチェーンに対応することです。また、クロスチェーンとは、ブロックチェーン間の送金が可能になることです。
EVMは、イーサリアム(ETH)ブロックチェーンとの互換性を高める技術です。EVMを実装すれば、イーサリアムを基礎とする異なる規格の仮想通貨取引や、DAppの移植などがより簡単になります。
当記事執筆時点(2022年9月)において、イーサリアムとイーサリアムキラーの関係は、お互いが共存することでエコシステムの拡大に貢献するようになっています。例えば、ソラナのMove To Earnゲームとして流行したSTEPNは、イーサリアムとBNBチェーンにも対応しており、エコシステムを拡大することに成功しています。
仮想通貨市場全体が規模を拡大している間は、このような共存関係が維持されるかもしれません。
これまでイーサリアムキラーは、DAppプラットフォームとして勢いを増してきました。同時に、テラのように大きな壁にぶつかるプロジェクトも出てきています。さらに、新しいイーサリアムキラーが登場するなど、仮想通貨市場では目まぐるしい変化が起こっています。
イーサリアム2.0が本格的に稼働することで、イーサリアムキラーの需要が低下するとの意見もあります。一体、どのような展開を見せるのでしょうか。まずは、2022年9月に完了見込みのマージの結果に注目です。
作成日
:2022.03.03
最終更新
:2024.05.30
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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