作成日
:2023.06.02
2023.06.05 20:00
2023年6月のポンド相場は、経済・雇用状況とターミナルレートに注目です。
リスクオフが進まなければポンド円上昇!
6月のポンド円相場は、リスクオフが進まなければ、緩和政策を継続する円と他通貨との金利差による円売りが進み、ポンド円が上昇すると予想しています。
日銀はマイナス金利をはじめ、YCC(イールドカーブ・コントロール)といった緩和政策を主要中銀で唯一継続する方針です。その結果、4月28日に開催された日銀金融政策決定会合以降、日本の10年債利回りは低下、金利差が拡大し、対ユーロ・対ドル・対ポンドで円売りが進んでいます。
6月に予定されている日銀金融政策決定会合においても現状を維持するスタンスが続くと予想されています。したがって英国との金利差は今後さらに拡大し、ポンド買い・円売りが進むのではないかと考えられます。
米国の債務上限問題による影響と、銀行の規制強化による引き締め効果、2点のリスクオフ要因によって円買いが進む可能性があるため注意が必要です。特に6月前半は、米国の債務上限問題に注目しなければいけません。
上手く債務上限を引き上げられれば問題はないのですが、もし引き上げが遅れると米国債がデフォルトになる可能性が高まります。また政府資金の枯渇によって、一部の政府機関が閉鎖する可能性もあり、米国経済に大きく影響を及ぼすでしょう。
さらに、イエレン財務長官が銀行幹部らに「一連の銀行破綻を受け、一段の銀行合併が必要になる可能性」を警告したとの報道がありました。つまりFRB(連邦準備制度理事会)が米国の中小規模銀行に対して、今後規制を強化していく可能性があります。規制を強化した結果、米銀行が連鎖して破綻すれば、リスクオフが進むと考えられます。
リスクオフが進む可能性は低いと見ていますが、もし進んだ場合は大きな円買いに繋がる可能性もあるので注意しておきましょう。
リスクオフの可能性は低いですが、注意はしておきましょう。
5月末時点におけるポンド円日足チャートです。5月のポンド円は、上昇トレンドを描いています。
画像引用:Tradingview
画像引用:Tradingview
ドルとポンドが買われて、ポンドドルは下落、またはレンジ相場になるとみています。
6月のポンドドル相場は、米ドルの為替動向に影響されると予想しています。特に債務上限問題や銀行の規制強化のようなリスクオフ要因と、年内利上げを織り込み過ぎたドル相場の巻き戻しがどこまで進むのかに注目です。
債務上限問題が議会で承認されない場合、政府機関が閉鎖したり、米国債の格付けを引き下げられたりし、米国経済や金融市場が混乱する可能性があります。またイエレン財務長官が、銀行の連鎖破綻の可能性について言及したことにより、FRB(連邦準備制度理事会)は中小の銀行に対しての規制を一層強化しています。
規制強化により企業や銀行に対しての貸出基準が厳格化されてしまうと、引き締め効果が生まれ、株価が下落するリスクにもつながるでしょう。リスクオフが進む可能性は低いと考えられるものの、米国内の問題によってリスクオフが進む場合は、ドル売りが進み、ポンドドルは上昇すると考えられます。
もしリスクオフが進まなければ、米ドルは底堅く推移するでしょう。マーケットでは、5月FOMC(米連邦公開市場委員会)を最後に利上げを停止し、年内に利下げをすると予想されており、すでにドル売りが進んでいます。
しかしFRBは年内の利下げを否定しています。また物価指標の結果や、FOMCメンバーからの発言からもマーケットでの利下げ期待が後退しており、7月までに追加利上げをする可能性も出てきています。利下げ期待が後退するにつれてドル買いが進み、ポンドドルは下落、またはドル買いとポンド買いが拮抗してレンジ相場になると予想しています。
FRBの利下げ期待後退で、どこまでドル買いが進むのかがポイント!
5月末時点におけるポンドドルの日足チャートです。5月のポンドドルは、上昇トレンドを描いています。
画像引用:Tradingview
画像引用:Tradingview
6月のポンド相場は追加利上げによるポンド買い要因と、景気後退によるポンド売り要因で、方向感に乏しい展開を予想しています。
英国では人手不足による人件費の高騰によって、サービス業と運送業の物価上昇が問題となっています。また、農作物の宝庫であったウクライナがロシアからの侵攻を受けたことによって、原材料、食料品の価格ともに上昇しています。物価上昇を受けて、BOEは利上げを進めてきましたが、いまだに2桁台のインフレ率が続いているのです。
一方で、欧米では物価高のピークが過ぎ、インフレ率が低下する兆しが見え始めています。したがって、さらに追加利上げ期待が進めば、英国の利上げ幅が欧米と比べて大きくなる可能性があり、ポンド買いがさらに進むと考えています。
利上げの最終水準であるターミナルレートに関して、米国は5.22%であり、現在の政策金利が5.00〜5.25%であることから利上げ終了と予想されています。また欧州は3.71%、現在の政策金利が3.25%により、あと2回の利上げ、英国は5.33%、現在の政策金利が3.25%により、あと3〜4回の利上げが予想されています。
英国の物価高が高止まりするようであれば、ターミナルレートも上昇し、追加利上げ期待がさらに進むことでポンド買いが強まるでしょう。
追加利上げが期待されているものの、BOEは追加利上げによる引き締め効果と物価高による景気後退を懸念しています。大きく景気が後退するようであれば、BOEは物価高を解決しないまま利上げを終了させるのではないかと考えられます。BOEはインフレよりも景気後退を懸念したために、FRBやECBと比べて利上げスピードが遅れました。
このように利上げを遅らせたBOEの判断に対して、政策の失敗ではないかとの声も上がっています。景気後退への懸念によるリスクが顕になった場合は、ポンド売りが進む要因になるため注意が必要です。
ポンド買い要因とポンド売り要因が拮抗しているため、方向感なく推移すると予想します。
作成日
:2023.06.02
最終更新
:2023.06.05
英ポンドを中心にトレードを行う大学生トレーダーで、2021年の合計利益は4,000万円にのぼる。公式Twitterでもテクニカル分析等の情報発信を行い、フォロワー数は5,000人以上。ファンダメンタル分析とテクニカル分析を組み合わせた手法を用い、Myforexでは月初にポンド通貨ペアの戦略を連載している。
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