作成日
:2023.05.11
2024.01.09 11:08
BRC-20はビットコイン(BTC)のトークン規格で、これを使うとビットコイン上で独自仮想通貨(暗号資産)を発行できます。BRC-20トークンの中でも特にPEPEが有名で、価格が暴騰して注目が集まっています。
なお、既に多数のBRC-20トークンが登場していますが、そのほとんどは使い道のないミームコインです。
この記事では、BRC-20の価格推移、将来性や問題点などを解説します。
BRC-20はビットコイン(BTC)のトークン規格です。トークン規格とはブロックチェーン毎に定められたルールで、各ブロックチェーンは独自のトークン規格を持っています。
例えば、イーサリアム(ETH)はERC-20などのトークン規格を採用しており、NFTの機能を持たせるなど便利な使い方もできます。
現時点で、BRC-20は主にミームコインで利用されています。
ミームコインはインターネットミーム(主にSNSで流行したネタなど)を元にしており、ジョークや遊びとして作られた仮想通貨全般を指します。
BRC-20は、ビットコインの大型アップグレード「タップルート」の実装後、2023年3月から利用可能になりました。
これまで、ビットコインの用途は送金などに限られていましたが、BRC-20を活用して独自仮想通貨(暗号資産)の発行が可能になりました。これを受けて、当記事執筆時点(2023年5月11日)で14,000以上のトークンが発行されています。
BRC-20は「Bitcoin Request for Comment」とも呼ばれます。ブロックチェーンアナリストのDomo氏が実験的に発行し、それがBRC-20として活用され始めました。
Domo氏やその他専門家は、BRC-20が実験的な取り組みであると警告しており、リスクが高いことを示唆しています。
BRC-20には発展可能性がある一方、未完成な部分もあります。BRC-20が抱える課題に関しては、記事の後半で詳しく解説します。
BRC-20トークンを取引するには、BRC-20に対応するウォレットが必要です。メタマスクなどはBRC-20規格に対応していませんので、別途以下のようなウォレットを作る必要があります。
BRC-20トークンは続々と公開されており、PEPEの価格暴騰を受けて注目が高まっています。その時価総額は既に7億ドルに迫る勢いです。
PEPEは「カエルのペペ」をロゴに起用して爆発的な人気となり、価格は公開後1か月足らずで最高数千倍になりました。なお、カエルのぺぺは海外のインターネットミームとして有名なキャラクターです。
画像引用:brc-20.io
PEPEのような例がある一方、大半のBRC-20トークンには価格がつかず、苦戦している様子も分かります。
BRC-20トークンを集計しているサイト「brc-20.io」によると、2023年5月11日時点でトークンの総数は14,000を超えるのに対し、価格がついたのは100足らずとなっています。
BRC-20トークン全体の時価総額は7億ドル近くありますが、少数のトークンの成功に支えられていることが分かります。
BRC-20トークンの人気を受けて、2023年4月からビットコインの取引手数料が上昇しています。Blockchain.comによると、2023年5月8日にトランザクションの取引手数料は30ドルを上回りました。
画像引用:Blockchain.com
その後、しばらくの間、取引手数料の高騰は落ち着きを見せていました。しかし、2023年11月頃から再び取引手数料の上昇が見られ、12月17日には37ドルを記録しています。
画像引用:Blockchain.com
ビットコインの取引手数料は、メモリープール(mempool)の待機トランザクション数、すなわちブロックチェーンの混雑具合によって変動します。ブロックチェーンが混雑すると上昇し、反対に空いていると下落します。
取引手数料の高騰により、ビットコインの1ブロック分の取引手数料がマイニング報酬を上回る場面も出てきています。高いトランザクション手数料によって、ビットコインをマイニングする企業などは大きな恩恵を受けている状況です。
PoW(プルーフ・オブ・ワーク)型のブロックチェーンの維持に貢献して、報酬として仮想通貨を得ることを指します。PoS(プルーフ・オブ・ステーク)型のブロックチェーンの場合はステーキングと呼ばれます。
BRC-20トークンの数は爆発的に増加しています。
画像引用:$pepe.BRC-20
PEPEはBRC-20で最も成功したミームコインの一つです。この成功にあやかって、PEPEをモチーフにしたミームコインが大量に発行されています。
ORDIはOrdinalsの仮想通貨(暗号資産)です。Ordinalsとは、BRC-20やビットコインNFTを実現するプロトコルです。
ビットコインNFTは、ビットコインブロックチェーン上で発行されるNFTです。正式には「デジタルアーティファクト」と呼ばれます。主流となっているイーサリアムのNFTと同じく、マーケットプレイスで取引可能です。
画像引用:VMPX
VMPXはJack Levin氏によって発行されたミームコインです。詳しいコンセプトなどは明らかにされていません。Levin氏はXENと呼ばれる仮想通貨なども手がけています。
SATSは、ビットコインの最小単位である「satoshi」にちなんだミームコインです。satoshiは1BTCの1億分の1の単位となっており、ビットコインの考案者であるサトシナカモトを由来としています。
サトシナカモトとは、2008年に世界で初めてビットコイン(BTC)に関する論文をインターネット上に公開した匿名の人物、または団体です。2009年にはビットコインのプロトコルと、取引やマイニングができるシステムを完成させ、ビットコインの生みの親とされています。
2023年12月12日、大手海外取引所のBinance(バイナンス)は、SATSの新規上場を発表しており、現在注目を集めています。
RATSは、動物をモチーフにしたミームトークンです。Binance(バイナンス)やBybit(バイビット)などにも上場しており、注目されているBRC-20トークンの一つです。
これ以外にも、MEMEやNALSなどの仮想通貨が活発に取引されています。その中のいくつかは、Gate.ioなどの大手取引所に上場しています。
BRC-20の仮想通貨は、専用ウォレットや上場している取引所で取引できます。代表的なウォレットとしてOrdinals Walletがあります。
BRC-20トークンは、いくつもの銘柄が急騰し盛り上がっています。今後はどのような動きが予想されているでしょうか。
BRC-20トークンはミームコインとして利用されています。このため、投機目的以外の使い道がありません。
イーサリアムなどを基礎とするミームコインは、次々と機能を追加できます。しかし、BRC-20トークンはシンプルな作りとなっており、多様な機能を追加できません。
このため、熱狂が冷めると多くの投資家がBRC-20トークンを手放す可能性があり、無価値になる可能性があります。
2023年12月6日、ビットコインコア開発者のLuke Dashjr氏はX(旧Twitter)にて、OrdinalsやBRC-20トークンは、ビットコインコアの脆弱性を悪用していると指摘しました。
PSA: "Inscriptions" are exploiting a vulnerability in #Bitcoin Core to spam the blockchain. Bitcoin Core has, since 2013, allowed users to set a limit on the size of extra data in transactions they relay or mine (`-datacarriersize`). By obfuscating their data as program code,...
— Luke Dashjr (@LukeDashjr) December 6, 2023
具体的には、Ordianls NFTやBRC-20トークンを発行する際のインスクリプション(Inscription)という行為が、脆弱性を利用していると主張しています。ビットコインは2013年以降、トランザクションの追加データのサイズを制限できるようにしたものの、インスクリプションはデータをプログラムコードとして難読化することで、この制限を回避していると説明しています。
Luke Dashjr氏はX(旧Twitter)にて、2024年に控えるバージョン27のリリース前に、この脆弱性を修正したいと言及しています。
現状では、同氏によって修正提案がなされている状況です。仮に、この提案が受け入れられれば、Ordianls NFTやBRC-20トークンの発行ができなくなる可能性があります。
BRC-20トークンの誕生は、仮想通貨(暗号資産)市場に大きな衝撃を与えました。この流れを加速するかのように、新しいトークン規格「BRC-21」の開発案が浮上しています。
BRC-21は、異なるブロックチェーンの仮想通貨をビットコインブロックチェーン上で利用可能にするトークン規格です。すなわち、イーサリアム(ETH)やコスモス(ATOM)、ポルカドット(DOT)などの仮想通貨をBRC-20の形式で発行可能とします。
BRC-21の開発案は、2023年5月7日にInterlay Labsによって提案されたばかりです。開発はこれからですが、実現すれば、BRC-20およびビットコインのエコシステムが拡大すると考えられます。
仮想通貨界隈のインフルエンサーMark Jeffrey氏は、「BRC-20があれば、ビットコインブロックチェーンが取引所を代替できます」と論じています。
対応するウォレットがあればBRC-20トークンを取引できるので、BinanceやCoinbaseなどの取引所を介する必要はありません。完全な代替となるわけではありませんが、BRC-20トークンの取引システムがDEX(分散型取引所)のように利用される可能性があります。
BRC-20は発展途上の技術です。今後の発展が期待されていますが、現時点では次のような課題を抱えています。
ビットコインのブロックチェーンは、スマートコントラクトに対応していません。
スマートコントラクトは契約を自動履行するプログラムです。自動販売機でたとえると、「利用者が必要なお金を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」という二つの契約条件が満たされた場合に、自動的に「その飲料を利用者に提供する」という契約が実行されます。
BRC-20は、ブロックチェーンに簡単な命令文を書き込み、発行や転送などを実行します。スマートコントラクトが使えるようになれば、より複雑な条件でトランザクションの実行や自動化が可能です。
スマートコントラクトは、DApps(分散型アプリケーション)開発に必須の技術です。イーサリアムを始めとするDAppsプラットフォームは、スマートコントラクトやそれに準ずる技術を実装しています。
分散型アプリケーション(DApps)とは、管理者不在で自律的に行動を行う非中央集権のアプリケーションのことをいいます。「Decentralized Applications」の略称で、Dappsと呼ばれることもあります。ブロックチェーンを利用したサービスなどを提供するアプリケーションの総称であり、中央管理ではなく分散管理であるためサーバーダウンによるサービス停止の心配も少ないといった特徴を持ちます。
一方、ビットコインはスマートコントラクトを実装していないので、DApps開発がほぼ不可能です。例えば、DEXやレンディング、クロスチェーンブリッジなどの機能も開発できません。
クロスチェーンブリッジとは、複数のブロックチェーンをつないで規格の異なる仮想通貨を相互に利用可能にする技術です。この技術が普及すれば、ブロックチェーンを跨いで仮想通貨をやり取りできます。ブロックチェーンが乱立している現在、クロスチェーンブリッジは重要な存在です。
BRC-20の登場でビットコインの利用が活発になっています。このトレンドにより、ビットコインはさらにスケーラビリティ問題に悩まされるようになりました。
スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンの処理能力に起因する障害です。ブロックチェーンにトランザクションが集中すると、取引の遅延や手数料の高騰などが発生します。
そもそも、ビットコインの処理能力はそれほど高くありません。高性能なブロックチェーンが1秒間に数千件から数万件のトランザクションを処理する一方、ビットコインは平均約6件に留まります。
BRC-20の利用を拡大するには、スケーラビリティ問題の解消が急務です。ライトニングネットワークが普及すれば、スケーラビリティ問題を解消できる可能性もあります。
ライトニングネットワークとは、取引速度や手数料問題を解決するために開発された技術です。この技術を使うと、ごく少額の決済も可能です。
BRC-20トークンは、イーサリアムのERC-20などと異なる特徴を持っています。
BRC-20トークンは、Ordinalsを利用して発行されます。Ordinalsは、テキストや画像などのデータをSatoshiに付与するプロトコルです。Satoshiはビットコインの最小単位であり、1億分の1BTCを表します。Satoshiにシリアル番号や画像などを付与すれば、デジタルアートなどのビットコインNFTが実現可能です。
一方、BRC-20トークンは、これらのSatoshiをファンジブルトークンの形で発行したものです。名称や発行上限などを簡単なテキストで設定できます。
ファンジブルトークンは、同一の仮想通貨ならばどれでも全く同じで等価のトークンを指します。BTCやETHなどの従来の仮想通貨が該当します。それぞれが独自の価値を持つNFTと対になる考え方です。
BRC-20トークンは、インスクリプション(Inscription)で操作します。
インスクリプションとは、Satoshiに画像や動画、テキストなどの情報を付与することです。BRC-20トークンは、インスクリプションで簡単な命令文をブロックチェーンに書き込み、目的のトランザクションを実行します。
具体的には、配備(Deploy)で発行枚数の上限を設定し、発行(Mint)で指定枚数を発行し、そして転送(Transfer)で指定枚数を転送します。
このため、誰にでも使いやすいトークンというわけではなく、一定の知識が必要になります。
BRC-20は新しい技術のため、その用途は限定的です。今のところミームコインに利用されていますが、ユースケースの模索や開発が進めば、これまでになかった価値を生み出す可能性があります。
その期待を表すかのように、仮想通貨(暗号資産)市場ではBRC-20トークンが脚光を浴びています。この波に乗って、ブロックチェーンプラットフォームとしての開発が加速することに期待です。
作成日
:2023.05.11
最終更新
:2024.01.09
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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