作成日
:2023.03.10
2024.04.21 17:20
仮想通貨(暗号資産)のメモリープール(Mempool)は、ブロックチェーンが効率的にトランザクションを処理するためのシステムです。順番待ちトランザクションの一時的な保管場所であり、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などで実装されています。
また、ブロックチェーンの状態を表す指標となっており、メモリープール内のトランザクション数が多いと手数料の上昇や取引の遅延につながりやすくなります。
当記事では、メモリプール全般について解説していきます。
メモリープール(Memory Pool)は一般的にmempoolと表記されます。ブロックチェーンの状態を測る指標として用いられることもあり、mempoolが増加すればブロックチェーンが混雑しており、減少すれば空いていることを意味します。
ブロックチェーンには処理能力の限界があるので、トランザクションが順番待ちのような状態で保留されることがあります。その際にメモリープールがデータの一時保存先として利用されます。
メモリープールに溜まったトランザクションは、マイナーやバリデータが検証してから、ブロックチェーンに書き込まれます。ブロックチェーンに書き込まれたトランザクションは、メモリープールから消去されます。
ブロックチェーンに記録されるトランザクションは、署名がなされているか、送金者に十分な資金があるか、ルールに則っているかなどが検証されます。例えば、二重送金となっている場合などは、トランザクションは認められません。マイナーやバリデータと呼ばれるノードがトランザクションを検証します。
メモリープールが必要な理由は、ユーザーの利便性確保です。メモリープールがない場合、ブロックチェーンは処理能力を超えるトランザクションを受信できなくなりますので、ユーザーは送金可能な瞬間を見計らって送信しなければなりません。
メモリープールがあるおかげで、ユーザーは柔軟にブロックチェーンを利用できます。また、メモリープールはノード間で共有するので、手の空いたノードから処理するという効率的なシステムになっています。
ノードとはブロックチェーンのネットワークを構成するコンピュータを指し、パソコンやスマホなどを含みます。ブロックチェーンを稼働させるために、ブロックの検証だけでなく取引情報の記録や情報伝達などの機能を提供します。
メモリープール内のトランザクション数は日々変動しており、多い時には10万件を超える場合もあります。トランザクション数が急激に増加すると、マイナーの処理が追いつかないため送金遅延や手数料高騰につながります。
下のグラフは、ビットコインのメモリープールの状況です。ビットコインの処理能力は1秒間におよそ7件ですので、メモリープールに70,000件ある場合は全て処理するのに3時間近くかかります。
画像引用:blockchain.info
また、メモリープール内のトランザクション数は、仮想通貨取引所の需要が高まるタイミングで増加する傾向にあります。具体的には、ブレイクアウトして上昇期待が高まった時や、急落して利益確定や損切りを急ぐ売り需要が集中した時などです。
2017年や2020年にビットコイン価格が直近の高値を上抜けて高騰した際には、トランザクション数が急増しました。
仮想通貨価格がある一定の価格帯を抜けて一方向に進行することをブレイクアウトと呼びます。上向きに抜ければ強気、下向きに抜ければ弱気のシグナルとなり、取引が活発になります。
なお、処理能力の高いブロックチェーンでは、メモリープール内のトランザクション数が増加しないこともあります。
取引手数料が非常に安価、または無料のブロックチェーンの場合、悪意あるユーザーが大量のトランザクションを発生させ、メモリープール内のトランザクション数が増加することもあります。
過去にはソラナ(SOL)がスパム攻撃を受けてトランザクション数が激増し、数時間にわたって動作を停止した例もあります。
メモリープール内のトランザクション数が増加すると、以下の現象が起きやすくなります。
メモリープール内に保留されたトランザクションが増えると、取引手数料が徐々に上昇していきます。
一般的に、送金手数料が高いトランザクションが優先的に処理されるので、手数料が安いトランザクションはメモリプール内に留まり続けます。このため、ユーザーは確実に送金させようとして送金手数料が高くなります。
ビットコインやイーサリアムでは、送金者が送金手数料を設定できます。高く設定すればするほど、迅速に処理されます。
ブロックチェーンは処理能力に上限があるので、それを超えてしまうと、メモリープール内のトランザクションが増加します。
メモリープール内のトランザクションが増加しているということは、処理待ちのトランザクションで混雑している状態なので、取引が遅延しがちになります。
ビットコインのブロックチェーンを例にすると、メモリープールは次のようなプロセスで活用されます。
送金者がビットコインの送金をリクエストすると、トランザクションが発生します。
新しいトランザクションは検証のためにメモリープールに移されます。
マイナーがメモリープール内のトランザクションを検証します。このプロセスをマイニングと呼びます。
マイニングとは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)型のブロックチェーンの維持に貢献して、報酬として仮想通貨を得ることを指します。PoS(プルーフ・オブ・ステーク)型のブロックチェーンの場合はステーキングと呼ばれます。
検証済みのトランザクションはブロックチェーンに記録され、メモリープールから消去されます。
メモリープールにはその特徴を利用して稼ぐ方法があり、これをMEV(Maximal Extractable Value、最大抽出可能価値)と呼びます。一般の投資家や利用者が不利益を被る可能性があることから、システムの改善が求められています。
イーサリアムでは誰でもメモリープールを閲覧できます。そこで、ボットがメモリープール内のトランザクションを分析し、先に有利なポジションを取って利益を得ています。
例えば、分散型取引所(DEX)での取引において、ある仮想通貨を大量に購入しようとしているトランザクションがメモリープール内にあるとします。購入数量が多いので、実際に購入すると仮想通貨価格は上昇すると予想できます。そこで、ボットは割高な取引手数料を設定してその仮想通貨を先に購入します。
その後、大量の買い注文が約定して仮想通貨価格が上昇したのち、あらかじめ買った仮想通貨を売却して利益を得ます。メモリープールを使う手法は、他にもいくつかあります。
MEVでイーサリアムの一般ユーザーが被った損失は、7億ドルに迫っています。しかし、イーサリアムがPoS(プルーフ・オブ・ステーク)のコンセサスアルゴリズムに移行してから、MEVの問題は緩和されています。
コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックを生成するためのルールです。PoWやPoSに加え、DPoS(デリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステーク)やPoI(プルーフ・オブ・インポータンス)などが存在します。それぞれ長所や短所があり、開発思想などの違いによって採用するコンセンサスアルゴリズムが変わってきます。
2023年2月24日から過去30日間で約237万ドルの被害がありますが、その増加率は鈍化しています。その他、対MEVのソリューションが開発されていることなども要因となっているようです。
一般的に、ユーザーがメモリープールに注意を払うことは多くないでしょう。しかし、トランザクションの混雑状況を把握するツールとして使えます。特にイーサリアムは取引手数料の安い時の利用が推奨されており、メモリープール内のトランザクション数は取引手数料の推移を知る良い材料となります。
作成日
:2023.03.10
最終更新
:2024.04.21
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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