作成日
:2022.02.22
2022.04.20 12:18
主要な仮想通貨(暗号資産)のブロックチェーンはスケーラビリティ問題を抱えている場合があり、それぞれが異なるアプローチで解決策を模索しています。スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンの処理能力が限られていることに起因する障害で、具体的には取引手数料の高騰や取引の遅延などを引き起こします。
世界最大の仮想通貨であるビットコイン(BTC)も例外ではなく、スケーラビリティ問題を抱えており、大型アップグレードやライトニングネットワークによる改善を模索しています。しかし、SNS上ではライトニングネットワークの成長が頭打ちの段階にきているとの議論が持ち上がっています。
ビットコインにおいて、ライトニングネットワークはスケーラビリティ問題を改善する核となる技術ですが、現状はどうなっているでしょうか。
ビットコインは、ブロックチェーンの性能を向上させるために大型アップグレードを継続的に行ってきました。例えば、2017年にSegwit(セグウィット)が実装されましたが、これによりブロック内に格納されるデータ量を圧縮した結果、ひとつのブロックにより多くのデータを格納することが可能となり、スケーラビリティ問題の緩和が可能となりました。
ビットコインのブロック容量は1MBに制限されています。ブロック容量を拡張すればスケーラビリティ問題を改善できるとの議論もありますが、ビットコインがより中央集権型の仮想通貨になってしまうのではないかとの懸念から、コミュニティではそれに反対する声が挙がっています。この思想の違いから、ビットコインはビットコインキャッシュ(BCH)など複数の派生通貨を生み出すに至っています。
直近では2021年に、Taproot(タップルート)などいくつかの技術が導入されました。その中核はシュノア署名といわれるもので、これまで利用されていた技術と比較してより効率的な取引が可能になりました。具体的には、取引所のウォレットなどは複数の署名でユーザーの出金を承認する仕組みになっていますが、シュノア署名はその署名をひとつに集約して書き込むため、ブロックチェーンに記録する情報を削減できます。
このように、ビットコインは複数の大型アップグレードを通じて、スケーラビリティ問題を改善しようと取り組んでいます。しかし、ビットコインの大型アップグレードはコミュニティの合意が必要なため実行が難しい上に進行が遅く、スケーラビリティ問題を十分なレベルで改善できていないのが現状です。
このような中、ビットコインは別の打開策として、ライトニングネットワークを推し進めています。ライトニングネットワークはメインとなるブロックチェーンの外で情報を処理し、安価な手数料で迅速な取引を実現できます。
これを受けて、米国で人気のモバイルペイメントアプリ「CashApp」を開発するブロック社(旧スクエア)や、大手クレジットカード会社のビザがライトニングネットワークを統合するなど、この技術を利用してビットコインの決済利用を拡大しています。
加えて、Twitterがビットコインの投げ銭機能を実装したことや、中米に位置するエルサルバドルがビットコインを国の法定通貨に採用したことなども相まって、ライトニングネットワークにおける取引量は飛躍的に増加しています。ある調査会社は、ライトニングネットワークのユーザー数は2030年までに7億人にまで急増すると予想しています。
しかし、対照的にライトニングネットワークにおけるビットコイン・キャパシティ(ブロックチェーン上に預け入れられたBTC数でライトニングネットワークの利用限度を示す)の成長鈍化が不安材料となっています。2021年、ビットコイン・キャパシティは、わずか8カ月間で1,000BTCから3,000BTCまで指数関数的に増加していましたが、2022年に入ってからはその伸びが緩やかになっています。当記事執筆時点で、ビットコイン・キャパシティは3,500BTC程度にまで拡大しているものの、将来的には不足する可能性があるかもしれません。
下はビットコイン・キャパシティの推移グラフですが、グラフ右端部分でBTC数量(オレンジ線)の伸びが鈍化している様子が分かります。青線はドルベースの推移です。
画像引用:BITCOIN VISUALS
一方、ビットコイン価格が上昇し続けて、ライトニングネットワークにおけるドルベースでの決済可能額が拡大する限り、ビットコイン・キャパシティの成長が鈍化していることは問題にならないとの見方もあります。また、メインとなるビットコインブロックチェーンの性能が向上すれば、スケーラビリティ問題も緩和されてライトニングネットワークへの依存度も低下すると考えられるので、ビットコイン・キャパシティだけが重要な指標ではないといえるでしょう。
基軸通貨的な役割を持つビットコインは、仮想通貨市場での需要が高く、多くの信奉者が同仮想通貨の可能性を信じています。その中でもBlock社の元CEOであるジャック・ドーシー氏は「ビットコインは世界をひとつにする」との考えを示し、過去には同社の新規事業の一環としてビットコインブロックチェーン上にDeFi(分散型金融)関連サービスを構築できるようにすると宣言しました。
どこまで本気かはわかりませんが、ビットコインブロックチェーンがDApp(分散型アプリケーション)プラットフォームとしての機能を身につければ、イーサリアム(ETH)などと同様にレイヤー2であるライトニングネットワークの重要度が増す可能性があるでしょう。
DeFi関連サービスはブロックチェーンを用いて金融分野のサービスを提供することを可能にします。具体的には分散型取引所(DEX)、仮想通貨レンディング(仮想通貨を利用した貸付)、仮想通貨ローン(仮想通貨を担保としたローン)などが代表的です。
こういった需要を見越してか、BIP(Bitcoin Improvement Proposals)で、ライトニングネットワークの機能に関わる開発計画が持ち上がっています。ビットコインブロックチェーンは、BIPと呼ばれる改善提案に基づいて開発が行われますが、当記事執筆時点で「SIGHASH_ANYPREVOUT」と「Eltoo」の実装が検討されています。これらの技術はライトニングネットワークを維持するための負担を削減し、より効率的で利便性の高いシステムを構築することを可能にすると予想されています。
当記事執筆時点で、ライトニングネットワークはビットコイン・キャパシティや性能面でいくつかの課題を抱えているかもしれませんが、このような流れを背景に利用環境を好転させていく可能性もあるかもしれません。
TwitterやBlock社、エルサルバドルなどがいち早くライトニングネットワークに対応したことで注目を集めていますが、足元では取引所やウォレットなどが同技術の導入を進めています。これに続き、既存の企業からもライトニングネットワークに対応したサービスを立ち上げる者が現れ始めています。
ビットコイン・キャパシティの成長が鈍化しているとの不安材料はあるものの、将来的な開発で更なる性能の向上が望めることからも、今後もライトニングネットワークの利用は拡大していくと考えられるでしょう。
作成日
:2022.02.22
最終更新
:2022.04.20
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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