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ビットコインが大型アップグレード「タップルート」を実装

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update 2022.04.20 12:08
ビットコインが大型アップグレード「タップルート」を実装

update 2022.04.20 12:08

2021年11月15日、ビットコイン(BTC)が「タップルート」と呼ばれる大型アップグレードを完了しました。[1]タップルートとは、送金力やプライバシー向上に役立つ技術をまとめてビットコインに実装した今回のアップグレードの名称です。

以前から、仮想通貨(暗号資産)コミュニティではタップルートが注目されていましたが、仮想通貨メディアやSNS上の有識者が話題として取り上げている程度で、その内容は一般的にあまり知られていないでしょう。そこで、タップルートを初めて耳にしたという方にもわかるように、その内容を解説します。

タップルートで導入される新技術

今まで、ビットコイン(BTC)は技術的なアップグレードを実施してきましたが、タップルート実装は2021年6月に合意され、準備期間を経て11月に有効化されました。

仮想通貨関連プロジェクトの多くは、ブロックチェーン開発を目的としており、DApp(分散型アプリケーション)などを通じて様々な機能を実現しています。特に仮想通貨市場最大のブロックチェーンプラットフォームであるイーサリアム(ETH)では、既に多くの利用例を確立して、ブロックチェーンと仮想通貨の積極的な利用を可能にしています。

point DAppとは

DAppはブロックチェーンを基礎としたアプリケーションです。通常のアプリケーションと異なり、中央管理者が存在せず、自律的に動作します。その用途は多岐にわたり、ゲームや金融、教育、エンターテインメント、アートなどの分野で利用されています。

一方、ビットコインは主に投資目的で利用されています。もちろん、ビットコインは仮想通貨ですから送金や決済などに利用できますが、送金遅延や手数料の高騰といったスケーラビリティ問題が度々指摘されてきました。また、利用の選択肢はイーサリアムや他の仮想通貨ほど多くなく、ブロックチェーン開発も盛んではありません。

この状況を打開するためにビットコインはタップルートを実装しており、より機能的で利便性の高い存在になると考えられています。

新採用されたシュノア署名

ブロックチェーン上では、仮想通貨取引に電子署名と呼ばれる技術を用いています。電子署名とは、その名の通り電子的な署名技術ですが、仮想通貨取引においては、送金情報を暗号化・検証する手段として利用されています。

仮想通貨の送金情報は、第三者が偽装できないように秘密鍵(仮想通貨の送金者のみが知る情報)で暗号化されます。その後、公開鍵(暗号化された送金情報を解読するために必要な情報)で元に戻し、あらかじめ公開されている送金情報と復元された情報が一致するれば、仮想通貨取引が成立します。

仮想通貨取引における署名のプロセス

この一連の流れが仮想通貨取引における署名ですが、仮想通貨はそれぞれ異なる署名システムを採用しています。ビットコインは、これまでECDSA(楕円曲線電子署名アルゴリズム)と呼ばれるシステムを使用していましたが、タップルートでシュノア署名を導入しました。

ECDSAではマルチシグ取引(複数の署名で完結する取引)に複数の署名を必要とします。一方、シュノア署名はマルチシグ取引でも、署名をひとつに集約してシングルシグ取引(ひとつの署名で完結する取引)と同様の形に簡略化可能です。これがどのような効果を発揮するかは次で説明しますが、ECDSAからシュノア署名に移行することで、ビットコインはより合理的な取引が実現可能です。

ECDSAとシュノア署名の比較画像

タップルートで何が変わる?

では、具体的にタップルートでビットコイン(BTC)はどのように変わるでしょうか。その変化は主に2つあります。

スケーラビリティ問題を改善

ビットコインを始めとするブロックチェーンの処理能力には限界があり、取引が集中すると手数料の高騰や送金遅延を引き起こすことがあります。これをスケーラビリティ問題と呼びますが、ビットコインはタップルート実装でこの問題を改善できると考えられています。

上で紹介したように、シュノア署名はひとつの署名でマルチシグ取引を完了できるメリットがあります。これはブロックに記録する情報量を削減して、ブロックチェーンの負荷を軽くするのに有効です。

point マルチシグウォレットの利用拡大

マルチシグウォレットは、その名の通り、マルチシグ取引に対応したウォレットです。安全性が高いことから利用が拡大しており、ビットコインを含むブロックチェーンは対応を迫られています。この背景からも、ビットコインがシュノア署名を採用したことは必然的な流れだといえます。

マルチシグ取引は、署名人数と比例して記録する情報量が多くなる欠点を抱えていますが、シュノア署名はそれを大幅に圧縮できます。その有効性は署名人数が何人になろうとも変わらず、情報量を大幅に圧縮可能です。

しばしばビットコインは送金詰まりや手数料の高騰に見舞われてきましたが、シュノア署名がスケーラビリティ問題を改善し、ユーザーにとってこれまでよりも実用的な存在になると予想されています。

プライバシー性能を強化

タップルートでは、シュノア署名と共にMAST(マークル化抽象構文木)といわれる技術も導入されました。ビットコインにおいて、MASTはスマートコントラクト(ブロックチェーンを用いた契約の自動履行機能)のスクリプト(専用のプログラミング言語で書かれた構文)を、分岐条件ごとに細分化して記述可能です。

これまで、ビットコインのスクリプトは、送金時に全文を書き込む方式になっており、その内容が全て公開されていました。しかし、MASTを利用すれば、ハッシュルートと呼ばれる元となるスクリプトを起点に、履行されたスマートコントラクトだけを公開できるようになります。

例えば、条件Aが成立したらAさんにいくら送金、条件Bの場合はBさんにいくら送金という場合分けを設定する場合、従来は履行されなかった条件Bも公開されてきましたが、今後は履行された条件Aのみ公開することができます。

スマートコントラクトの分岐とMASTの公開範囲

従って、これまでのスマートコントラクトの記述方式と比較して情報公開の範囲が狭くなり、ビットコインのプライバシー性能を強化する結果につながります。一般ユーザーにとってこの変化はあまり関係ないように思えますが、長期的には重要なアップグレードになるかもしれません。

例えば、スマートコントラクトのプライバシー性能が向上して、ビットコインが企業や金融機関の決済手段、DAppプラットフォームとして使いやすくなる可能性があります。ビットコインブロックチェーン上での開発が活発になれば、一般ユーザーが利用できる機能が増えることになるので、楽しみな変化になるかもしれません。

タップルートのレートへの影響は?

2021年11月15日、タップルートの有効化が確認された際、ビットコイン(BTC)価格は6万6,000ドル付近で横ばいな動きを見せていました。その後、5万ドル台に急落する展開となりました。

ビットコインのチャート

不具合などは報告されていないため、この急落がタップルートに起因するものとは考えづらく、仮想通貨市場ではこれからタップルートの評価が固まってくると思われます。

ちなみに、前回大型アップグレードが施された2017年には、ビットコイン価格が継続的な上昇を記録して、翌年に当時史上最高値の2万ドルに迫る勢いを示しました。タップルートは4年ぶりの大型アップグレードとなりましたが、前回同様に今後のビットコイン価格の大幅上昇となるでしょうか。

タップルートの実装によりスケーラビリティ問題の改善やプライバシー性能の強化が見込まれており、ビットコイン(BTC)はより実用的なシステムに生まれ変わろうとしています。これがビットコインの転換期になる可能性もあり、同仮想通貨価格の更なる発展を促す可能性もあります。

出典元:

  1. Taproot watch

    https://taproot.watch/

Date

作成日

2021.11.19

Update

最終更新

2022.04.20

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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