作成日
:2023.10.04
2023.10.04 16:44
2023年10月のポンド相場は、英国の景気後退とGDPに注目!
緩和継続とポンドの上値の重さによりポンド円はレンジ予想
10月のポンド円は日銀による大規模な緩和継続による円安と、BOEの利上げ終了観測によるポンド売りが拮抗して、レンジ相場になると予想しています。またポンドの方が円よりもやや上値が重いと考えられるので、ポンド円は下落する可能性もあります。
日銀は9月の金融政策決定会合にて、マイナス金利とYCC(イールドカーブ・コントロール)を含む大規模な緩和政策を継続することを決めました。一時的に金融正常化が意識されて円買いが進む場面もありましたが、年内に緩和政策を終了する可能性は大きく後退しています。
貿易収支の悪化継続も円安要因の一つです。エネルギー輸入国である日本にとって、原油価格の上昇は物価の上昇に繋がります。したがって輸入価格の支払いのために円を売って米ドルを買わなければなりません。原油価格の高騰はすぐに解決する問題でもなく、このような実需の動きは引き続き行われ、当分円安は継続するでしょう。
また執筆時点(2023年10月3日)までで、日銀は主要国の中で唯一利上げを行っていません。したがって、主要国と日本の金利差は拡大し、円を売って金利の高い通貨を買い金利差益を得るキャリートレードが頻繁に行われています。
しかし、すでにキャリートレードのための円売りは進んでおり、これ以上キャリートレードによる円売りが進むとは考えにくいでしょう。
円安が進んだことによる円買い介入には警戒が必要です。イエレン米財務長官は一定の円買い介入を容認するような発言をしています。
また鈴木財務相は「主要国の通貨当局とは意思疎通を図っている」、「為替について高い緊張感をもって市場動向を見ている」など口先介入のレベル感を高めています。円買いの介入が実施された場合、ポンド円は急落する可能性があるので、介入には注意しておきましょう。
口先介入や円買いの介入実施による急落には要注意!
9月末時点における、ポンド円の日足チャートです。9月のポンド円は、上昇トレンドが終了し、レンジ相場へ移行したように見えます。
画像引用:Tradingview
画像引用:Tradingview
ポンドの上値は重く、ポンドドルは下落!
米ドルは底堅く推移し、ポンドの上値は重いことからポンドドルは下落すると予想しています。
9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で金利の据え置きが発表されたものの、同時に発表されたドットチャートでは年内あと1回の追加利上げが予想されていました。また、2024年と2025年の金利予想は、6月のFOMCで発表されたドットチャートと比べて0.5%の上方修正がされており、ややタカ派の内容となっています。
ECBやBOEは利上げを終了するのではないかと考えられている中、欧州や英国よりも物価が低下してきている米国で追加利上げが予想されたことで米ドルに人気が集まっています。
また、欧州や英国と比べて米国の経済は強く、緩やかに引き締めが行われるのではないかと予想されていることも米ドル人気の要因の一つです。
今後は、インフレがどこまで低下しているのかがポイントになります。インフレの低下が一気に進んだ場合、年内追加利上げの期待が後退し、米ドルが売られやすくなるかもしれません。また経済が強ければ追加利上げの追い風となりますが、景気が一気に悪化するようであれば、来年の早期利下げ期待に繋がる可能性があります。
景気に関しては、来年行われる大統領選挙において、バイデン大統領が景気対策を行うと予想されます。しかし景気対策のための予算案は議会を通過していない状況です。早期に予算案が議会を通過しなければ、景気への影響が出てくると考えられます。
また、米国では労働組合によるストライキが発生しています。労働者を支持基盤に持つバイデン大統領は、来年の大統領選挙を控えて、労働組合のストライキに対して肯定的な立場をとっています。しかしストライキが長引けば米国経済に大きな影響が出てくるでしょう。
予算案の議会通過、政府機関の閉鎖、労働組合によるストライキが、どこまで米景気に影響するのかに注目です。ただし、上記を加味しても英国より強い経済ではあるので、たとえ米ドル安となってもポンドより弱くなることはないと考えられます。したがって、もしドル安となれば、ポンドドルはレンジになるでしょう。
政府機関の閉鎖や労働組合によるストライキの影響に注目!
9月末時点における、ポンドドルの日足チャートです。ポンドドルは、下落トレンドに転換したように見えます。
画像引用:Tradingview
画像引用:Tradingview
10月のポンドは買い要因がほとんどなくなり、弱含んでいくと考えています。
2022年10月に発表された英国のCPI(消費者物価指数)は前年比11.1%を記録し、これをピークとして、2023年8月には前年比6.7%まで低下しています。また物価変動の大きい食料品やエネルギーを除いたコア指数も同様に低下してきています。
このように物価が低下している中で、BOEは9月に金利の据え置きを発表しました。9名いるメンバーのうち5名が据え置きを選択し、4名が0.25%の利上げを支持し、ギリギリ据え置きを選択したという結果となります。
内容を見ると、ベイリー総裁をはじめ、3名いる副総裁のうち2名と英中銀のエコノミスト担当の理事が据え置きを支持しています。したがって英中銀の考えは据え置きに傾いており、物価高よりも利上げによる景気後退を優先課題として考えていると予想できます。
したがって物価が再び急上昇しない限り、景気後退を優先して利上げを終了させるでしょう。
ちなみに、米国の8月のコア指数は4.3%まで低下していますが、それでも年内あと1回の利上げが予想されています。米国経済が底堅いことが理由の1つでもありますが、FRB(連邦準備制度理事会)はインフレの抑制を最優先課題として考えているようです。
今まで、主要国の中で最も物価高である英国は追加の利上げ幅も大きいと考えられていたことが、ポンドの大きな買い要因でした。利上げ終了の観測が高まれば買い要因がなくなり、ポンドの上値は重くなると予想されます。
また、英国の経済成長率は前期比でギリギリプラスを保っていますが、いつマイナス成長に陥ってもおかしくない状況です。今後リセッションの可能性が高まれば、来年に利下げを行う可能性が高まりポンドが売られるのではないかと考えています。
ポンドの買い要因はなく、大きな売り要因がいつ出てもおかしくない状況だと考えています。
作成日
:2023.10.04
最終更新
:2023.10.04
英ポンドを中心にトレードを行う大学生トレーダーで、2021年の合計利益は4,000万円にのぼる。公式Twitterでもテクニカル分析等の情報発信を行い、フォロワー数は5,000人以上。ファンダメンタル分析とテクニカル分析を組み合わせた手法を用い、Myforexでは月初にポンド通貨ペアの戦略を連載している。
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