作成日
:2023.07.04
2024.05.14 09:19
stETHは、Lido Financeの独自トークンです。Lido FinanceのステーキングプールにETH(イーサリアム)を預け入れると、交換で手に入ります。また、取引所やDeFi(分散型金融)での運用が可能な一方、運用にともなうリスクもあります。
当記事では、stETHの概要、運用方法や注意点などを解説します。
画像引用:Lido
stETHはLido Financeの独自トークンであり、流動性ステーキングに参加すると発行されます。流動性ステーキングでは、その名の通り流動性を確保しながらステーキングができます。
流動性とは特定の資産が取引可能かどうかを示します。流動性があれば資産を売却したり買ったりできますし、流動性がなければ、売買できません。
イーサリアムのステーキングでは、仮想通貨をブロックチェーンに預け入れる必要があります。つまり、売却や送金をするには、ステーキングを解除しなければなりません。
しかし、Lido Financeの流動性ステーキングでは、ETHをステーキングして得た独自トークンを使って、売却や運用ができます。
Lido FinanceでETHをステーキングすると、stETHをもらえます。
stETHはETHの引換券ですので、stETHを返却すればステーキングしたETHが返ってきます。また、保有するだけで報酬が付与され、売却やDeFi関連サービスでの運用も可能です。
stETHの数量は、Lido Finance経由でステーキングされたETHの数量と同じになるように調整されています。
すなわち、stETHはETHの預入数量と同数が発行され、そして、ETHの引出し数量と同数だけバーンされます。さらに、ステーキング報酬としてETHが発生した際にも、同数のstETHが発行されます。
この機能により、stETHはETHと等価になる設計です。
バーンとは、仮想通貨を永久に使えなくする行為を指し、仮想通貨を特定のウォレットに送ることで実行できます。そして、そのウォレットの秘密鍵は開発者を含めて誰も知りません。すなわち、送金したら最後、その中の仮想通貨は二度と使えなくなるため、あたかも紙幣が焼却(バーン)されたのと同様になります。
しかし、実際には1stETH=1ETHとならない場合があります。
stETHを運用すると、ステーキング報酬に加えてさらに報酬を稼げます。運用方法の例は以下の通りです。
セービングは銀行預金のようなサービスで、CEX(中央集権型取引所)が提供しています。期限が決められたフィックスド・セービングと、いつでも引き出し可能なフレキシブル・セービングがあります。
再ステーキングとは、イーサリアムでのステーキングに加えて、別のプロジェクトにステーキングすることです。再ステーキングすれば、ステーキング報酬がダブルで獲得できます。
ステーキングとはPoS(プルーフ・オブ・ステーク)の仮想通貨で採用される仕組みで、ブロックチェーンの維持に貢献する対価として報酬を得ることを指します。また、仮想通貨を貸し出して報酬を得られるサービスをステーキングと呼ぶこともあります。
レンディングは、仮想通貨を貸し借りするサービスです。貸し手側は、期間に応じて金利収入を得ます。反対に借り手側は、手数料として金利を支払います。stETH保有者は、貸し出す以外にも、それを担保に別の仮想通貨を借りることもできます。
流動性マイニングとは、DEX(分散型取引所)などに2種類の仮想通貨を貸し出して報酬を得ることです。「イールドファーミング」とほぼ同義の言葉として使われることがあります。流動性の提供と引き換えに独自仮想通貨を報酬として獲得できます。
ヴォールト(Vault)は日本語で「金庫」を意味する言葉で、運用益を最適化するサービスです。複数のDeFiサービスから運用先を決定し、特定の戦略に基づいて、stETHを運用できます。
stETHを運用できるサービスには、次のようなものがあります。
画像引用:MEXC
MEXCは大手仮想通貨(暗号資産)取引所で、stETHの仮想通貨セービングを提供しています。当記事執筆時点でMEXC「フレキシブルEarn」の年利は2%、最低入金額は0.001stETHです。
画像引用:Curve Finance
Curve Financeは、ステーブルコインを数多く取り扱う大手DEXです。stETH保有者は、Curve Financeに任意の通貨ペアを預け入れ、流動性マイニングによる報酬を獲得できます。当記事執筆時点で、ETHとstETHの通貨ペアの利回りは年約2%台になっています。
画像引用:1inch
1inchは人気のDEXアグリゲーターで、stETHの流動性マイニングが可能です。当記事執筆時点で、LDOとstETHの通貨ペアで年利3%台、DAIとstETHの通貨ペアでは年利2%台が付与されています。
画像引用:idle
Idle Financeは、利回りを自動的に最適化するVaultサービスを提供しています。リスク回避重視の「Senior」とリターン重視の「Junior」があり、それぞれ利回りが異なります。当記事執筆時点で、stETHの場合、Seniorで年利3%台、Juniorで年利5%台が付与されています。
画像引用:Eigen Layer
EigenLayerではstETHなどの再ステーキングができます。2023年6月15日にメインネットをローンチし、再ステーキングできるstETHの量が限定されています。当記事執筆時点(2023年6月28日)で上限に達しており利用できませんが、今後、開発が進むにつれて枠が拡大される見通しです。
stETHの運用はリスクを伴います。
ETHでステーキングする場合、リスクはイーサリアム・ブロックチェーンに関するものに限定されます。しかし、stETHで運用する場合、イーサリアム・ブロックチェーンに加え、Lido Financeや運用先のDeFiプロトコルのリスクも同時に背負います。
過去にはハッキングで資金が流出した例がいくつもあります。各プロジェクトはサービス開始にあたって監査を受けますが、リスクはゼロになりません。
ETHとstETHは等価になるように設計されていますが、価格が乖離する可能性があります。例えば、2022年6月に大量のstETHが売却され、その価格が6%ほど急落しました。
画像引用:CoinMarketCap
2022年前半、仮想通貨価格は大幅に下落し、ビットコイン(BTC)価格は半値になりました。また、テラ(LUNA)のエコシステム崩壊や大手仮想通貨レンディングCelcius Networkのサービス停止、大手仮想通貨ファンド3ACの破産など、負の影響が連鎖しました。
このような相場全体が動揺した時期を除いても、stETHはETHよりも安い水準で推移しています。ETHに比べてリスクが高いことや用途が限られていることが原因だと予想できます。
stETHを貸し出して運用することも可能です。あるいは、stETHを担保にして他の仮想通貨を借り入れることもできます。レバレッジをかけて借り入れることも可能で、通常よりも高い利回りを実現できます。
しかし、レンディングは担保価値の低下による清算リスクが伴います。
数多くのDeFiプロジェクトがある一方、stETHが使えないケースが少なくありません。
wstETHは、stETHのラップドトークンです。wstETHはDeFiとの親和性が高く、より多くのプロトコルで利用できます。
ラップドトークンとは、特定の仮想通貨の価値に連動するトークンを指します。例えば、ビットコインはビットコインブロックチェーン上で流通し、イーサリアムブロックチェーン上で使用できません。そこで、ビットコインと値動きが同じになるトークンを作って、イーサリアムブロックチェーン上で流通させます。これがラップドビットコインです。
wstETHとstETHは、いつでも交換可能です。広い選択肢から運用先を決定したい場合、wstETHの活用が選択肢になります。
stETHはDEX(分散型取引所)で購入できますし、Lido FinanceでETHをステーキングして取得することもできます。ここではLido Financeを使う場合を紹介します。
ウォレットにイーサリアムを保有した状態で、下のバナーをクリックしてLido Financeのホームページに移動します。
1をクリックしてウォレットを接続します。その後、2をクリックしてステーキングのページに進み、ステーキングしたい数量を3に入力して4の「Submit」をクリックします。
画像引用:Lido Finance
stETHを活用して二重に報酬を得られますが、相応のリスクが付きまといます。stETHの運用方法はいろいろありますが、まずは安全第一を心がけましょう。
作成日
:2023.07.04
最終更新
:2024.05.14
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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