作成日
:2023.06.23
2024.01.17 22:34
2023年6月15日、EigenLayer(アイゲンレイヤー)がメインネットの立ち上げを発表しました。
EigenLayerは再ステーキング(restaking)サービスを提供しており、ユーザーはイーサリアム(ETH)やリキッドステーキングトークンをステーキングして追加報酬を得られます。
当記事では、EigenLayerの仕組みを説明した上で、再ステーキングのやり方や注意点などを解説します。
画像引用:EigenLayer
EigenLayerは、イーサリアム(ETH)上で構築された再ステーキングプロトコルです。
再ステーキングとは、イーサリアム本体でステーキングしつつ、別のプロジェクトでも同時にステーキングすることです。ステーキングで2種類の報酬を受け取れるため、効率的に運用できます。
EigenLayerの目的や仕組みを理解すると、なぜ同時に2種類の報酬がもらえるのか、そしてどんなリスクがあるのかが見えてきます。そこで、まずイーサリアムを取り巻く環境を確認し、EigenLayerがその問題をどのように解決するのか解説します。
イーサリアムは巨大なコミュニティを抱えており、大勢がステーキングに参加しています。この仕組みにより、取引の安全性が確保されています。
ステーキングとはPoS(プルーフ・オブ・ステーク)の仮想通貨で採用される仕組みで、ブロックチェーンの維持に貢献する対価として報酬を得ることを指します。また、仮想通貨を貸し出して報酬を得られるサービスをステーキングと呼ぶこともあります。
また、イーサリアムにはレイヤー2があります。レイヤー2の各プロジェクトはイーサリアムのセキュリティシステムを使用しているため、セキュリティ開発に要するコストを抑えながら各種活動を展開できます。
多くのブロックチェーンは、異なる役割を持つブロックチェーンが階層別に独立して相互通信する「レイヤー構造」になっています。基礎的な役割を担うブロックチェーン層をレイヤー1と呼び、レイヤー1の情報処理を助ける層をレイヤー2と呼びます。
その一方、イーサリアムのセキュリティを利用できないプロジェクトも数多くあり、それらのプロジェクトは独自にPoS等を開発することになります。
安全性は重要なポイントであり、ハッカーの攻撃が成功するとプロジェクトへの信頼度が大きく低下してしまいます。そこで、各プロジェクトはセキュリティに大きなコストを投入することになり、本来の開発業務に投入する人員や資金が制限されてしまいます。
EigenLayerは、イーサリアムのセキュリティシステムを使えない各プロジェクトがイーサリアムのセキュリティを利用できるようにします。
各プロジェクトはEigenLayer経由でサービスを展開し、同時にイーサリアムのセキュリティシステムも使用します。具体的には、イーサリアム本体でステーキングしている人に、EigenLayer上のサービスでもステーキングしてもらいます。これが再ステーキングです。
この再ステーキングには複数のメリットがあります。
イーサリアムのPoSを使うプロジェクトが増えれば、それだけイーサリアムのエコシステムが拡大します。すなわち、イーサリアムの価値上昇につながります。
EigenLayerを利用する新規プロジェクト開発チームは、セキュリティのコストを抑えることができます。また、イーサリアムは信頼度が高く、独自に開発する場合に比べて安全度を高くしやすい点もメリットです。
一般ユーザーにとっては、イーサリアムにステーキングして報酬を得るのと同時に、別のステーキングに参加することにより二重に報酬を受け取れます。
再ステーキングにもデメリットがあります。
イーサリアムのステーキングに参加するには、ルールに従う必要があります。ルールに違反すると、預け入れたイーサリアム没収のペナルティが課されます。これをスラッシングといいます。
EigenLayerにも独自のスラッシングルールがあります。すなわち、イーサリアム本体では問題ないとされた行動が、EigenLayerでは不適切だと判定されて罰を受ける可能性があります。
再ステーキングは、ステーキングの多重化構造を生み出します。例えば、stETHを再ステーキングしている場合であれば、自動的にイーサリアム、Lido、EigenLayerにまつわるリスクを負っている状態となります。
EigenLayerは、他のDApps(分散型アプリケーション)と同じく、ハッキングの可能性があります。
分散型プリケーション(DApps)とは、管理者不在で自律的に行動を行う非中央集権のアプリケーションのことをいいます。「Decentralized Applications」の略称で、Dappsと呼ばれることもあります。ブロックチェーンを利用したサービスなどを提供するアプリケーションの総称であり、中央管理ではなく分散管理であるためサーバーダウンによるサービス停止の心配も少ないといった特徴を持ちます。
そのリスクを回避するために、複数の機関の監査を受けています。加えて、バグの発見に報奨金を出しています。しかし、ハッキングのリスクはゼロにはなりません。
EigenLayerでDapps等を利用するには、イーサリアムに接続してトランザクションを完結させる必要があります。
イーサリアムはスケーラビリティ問題を抱えており、手数料が高騰しやすい環境にあります。EigenLayerの再ステーキングで利益を出すためには、イーサリアムの手数料を考慮しなければなりません。
スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンの処理能力に起因する障害です。ブロックチェーンにトランザクションが集中すると、取引の遅延や手数料の高騰などが発生します。ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンは、慢性的にスケーラビリティ問題に悩まされています。
当記事執筆時点(2023年6月17日)で、EigenLayerは3種類のリキッドステーキングトークンに対応しています。これらのトークンで再ステーキングができます。
トークン名 | 発行元 |
---|---|
stETH | Lido |
rETH | Rocket Pool |
cbETH | Coinbase |
リキッドステーキングとはその名前のとおり「流動性のあるステーキング」です。通常のステーキングでは、預け入れた仮想通貨がロックされる一方、リキッドステーキングでは、それと等価のLSTを現金化したり、送金したり、運用することができます。
今後に対する期待として、以下のようなものが挙げられます。
当記事執筆時点(2023年6月17日)で、EigenLayerは独自仮想通貨を発行していません。また、エアドロップについても発表はありませんが、仮想通貨コミュニティでは実施が期待されています。
エアドロップとは仮想通貨の無償配布を指します。知名度向上などを目的として新規プロジェクトが実施する例が多く、仮想通貨をもらうには公式ツイッターをフォローすることなど一定の条件がつく場合もあります。
過去の例を踏まえると、EigenLayerの早期ユーザーにエアドロップされる可能性があります。このため、インフルエンサーは再ステーキングの利用をおすすめしています。
EigenLayerは、Mantleとパートナーシップを締結しています。
画像引用:Mantle
Mantleは大手取引所Bybitが支援するDAOです。従来はBitDAOという名称で、イーサリアムのレイヤー2ブロックチェーン「Mantle Network」の開発を主導しています。
MantleはEigenLayerを使って製品を展開しようとしており、レイヤー2の取引手数料を80%削減できると説明しています。
EigenLayerの開発スケジュールは3段階に分かれており、当記事執筆現在(2023年6月17日)は第1段階に位置しています。第1段階では、EigenLayerでの再ステーキングが可能になりました。
第2段階は今年後半に予定されており、バリデータを募集します。そして、第3段階でバリデートシステム(AVS)を広く一般に公開します。
バリデートは、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)のブロックチェーンにおいて、トランザクションの承認などブロックチェーンの維持のために活動することです。この機能を担うノードをバリデータといいます。
EigenLayerに関するよくある疑問とその回答は次の通りです。
再ステーキングに預け入れた仮想通貨は、元のウォレットに出金可能です。ただし、出金に不審な点がないかを確認するために、7日間の待機期間が設けられています。
再ステーキングの報酬は、「再ステーキングポイント」に基づいて付与されます。付与されるポイントは預け入れた仮想通貨の量と時間に比例し、1秒単位で加算されていきます。
当記事執筆時点(2023年6月17日)で、トークンの入金に制限が設けられています。ETHの再ステーキングでは、9,600ETHが上限です。また、トランザクションあたりの入金額は、32ETHに制限されています。
リキッドステーキングトークンの再ステーキングは、それぞれ3,200stETH、3,200rETH、3,200cbETHが上限となっています。なお、stETHはサービス公開後1時間で上限に達し、他の2つのトークンも制限に到達したため現在は再ステーキングできません。
EigenLayerでは、イーサリアムとリキッドステーキングトークンを再ステーキングできます。ただし、イーサリアムをステーキングするには32ETHの保有が必要でハードルが高いです。
ここでは、リキッドステーキングトークンの再ステーキングについて紹介します。
stETH、rETH、cbETHを使って再ステーキングできます。
以下のリンクをクリックし、EigenLayerのアプリにメタマスクなどのウォレットを接続します。接続先のブロックチェーンはイーサリアムです。
rETH、stETH、cbETHの中から、ステーキングしたいトークンを選択します。なお、当記事作成時点(2023年6月17日)で全てのトークンが受け入れ上限に到達しており、預入できません。上限が引き上げられた後に、預け入れできます。
「Deposit」を選択し、預け入れたい額を「Enter Amound」に入力して実行します。ウォレットがトランザクションの確認を求めてくるので、それを承認すると入金が完了します。
再ステーキングの解除方法は以下の通りです。
以下のリンクをクリックし、EigenLayerのアプリにメタマスクなどのウォレットを接続します。接続先のブロックチェーンはイーサリアムです。
アンステークタブ(Unstake)を選択し、「Enter Amount」に出金したい額を入力します。その後、「Withdraw」をクリックすれば完了です。なお、Withdrawをクリックしてから実際に引き出せるまでに、7日間待つ必要があります。
EigenLayerは、2023年3月に5,000万ドルの資金提供を受けて話題となりました。また、イーサリアムの考案者であるヴィタリック・ブテリン氏もEigenLayerにコメントしており、注目が高まっています。
イーサリアムの再ステーキング市場は巨大で伸び代も大きいと見込まれており、EigenLayerの動向には注目です。
作成日
:2023.06.23
最終更新
:2024.01.17
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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