作成日
:2020.10.12
2022.01.12 11:10
オーストラリア・シドニーを拠点に取引関連レポーティングサービスを手掛けるTRAction Fintech(本社:Level 22, 85 Castlereagh Street Sydney NSW 2000 Australia
)【以下、TRActionと称す】の共同CEOを務めるQuinn Perrott氏が、英国が合意なき離脱(ハードブレグジット)をした場合のレポーティング規制動向に関する見解を示した。欧州の投資会社は、欧州市場インフラ規則2.2【以下、EMIR2.2と称す】と第二次金融商品市場指令【以下、MiFIDⅡと称す】及び証券金融取引規則【以下、SFTRと称す】を遵守し、取引情報を認可報告機関【以下、ARMと称す】や取引情報蓄積機関【以下、TRと称す】へ提出しなければならない。TRは欧州証券市場監督局【以下、ESMAと称す】から認可を受ける一方、ARMは各国規制当局【以下、NCAsと称す】から認可を受ける。しかしながら、英国金融行動監視機構【以下、FCAと称す】規制下もしくは英国で設立されたTRやARMに関しては、2021年1月1日以降、同国がハードブレグジットをした場合、EMIR2.2やMiFIDⅡ及びSFTRのレポーティング規制が適用されないことになる。同様に、EUを拠点とするTRやARMに関しても、FCAの規制が適用されないことになる。
DTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)やUnaVistaなど、多くのTR及びARMがハードブレグジットに対応すべく、英国とEUの双方を拠点とする新法人を設立し、登録認可を取得しているという。投資会社にとっても、取引情報を適切な機関へ提出することが求められる状況だ。Perrott氏によると、FCA規制下の投資会社であれば、英国を拠点とするTRやARMへ取引情報を提出する。EU圏内のNCAs規制下であれば、EUを拠点とする機関に、そしてFCAとNCAs双方の規制下にある場合、英国とEUそれぞれの機関にレポーティングする必要があると見ている。FCAは全ての投資会社に対し、あらゆるブレグジットのシナリオに備えるよう促している。Perrott氏は、各投資会社がハードブレグジットとなるケースを想定し、現在の自社における取引レポーティング状況を確認する必要があると述べている。
ブレグジット後のレポーティング要件に関し、MiFIDⅡ規制下において注意すべき点としては、EUを拠点とする投資会社が英国支店を通じて取引した場合、英国及びEU双方のARMへ取引情報を提出求められる可能性があることだ。英国を拠点とする投資会社がEU拠点の支店を通じて取引した場合も、同様の要件が求められるという。一方、EMIR2.2規制下においては、支店の所在地よりも投資会社を管轄する規制市場によって分類される。例えば、英国を拠点とする投資会社でEUに所在する支店であれば、英国拠点のTRへ取引情報を報告する仕組みになると見ている。
規制環境が目まぐるしく変化する中、多くの海外FXブローカーが複雑な規制に対して効率的に対応すべく、TRACtionのようなレグテックソリューションを提供する企業の活用を進めると予想される。
release date 2020.10.12
英国とEU間において、ブレグジット後の貿易協定を巡る交渉は依然としてまとまっていない。ボリス・ジョンソン首相は、10月15日に開催予定の欧州理事会までに合意に至らなければ、ハードブレグジットに向かう可能性を示唆した一方、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官は、複数の重要分野において大きな隔たりが解消されていないという。他方で、混沌とするブレグジット情勢下、官民はブレグジット後の経済を見据えた取り組みを進めている。直近では、ESMAが2021年の監督業務計画を公表し、EMIR2.2に基づく第三国における中央清算機関(CCP)の直接監督など、ブレグジットを意識した様々な施策を盛り込んでいる。民間レベルでは、INTLがGIROXXを買収し継続的なサービス提供を目指している他、TRActionがUnaVistaと提携強化し、効率的な規制対応レポーティングサービスの提供を試みている。投資会社やTRなど、多くの市場参加者がブレグジット後を見据えて、徹底した準備を求められているが、移行期間の終了が数か月後に迫る中、引き続き英国とEUによる貿易協定交渉の行方を見守りたい。
作成日
:2020.10.12
最終更新
:2022.01.12
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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