作成日
:2020.05.07
2021.08.31 15:32
世界有数のFXプライムブローカーであるJPMorgan Chase & Co.(本社:270 Park Avenue New York, NY 10017)【以下、JPモルガンチェースと称す】が実施した顧客調査によると、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、FX市場のボラティリティが高まる2020年3月以降、FXトレーダーがアルゴリズム取引を拡大させている模様だ。
新型コロナウイルスのパンデミックを受け、他のアセットクラスと同様にFX市場のボラティリティも大きく高まっている。足元の市場が混乱する中、JPモルガンチェースの顧客は競争上の優位性を確保すべく、増分学習機能を備えた機械学習に基づく適応アルゴリズムを活用している模様だ。FX分野の市場参加者は人工知能や機械学習を用いた先進的な分析ツールを導入し、今年3月には、最小投資金額が1,000万ドル超のトレーダーの内60%がアルゴリズム取引を行っていたとのことである。1年前には同取引を手掛けていた割合が50%未満であったが、アルゴリズムを用いた取引によって投資収益を獲得する可能性が高まっており、ヘッジファンドに加え年金や投資信託なども活用を推し進めているという。JPモルガンチェースによると、目標収益や市場インパクト、適応アルゴリズムの有用性などが高まっている一方で、取引処理時間は減少していることから、リミットオーダーよりもアルゴリズム取引の方が広く利用されるようになっているとのことだ。
一方で、米国の有力リサーチ会社であるGreenwich Associatesの最新調査によると、他のアセットクラスにおいてはアルゴリズム取引が大幅に増加しているものの、FX分野では同取引を採用した割合は数年前から変化がなく、普及も遅い模様だ。具体的には、株式市場の参加者の内、50%ほどがアルゴリズム取引を用いているが、バイサイド(買い手)FX投資家は37%しか利用していないという。更に、FX市場において同取引を採用した取引量は全体の22%に留まっているとのことである。同社はFX市場でアルゴリズム取引の活用が進まない要因として、取引ディスクロージャー要件の欠如を挙げている。FXトレーダーは株式市場で同取引を行う投資家が利用しているような、プライシングや執行関連のユニバーサルデータにアクセスできないという。また、FX取引はプラスアルファの投資収益の獲得を目指すのではなく、主にヘッジとして用いられていることもアルゴリズム取引が拡大しない要因のようだ。加えて、運用パフォーマンスの測定にベンチマークを活用するFXトレーダーは50%未満に留まるほか、他のアセットクラスにおいて取引コスト分析(Transaction Cost Analysis)【以下、TCAと称す】ツールの活用が大きく拡大する中、FX市場においてはその活用が限定的であるという。
新型コロナ禍において市場のボラティリティが高まる中、FXトレーダーが投資効率の改善に繋がるアルゴリズム取引やTCAツールなどの活用を拡大させることに期待したい。
release date 2020.05.07
JPモルガンチェースのCEOであるジェームズ・ダイモン(James Dimon)氏が、株主への手紙の中で用いたこの一説は大きな話題を呼んだ。同行はシリコンバレーのテクノロジー企業の台頭を脅威と捉え、デジタルトランスフォーメーションを強力に推進させている状況だ。JPモルガンチェースはシリコンバレーに1,000人規模のフィンテック拠点を設け、同分野への投資も積極化させている。業界の垣根がなくなりつつある足元の市場環境下において、JPモルガンチェースはFX取引エンジンをシンガポールでリリースしたほか、JPモルガンチェースは決済ネットワークを日本でリリースしている。更に、JPモルガンチェースはMASと国際送金システムを構築するなど、先進的なテクノロジーを活用したソリューション開発を加速させている。金融業界はサバイバル時代に突入しており、生き残れるのは変化に柔軟に対応した企業のみである。デジタル社会に適応すべく、伝統と歴史ある同行が推進するデジタルトランスフォーメーションへの取り組みに注目したい。
作成日
:2020.05.07
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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