作成日
:2019.12.13
2021.08.31 15:29
米国大手投資銀行であるJPMorgan Chase & Co.(本社:270 Park Avenue New York, NY 10017
)【以下、JPモルガンチェースと称す】が、世界初となるブロックチェーン技術を活用した、スケーラブルなP2P(ピア・ツー・ピア)の決済ネットワークであるIIN(Interbank Information Network)を、2020年1月に日本でリリースする見通しであることが明らかになった。2019年2月、JPモルガンチェースがJPMコインの開発を発表した際に、2017年から行っていたIINのパイロット版の制作に関しては公表されていなかった。しかしながら、市場の一部では、JPモルガンチェースがクロスボーダー決済の迅速化とオペレーティング効率を高めるための独自ステーブルコインを発行することで、仮想通貨革命を強力に推し進めるリーディングバンクになるとの思惑が広がっていた。実際に、IINには既に365行が参画し、日本の金融機関80行も加わる見通しである。同社のエグゼクティブディレクターであるDaizaburo Sanai氏は、JPモルガンチェースがイーサリアム(Ethereum)向け分散型ネットワークQuorumを構築したことに加え、各金融機関がIINに参画することで、決済認証の際に必要な情報をリアルタイムに確認でき、グローバル決済に関連した問題を軽減すると共に決済プロセスの迅速化に繋げることができるとコメントしている。
IINはキャッシュマネジメントシステムの一要素でしかないものの、機密情報の取得及び確認を即座に行えるようになるため、現行のグローバルAML(アンチマネーロンダリング)対策を改善することが期待されている。特に日本は、世界各国当局と金融活動作業部会(Financial Action Task Force, FATF)より、AML対策に複数の深刻な欠陥が見受けられるとの指摘を受けているほか、2018年にはマネーロンダリング事案が40%増加しており、厳格な対応策を講じることが急務となっている状況だ。
ただし、日本特有の問題として、中小企業が頻繁な海外取引を行っているため、各国をまたぐ犯罪資金の突き止めは困難であるという。たとえば、ナイジェリア人容疑者が米国にて詐欺で得た資金を日本の銀行口座に移した際、何の問題もなく340,000ドル(3,700万円)を引き出すことができた模様である。このような市場環境下において、IINを活用することで、ネットワークに参画する金融機関は、必要に応じて送信元情報へ即座にアクセスできるようになり、犯罪と疑わしい取引のチェック作業を迅速に行うことが可能とのことだ。IINへの参画を検討している三井住友信託銀行は、決済プロセスの遅延を軽減させる同ネットワークを利用することで、マネーロンダリングと疑わしき事案に対し、当局と即座に連携することができるようになるとコメントしている。
当初IINを構築する目的は、金融機関が行う各国の制裁選別(Sanctions Screening)作業をサポートすることであったが、その後、開発者は決済関連情報を共有する際に大きな利用価値があると認識した模様だ。仮に、日本の金融機関80行がIINに参画すると、単国のネットワークとしては最大規模となる見通しだ。既に加入を決めている残りの金融機関に関しては、世界中に等分散しており、なかには2019年9月に同ネットワークに加入した、ユーロ建ての有力決済金融機関であるドイツ銀行などの大手行も含まれている。
なお、チェースマンハッタン銀行がJPモルガンを買収した際、グローバルに張り巡らされたキャッシュマネジメントネットワークを取得した。同ネットワークには、米国企業の収益ランキングを表すフォーチュン500に選出された企業の80%が加わっており、世界中で1日に6兆ドル以上の資金取引が行われているという。JPモルガンチェースは常に最先端のテクノロジーを活用すると共に、革新性を求めてきていることから、今回ブロックチェーン技術を基にした決済ネットワークをリリースすることは、市場の想定の範囲内であろう。2020年1月から日本でもスタートするIINが、順調に導入実績を積み重ね、より透明性と迅速性のある決済スキームが構築されることを期待したい。
release date 2019.12.13
創業から200年以上の歴史を誇り、米国最古の金融機関の一つであるJPモルガンチェースは、預かり資産、収益規模、時価総額のいずれにおいても世界屈指の総合金融グループだ。傘下の企業にて、投資銀行業務を始め、コンシューマーや中小企業向けの金融サービス、コマーシャルバンキング、金融トランザクションプロセッシング、アセットマネジメントなどの包括的な金融サービスをグローバルに展開している。更に、同社は新たな成長市場になりつつある仮想通貨分野のサービス強化を模索している状況だ。足元で、JPモルガンチェースはMASと国際送金システムを構築し、ブロックチェーンを基にしたソリューションの開発を加速させているほか、JPモルガンチェースはJPMコインのトライアル実施を検討するなど、先進的なテクノロジーを活用した新たな市場開拓を模索している。IINやQuorumなどは既存の金融ネットワークを変革する可能性を秘めており、同社の次なる一手に市場の注目が集まっている。
作成日
:2019.12.13
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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