作成日
:2019.06.26
2021.08.31 15:26
米国大手投資銀行であるJPMorgan Chase & Co.(本社:270 Park Avenue New York, NY 10017)【以下、JPモルガンチェースと称す】が、独自に開発を進める仮想通貨のJPMコイン(JPM Coin)に関するトライアル実施を検討していることが明らかになった。
今月25日、JPモルガンチェースは米国、欧州、日本の顧客が仮想通貨システムを導入し、企業間の送金や債券取引を高速化することに興味があると伝えている。もともと今年2月に、JPモルガンチェースは企業間決済向けの独自仮想通貨の開発を発表しており、それを同社のエコシステム内で送金手段として活用する構想を描いていたという。今回、JPMコインのトライアル実施にあたっては、規制当局からの承認が直近の課題となっているようだ。
JPモルガンチェースのブロックチェーン部門で責任者を務めるUmar Farooq氏は、同社の新しい試みに関して以下のようにコメントした。
今後5年から20年で多くの証券がデジタル化またはトークン化されるでしょう。テクノロジーは進歩していますが、政府の許可やライセンスを得るには時間が必要です。
Umar Farooq, Head of Digital Treasury Services and Blockchain at JPMorgan Chase - Bloombergより引用
またJPMコイン以外にも、JPモルガンチェースはイーサリアム向けの分散型ネットワーク、Quorumを構築していることに加え、Interbank Information Network(IIN)という200行以上の銀行が参加する銀行間取引ネットワークを展開している。技術的なことに関してはMicrosoft(マイクロソフト)と提携し、更なる開発を進める方針のようだが、今後もJPモルガンチェースの取り組みには注目していきたい。
release date 2019.06.26
本来、ビットコイン(Bitcoin)をはじめとする仮想通貨は、中央銀行が発行する法定通貨に代わる存在として社会に普及することが期待されていたが、現在では政府による管理体制の下、金融業界への統合が進みつつある。特に親和性が高い国際送金や国際取引などの分野でのユースケースが増加しており、世界各国で同様のソリューションの開発競争が激化しているようだ。ウォール街の大手金融機関がこの開発競争をリードしていることは間違いないが、日本でもメガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループがMUFGコインという名称のステーブルコインのローンチに目前まで迫っている状況だという。MUFGコインは個人向け決済システムとしての側面が強く、特定のネットワーク内での利用が想定されているJPMコインとは本質的に異なるものの、金融業界に対する影響力は同等またはそれ以上だと言えるだろう。それぞれ規制当局からの承認など課題を抱えているが、両社の取り組みには今後も期待していきたい。
作成日
:2019.06.26
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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