作成日
:2019.06.26
2021.08.31 15:26
英国の金融監督当局である英国金融行動監視機構(Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】は、Facebook, Inc.(本社:1 Hacker Way, Menlo Park, California 94025
)【以下、Facebookと称す】が手がける仮想通貨プロジェクトのリブラ(Libra)に関する詳細情報を求めていることを明らかにした。今月25日、FCAの責任者であるAndrew Bailey氏は英国議会の財務特別委員会(Treasury Select Committee)と議論し、Facebook(フェイスブック)が同社の決済事業やリブラの計画に関して説明する必要があると伝えた。Facebookの仮想通貨プロジェクトは、英国政府の政策や仮想通貨市場にも影響を及ぼす可能性があることから、当局はリブラのローンチ前にその全容を理解すべきだと判断したようだ。更にBailey氏によると、FCA、イングランド銀行(Bank of England)、財務省が本件の対応に動き出しており、Facebookに当局の要請に協力するよう促しているという。
Facebookがリブラのホワイトペーパーを発行して以来、世界各国の政府は同社が金融業界に大きな変化をもたらす可能性があると見通しているようだ。特に米国政府からの反応は否定的なものが多く、同議会の上院と下院が来月にも公聴会を開催することを先日表明した。欧州諸国の中には、友好的な対応を行っている国もあるが、イングランド銀行総裁のMark Canrney氏は、同国の市場がFacebookの仮想通貨プロジェクトを無条件で受け入れる訳ではないと発言している。
また、Bailey氏はFacebookへの対応に関して以下のようにコメントした。
数十億規模のユーザーに受け入れられたSNSとは違い、リブラのような新しい試みには、事前に規制や基準が議論されるべきでしょう。安全であることは絶対条件であり、そうでなければリブラを受け入れることはありません。
Andrew Bailey, Chief Executive of FCA - The Wall Street Journalより引用
先日、フランスでは中央銀行総裁のFrancois Villeroy de Galhau氏が、G7に仮想通貨タスクフォースを発足することを発表し、マネーロンダリング対策(AML)や投資家保護の観点から仮想通貨規制に取り組むことを明確にした。Facebookによるリブラの発表が世界各国の仮想通貨への対応を加速させているが、英国はどのように動くのか、今後の展開にも注目していきたい。
release date 2019.06.26
今年4月、英国では仮想通貨の取り扱いに関するガイドラインがFCAによって発行されており、仮想通貨市場の規制強化と共に仮想通貨の普及に対する準備が進められている状況だ。このガイドラインで、仮想通貨は中央機関に依存しない価値を保持するエクスチェンジトークン、証券としての特性を持つセキュリティトークン、特定の製品やサービスとの交換が可能なユーリティトークンの3つに分類され、FCAは企業やユーザーに向けて適切な利用や運用を促している。Facebookのリブラは、複数の法定通貨資産に紐づくステーブルコインだということが明らかになっているが、このガイドラインの基準ではエクスチェンジトークンに分類される可能性がある。一方でリブラが高い換金性を保持することから、単に電子マネーと見なし規制することもできるが、英国政府やFCAがどのような判断を下すかはFacebookの説明にかかっていると言えよう。世界各国からの関心が高まっているだけに、今後もFacebookやリブラの動向を追っていきたい。
作成日
:2019.06.26
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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