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Facebook、独自仮想通貨のリブラに関する詳細を公開

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update 2021.08.31 15:26
Facebook、独自仮想通貨のリブラに関する詳細を公開

update 2021.08.31 15:26

ホワイトペーパーの発行を受けて各方面で議論が活発になる

2018年12月に仮想通貨プロジェクトの立ち上げを発表したFacebook, Inc.(本社:1 Hacker Way, Menlo Park, California 94025[1])【以下、Facebookと称す】は、独自に開発を進めるステーブルコインのリブラ(Libra)に関するホワイトペーパーを先日ついに公開した。[2]

Facebook(フェイスブック)はリブラのネットワークを利用することで商品やサービスの購入、送金などのトランザクションをリアルタイムかつ低コストで完結させるソリューションを実現し、銀行や金融機関、法定通貨の上に成り立つ現代の金融体制に変革をもたらそうとしているようだ。少なくとも25億人の月間アクティブユーザーを抱えるFacebookは、仮想通貨を流通させるために十分な影響力を保持していることから、リブラはビットコイン(Bitcoin)や他の仮想通貨が成し得なかった世界共通の統一通貨としての役割を担う可能性があると考えられる。

先日公開されたホワイトペーパーによると、Facebookは分散型の運営体制の構築に力を注いでおり、リブラの開発元および販売元となっている同社が簡単にネットワークを操作できないように複数のノードがブロックの承認を行うスキームを採用しているという。形式上、Facebookを含む100個のノードが意思決定に関わる投票権を1票ずつ保持しているため、特定のネットワーク参加者が絶対的なコントロールを得ることは難しいが、同社が強い影響力を持っていることには変わりないとの指摘もある。Facebookはリブラプロジェクトの資金調達を模索していたが、ノードやプロジェクトメンバーの集合体であるLibra Associationには、このプロジェクトに1,000万ドル以上を投資したVisaやUber、Andressen Horowitzなどの企業が名を連ねており、ノードの選定方法が公平ではないことは明らかだと言えよう。

このことについてRyan Researchの創設者であるPeter Ryan氏は、以下のようにコメントしている。

中央銀行と同じくリブラが分権化されることはないでしょう。Facebookは、ブロック承認者として大手企業を選定しており、その構造は今後も維持されると予想できます。そのためFacebookはトランザクションの凍結やユーザーの利用停止など、実質的に中央管理者としての権限を保持していると言えるのです。

Peter Ryan, Founder of Ryan Research - Finance Magnatesより引用

ステーブルコインであるリブラの安定性は、複数の法定通貨から構成されるバスケットに裏付けられているが、中央集権型の運営が過ぎれば、その仕組みも機能しなくなる恐れがある。そのリスクに関して、ステーブルコイン開発を手がけるNeutralのCEOであるMatt Branton氏は、以下のように述べた。

リブラは、バスケットモデルを採用しています。つまり、単一の法定通貨に連動するのではなく、複数の資産を集めたバスケットにその価値が裏付けられているのです。このような構造は高い安定性や多様性を維持することに貢献し、通常のステーブルコインよりも投資家にとっては有益だと言えるでしょう。しかし、バスケットを構築するだけでは不十分で、価格変動が起こるのは必然的なため、あらゆる出来事がボラティリティに影響する要因となるのです。非常に難しいがリブラの価値は、どの程度安定性を維持できるかにかかっており、もし失敗すればクラッシュを起こす可能性もあります。

Matt Branton, CEO fo Neutral - Finance Magnatesより引用

過去にFacebookがユーザーのプライバシーを侵害したことや顧客データをビジネスに利用してきたことを考慮すると、リブラの利用には慎重にならざるを得ないが、Facebookはスイスにリブラの運営会社を設立することでプライバシー強化を試みている。Calibra(カリブラ)というリブラの運営会社は、リブラのトランザクションがFacebookのデータと混同しないようオペレーションを行うことを目的に設立されていることから、個人情報がFacebookの広告事業に利用されることはないという。また、リブラの運営は準備金の割合に応じて得られる金利収入を収益源としているため、Calibraは他の事業体には依存しない組織体系になっているようだ。また、別の収益源としてLibra Associationやその他投資家向けに、FacebookはLibra Investment Tokenと呼ばれるセキュリティトークンの発行を計画している。

Facebookがセキュリティトークンを採用したことについて、Securitizeの協同創立者兼CEOであるCarlos Domingo氏は以下のようにコメントした。

Facebookのような世界的な企業がインセンティブプログラムにSTO(セキュリティトークンオファリング)を採用したことから、業界全体がSTOの合法化に動く可能性があります。うまくいけば、STOやデジタル証券が資金調達および証券のライフサイクル管理の手段として如何に優れているか、認識を高めるきっかけとなるかもしれません。

Carlos Domingo, CEO of Securitize - Finance Magnatesより引用

このFacebookの試みはセキュリティトークンの活用だけでなく、その他にも業界に大きな波紋を呼んでおり、仮想通貨取引所のEvercoin Cryptocurrency Exchangeを立ち上げた松村美子氏はFacebookがデータバンクから中央銀行的な役割へと移行していると言及した。これに加えてeToroのCEOであるYoni Assia氏も、FAANGS(米国を代表する主要なテクノロジー企業)のひとつが数十億人規模のユーザーに向けて仮想通貨をローンチすることは重要な意味を持つと評価している。一方でFacebookが仮想通貨を便利な決済オプションだと捉えてリブラを開発しているとの見方もあり、Kin(キン)のゼネラルマネジャーであるAlex Frenkel氏は、法定通貨を裏付けにするステーブルコインを開発するだけでは新規性や変革の可能性は生まれないと批判した。Facebookがテクノロジーを駆使してどのような変化を促すかが重要になってくるが、今後も同社の取り組みには期待して見守っていきたい。

release date 2019.06.20

出典元:

ニュースコメント

米国議会でリブラに反対の声

昨年以来、Facebookは仮想通貨プロジェクト推進のために、将来的な規制の在り方やその枠組みなど、米政府当局との対話を続けてきたようだが、リブラのローンチが目前に迫った段階に来て、同社の取り組みに反対の意を示す者が現れている。例えば、米国上院議員のSherrod Brown氏は、これまでユーザーに対するプライバシー侵害が問題視されていたFacebookが、スイス領内で政府当局の監視なしに仮想通貨システムを運用することに難色を示しているという。また、米議会下院金融サービス委員会のMaxine Waters氏は、Facebookの仮想通貨プロジェクトを凍結することを求めており、政治的な論争に発展しているようだ。本質的に仮想通貨業界は、通貨発行権を持つ中央政府との衝突は避けられない運命にあるため、このような反対感情の高まりはしょうがない出来事だとも言えるが、Facebookには次のブレークスルーに向かって歩みを進めてほしい。


Date

作成日

2019.06.20

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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