作成日
:2019.06.20
2022.01.26 13:18
オーストラリア証券投資委員会(Australian Securities and Investments Commission)【以下、ASICと称す】がFX・CFDブローカー向けに新たな規制強化策を導入する見通しである中、ブローカー各社は今後2年ほどの間に新規制に対応したビジネスモデルを構築する必要性が出てきている。
2019年4月、オーストラリア議会で財務省関連法案の修正議決が可決されたことを受け、ブローカーは2021年4月までに、ASICによって次の四半期までの発表が見込まれている新規制策を遵守しなければならない情勢だ。ASICは全ブローカーに顧客取引データの提出を要請しており、2019年6月末までとする提出期限が迫ってきている。加えて、ブローカー各社は自社のビジネスモデルや地域別の顧客構成などの他に、各国市場ごとに事業運営が可能であることを証明するリーガルオピニオン(関連法制との適法性などを判断する弁護士による意見書)も求められている状況だ。更にASICの代表団が過去半年間で少なくとも2度中国を訪問した後、オーストラリアを拠点とするブローカーに対し中国人顧客向けのサービスを停止するよう強く要請している。
また、複数のブローカーがASICの対応に異議を唱える一方で、ACY Securitiesが中国人顧客口座を閉鎖した他、Vantage FXは豪国外の顧客サービスを停止するなど、中国からの撤退を決断する企業も出てきている。オーストラリアを拠点とする多くのFX・CFDブローカーが中国人顧客に大きく依存する収益構造である中、海外顧客向けサービスへの規制が強化されることが見込まれており、同国の金融サービスライセンスの価値が2019年に入って急速に低下していると推察される。また、各ブローカーを率いるCEOの間では、オーストラリアがEUと同様に厳格なレバレッジ制限を導入するか否か意見が分かれている。その内の一人のシニアエグゼクティブは、ASICの複数の委員がリテールブローカーの動向を精査する意向を示している状況下について、同国のリテールブローカレッジ業界に対して非常に悲観的な見方を示しており、個人投資家のCFD取引が禁止される可能性があると見込んでいる。なお欧州のブローカーの中には、引き続きハイレバレッジサービスを提供すべくプロフェッショナル顧客層を設ける企業も出てきているが、オーストラリアでプロ投資家層に分類されるには少なくとも純資産が250万ドル以上もしくは過去2会計年度それぞれにおいて総収益が25万ドル以上であることが求められ、顧客層を分類したうえで収益性の高いサービスを提供することも難しい状況だ。
現在ASICは、商品の機能や設計、ディスクロージャー及び販売体制などの基準に照らして各金融商品を精査しており、特に個人投資家が経済的な損失を被る可能性がある商品は多大な不利益をもたらすものとして位置づけられる模様だ。そして、この商品の分類をきっかけとして、ASICが個人投資家に向けた一部商品の提供の禁止、または個人投資家以外への提供の認可、もしくはリスクレベルに合った警告メッセージを添える場合に限り商品提供を許可するといった規制策を打ち出す可能性もあろう。更にASICの委員は過去数か月の間に個人投資家向けのハイレバレッジ商品販売動向を注視しており、ブローカーが提出する顧客取引データを基に今後新たな規制策を導入することも考えられる。なおASICは個人投資家向けのFX・CFD商品取引に関する規制策を打ち出す具体的なスケジュールを明らかにしていないが、業界筋によると2019年末までに規制方針を発表する見通しであるとのことだ。ASICが規制強化を推し進める流れに変わりはないと想定されることから、ブローカー各社にとっては今後打ち出される見込みの新規制強化策に適宜対応する機動力と経営体力が求められていると言えそうである。
release date 2019.06.20
比較的緩やかな規制を敷いてきたASICは、従来からハイレバレッジを求めるブローカーが積極的にそのライセンスを取得してきたことに加え、信託保全を義務付けていることから、投資家にとっても魅力的なライセンスとして好まれてきた。今後も緩やかな規制方針が継続されるとの見方が強かったが、今月に入りASICによる厳格な店頭デリバティブ取引規制策の導入が明らかとなったことで、ASICのライセンスを持つ各ブローカーが海外顧客へのサービスを縮小するなどの影響が出ているようだ。日本でも過去にAxiTraderやPepperstoneなどのASICライセンスを保有する有名なオーストラリア系ブローカーが一斉に日本市場からの撤退を決定したことがある。この動きは日本の金融庁の規制計画を受けたASICの勧告に基づくものと推測されているが、オーストラリア系以外の海外ブローカーを利用していたトレーダーも、資金の引き出しを急ぐほか、代替ブローカーを探さねばならなかった。各国金融当局での規制緩和に足並みを揃え、ASICも投資家層の分類による規制を進めているものの、国内でプロ投資家向けのハイレバレッジサービスを享受できる層は薄いと見られている。また、ASICが求める顧客調査や報告書提出にかかるコストが割に合わないと判断し撤退を選択するブローカーも少なくないと考えられており、コンプライアンスコスト増大の課題は避けられないだろう。
作成日
:2019.06.20
最終更新
:2022.01.26
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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