Select Language

ASIC、新規制強化策を2021年から適用開始

ASIC、新規制強化策を2021年から適用開始

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.01.26 13:18
ASIC、新規制強化策を2021年から適用開始

update 2022.01.26 13:18

ブローカーは今後2年間で規制対応が必須

オーストラリア証券投資委員会(Australian Securities and Investments Commission)【以下、ASICと称す】がFX・CFDブローカー向けに新たな規制強化策を導入する見通しである中、ブローカー各社は今後2年ほどの間に新規制に対応したビジネスモデルを構築する必要性が出てきている。

2019年4月、オーストラリア議会で財務省関連法案の修正議決が可決されたことを受け、ブローカーは2021年4月までに、ASICによって次の四半期までの発表が見込まれている新規制策を遵守しなければならない情勢だ。[1]また、ASICは全ブローカーに顧客取引データの提出を要請しており、2019年6月末までとする提出期限が迫ってきている。加えて、ブローカー各社は自社のビジネスモデルや地域別の顧客構成などの他に、各国市場ごとに事業運営が可能であることを証明するリーガルオピニオン(関連法制との適法性などを判断する弁護士による意見書)も求められている状況だ。更にASICの代表団が過去半年間で少なくとも2度中国を訪問した後、オーストラリアを拠点とするブローカーに対し中国人顧客向けのサービスを停止するよう強く要請している。

複数のブローカーがASICの対応に異議を唱える一方で、ACY Securitiesが中国人顧客口座を閉鎖した他、Vantage FXは豪国外の顧客サービスを停止するなど、中国からの撤退を決断する企業も出てきている。オーストラリアを拠点とする多くのFX・CFDブローカーが中国人顧客に大きく依存する収益構造である中、海外顧客向けサービスへの規制が強化されることが見込まれており、同国の金融サービスライセンスの価値が2019年に入って急速に低下していると推察される。また、各ブローカーを率いるCEOの間では、オーストラリアがEUと同様に厳格なレバレッジ制限を導入するか否か意見が分かれている。その内の一人のシニアエグゼクティブは、ASICの複数の委員がリテールブローカーの動向を精査する意向を示している状況下について、同国のリテールブローカレッジ業界に対して非常に悲観的な見方を示しており、個人投資家のCFD取引が禁止される可能性があると見込んでいる。なお欧州のブローカーの中には、引き続きハイレバレッジサービスを提供すべくプロフェッショナル顧客層を設ける企業も出てきているが、オーストラリアでプロ投資家層に分類されるには少なくとも純資産が250万ドル以上もしくは過去2会計年度それぞれにおいて総収益が25万ドル以上であることが求められ、顧客層を分類したうえで収益性の高いサービスを提供することも難しい状況だ。

現在ASICは、商品の機能や設計、ディスクロージャー及び販売体制などの基準に照らして各金融商品を精査しており、特に個人投資家が経済的な損失を被る可能性がある商品は多大な不利益をもたらすものとして位置づけられる模様だ。そして、この商品の分類をきっかけとして、ASICが個人投資家に向けた一部商品の提供の禁止、または個人投資家以外への提供の認可、もしくはリスクレベルに合った警告メッセージを添える場合に限り商品提供を許可するといった規制策を打ち出す可能性もあろう。更にASICの委員は過去数か月の間に個人投資家向けのハイレバレッジ商品販売動向を注視しており、ブローカーが提出する顧客取引データを基に今後新たな規制策を導入することも考えられる。なおASICは個人投資家向けのFX・CFD商品取引に関する規制策を打ち出す具体的なスケジュールを明らかにしていないが、業界筋によると2019年末までに規制方針を発表する見通しであるとのことだ。ASICが規制強化を推し進める流れに変わりはないと想定されることから、ブローカー各社にとっては今後打ち出される見込みの新規制強化策に適宜対応する機動力と経営体力が求められていると言えそうである。

release date 2019.06.20

出典元:

ニュースコメント

ASICの規制強化に伴う国内ブローカーへの影響

比較的緩やかな規制を敷いてきたASICは、従来からハイレバレッジを求めるブローカーが積極的にそのライセンスを取得してきたことに加え、信託保全を義務付けていることから、投資家にとっても魅力的なライセンスとして好まれてきた。今後も緩やかな規制方針が継続されるとの見方が強かったが、今月に入りASICによる厳格な店頭デリバティブ取引規制策の導入が明らかとなったことで、ASICのライセンスを持つ各ブローカーが海外顧客へのサービスを縮小するなどの影響が出ているようだ。日本でも過去にAxiTraderやPepperstoneなどのASICライセンスを保有する有名なオーストラリア系ブローカーが一斉に日本市場からの撤退を決定したことがある。この動きは日本の金融庁の規制計画を受けたASICの勧告に基づくものと推測されているが、オーストラリア系以外の海外ブローカーを利用していたトレーダーも、資金の引き出しを急ぐほか、代替ブローカーを探さねばならなかった。各国金融当局での規制緩和に足並みを揃え、ASICも投資家層の分類による規制を進めているものの、国内でプロ投資家向けのハイレバレッジサービスを享受できる層は薄いと見られている。また、ASICが求める顧客調査や報告書提出にかかるコストが割に合わないと判断し撤退を選択するブローカーも少なくないと考えられており、コンプライアンスコスト増大の課題は避けられないだろう。


Date

作成日

2019.06.20

Update

最終更新

2022.01.26

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

仮想通貨SOLVの将来性は?ビットコインのステーキングプロトコルSolv Protocolを解説

仮想通貨(暗号資産)SOLVは、ビットコイン(BTC)のステーキングプロトコル「Solv Protocol」のネイティブトークンです。当記事では、仮想通貨SOLVの特徴やSNSでの評判、将来性、トークンの使い道などを解説します。
update2025.01.10 19:30

【無料ツールも】MT4/MT5で複数チャートを同期スクロールし、分析を劇的に変える方法!

MT4/MT5ではインディケータを使うことで複数チャートを同期してスクロールできます。この記事ではMT4/MT5の複数チャートを同期してスクロールできるインディケータについて、実際に使ってみた感想も交えながら紹介していきます。
update2024.11.07 19:00

GMOコインからBybitに送金してみた!送金手数料や最低送金額なども解説

Myforex編集部では、GMOコインからBybit(バイビット)に仮想通貨を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験などを交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨、トラベルルールの対応状況などを紹介します。
update2024.12.24 19:30

MT4/MT5でも日本時間を簡単に表示できる!日本との時差については図解で理解しておこう

MT4/MT5では通常、表示される時間が日本時間から6時間ほどずれています。頭の中で「表示される時間 + 6時間」などと計算すれば、日本時間に変換可能です。しかし慣れないうちは少し不便なので、日本時間を表示させる外部ツールも活用されています。
update2024.11.27 19:30

bitbankからBybitに送金してみた!トラベルルールの対応状況も解説

Myforex編集部では、bitbank(ビットバンク)からBybit(バイビット)に仮想通貨を送金してみました。この記事では実際に送金してみた経験などを交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨、トラベルルールの対応状況などを紹介します。
update2024.11.28 19:00

Bybitからbitbankに送金してみた!送金手数料やトラベルルールについて解説

Myforex編集部では、Bybit(バイビット)からbitbank(ビットバンク)に仮想通貨(暗号資産)を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験をもとに、送金手順やおすすめの送金通貨などを紹介します。
update2024.12.27 19:00

初心者でも安心!MT4ストラテジーテスターの使い方完全ガイド ~EA活用とバックテストで一歩先のトレードへ~

MT4でEAを使って自動売買をするならストラテジーテスターにより利益が出るかテストが必要です。本記事では、ストラテジーテスターの実践的な使い方や疑問を感じやすいポイントを解説します。
update2025.01.10 19:00

XMTradingがおみくじプロモ2025を実施!総額1,000万円越えのキャンペーン

海外FX業者XMTradingは、1月2日~1月31日までの期間限定で「おみくじプロモ2025」を実施すると発表しました。賞金総額は1,000万円以上であり、抽選で100名に最大75万円の現金がキャッシュバックされます。
update2025.01.06 19:00

このローソク足あと何秒!?残り時間を表示するMT4/MT5のインディケータを比較

MT4やMT5でトレードする際、インディケータを使えばローソク足が確定するまでの残り時間を表示できます。アラート機能付きや残り時間以外の情報も表示するインディケータもあります。本記事では、MT4・MT5にローソク足の残り時間を表示するインディケータを紹介します。
update2024.12.12 19:30

SONYのレイヤー2「Soneium」がIP侵害を理由にミームコインをブラックリスト化

ソニーグループによるイーサリアムレイヤー2のSoneium(ソニューム)が、メインネットローンチの同日に、IP侵害のあるミームコインをブラックリスト化し、SNSで話題となっています。本記事では、Soneiumの概要やブラックリスト化の内容、SNSでのユーザーの声などを解説します。
update2025.01.17 19:00
youtube youtube

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル