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ユーレックス、クロスカレンシースワップの中央清算業務を開始

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update 2021.08.31 15:29
ユーレックス、クロスカレンシースワップの中央清算業務を開始

update 2021.08.31 15:29

効率的な清算業務を可能とするCCPモデルを推進

ドイツ取引所傘下の世界有数のデリバティブ取引所Eurex Exchange(本社:Mergenthalerallee 61 65760 Exchborn[1])【以下、ユーレックス】が、ユーロ/米ドルと英ポンド/ドルのクロスカレンシースワップ取引を含む中央清算サービスの強化を図っていることが明らかになった。

ユーレックスは現在ディーラー間のスワップ取引の清算サービスを提供しているが、今後は中央清算業務に注力し顧客基盤の拡大を図る意向だ。市場関係筋は、この動きによりFX業界の中央清算業務が進展すると見ている。各金融機関は現状の銀行間決済に満足しているものの、中央清算機関(Central Counterparty)【以下、CCPと称す】を活用した清算業務が拡大する見通しである。なお、クロスカレンシースワップ取引の清算業務は真新しいビジネス領域ではなく、特に香港の複数の取引所において、18か月物の米ドル/香港ドルスワップ取引の清算が行われている。クロスカレンシースワップ取引の清算業務へのニーズは高まっており、今後他の証券取引所においても同様のサービスが展開される見込みだ。

CCPを活用した清算業務に関し、R5FXのCEOであるJon Vollemaere氏とCME Clearingの社長を務めるSunil Cutinho氏、ADSSのセールス部門グローバルヘッドであるJason Hughes氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。

中国のようなネッティングサービスを利用できない地域や、インドもしくはブラジルのように、居住者及び非居住者共にリスクを伴う地域において、CCPモデルは有効でしょう。仮に新興市場の通貨でCCPモデルが機能するのであれば、G10(米国や日本など先進10か国)の通貨でも有効に機能すると思われます。また、これまでコストが割安なプライムブローカーを通じて取引決済を行ってきましたが、現在ではそのコストが上昇すると共に、2年後には非清算店頭デリバティブ取引に係る証拠金規制(Uncleared Margin Rules, UMR)の影響も出てくるため、CCPモデルを採用する清算機関がFX市場における取引シェアを拡大させるでしょう。

Jon Vollemaere, CEO of R5FX - EuroMoneyより引用

中央清算は、単一のカウンターパーティーとエクスポージャーのネッティングが可能なほか、ネットベースで証拠金を清算できるため、バイラテラルな取引よりも効率的であります。我が社のFX中央清算サービスは、店頭(OTC)FX取引や取引所に上場する通貨先物、オプション取引に関して、新興市場の先物取引に要する証拠金の90%、G10の先物に対しては56%のマージンを削減いたします。

Sunil Cutinho, president at CME Clearing - EuroMoneyより引用

我々は、規制強化に伴う取引のレポーティング業務と共に、伝統的な店頭FX取引でCCPモデルが普及すると見込んでおります。なお、ドイツ証券がFX分野において積極的な買収戦略を実践しておりますが、ユーレックスを利用する金融機関は少ないため、インターバンクの店頭取引決済に影響を与えるくらい業容を拡大させる必要があるでしょう。

Jason Hughes, global head of sales at ADSS - EuroMoneyより引用

各証券取引所は伝統的な証券売買部門の収益性が悪化しているため、FX分野の事業拡大を模索している模様である。CCPモデルが主要なFX取引の清算手段となるには時間を要すると見込まれており、ユーレックスを始めとする清算機関がどれほどまで取引シェアを伸ばせるか、今後の業績動向に注目が集まりそうだ。

release date 2019.12.04

出典元:

ニュースコメント

ブレグジット後の動向が注目される中央清算市場

欧州の有力証券取引所グループ各社は、取引データなどのマネタイズ化を図る情報サービスとCCPを重点戦略分野に位置づけている。CCPは、海外FXブローカーと相互の店頭取引デスク間で締結されたバイラテラル契約の様に、両社がお互いの契約を履行しないリスクを負う仕組みではなく、CCPが取引当事者双方のカウンターパーティーとなってリスクを肩代わりする金融市場インフラのことである。これにより、万が一の際に市場全体へリスクが波及することを抑えると共に、マージンや資本バッファーを削減することが期待でき、新たに導入された店頭デリバティブ規制の下、CCPの清算市場におけるプレゼンスが拡大している状況だ。欧州で当局より認可を受けているCCPとしては、英国を拠点とするLCH LimitedやICE Clear Europe Limited、LME Clear Limitedのほか、ドイツのユーレックスやEuropean Commodity Clearing、フランスのLCH SAなどが挙げられる。なお、ESMAはハードブレグジット時、英国CCPに認可を与える意向を示した。英国CCPのなかでも、金利スワップ取引の清算において世界で90%のシェアを誇るLCHは、傘下のForexClearとTradeNeXusが統合した決済機関になったほか、みずほ証券がLCH SAのレポクリアに加入するなど、積極的に業容拡大を図っており、ブレグジット後も中央清算業界をリードしていく存在と目されている。欧州の限られた清算市場において、依然として数多くのCCPが乱立しているが、今後ブレグジットをきっかけとして、業界の勢力図を塗り替える動きが出てくるか注目したい。


Date

作成日

2019.12.04

Update

最終更新

2021.08.31

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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