作成日
:2019.02.19
2022.01.27 15:15
欧州証券市場監督局(The European Secuirities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】は2月18日、英国がEU(欧州連合)から合意なき離脱(ハードブレグジット)となるケースを想定し、英国地盤の3つの中央清算機関(central counterparties、金融機関の間で生じた取引に伴う債券・債務を引き受け履行する機関)【以下、CCPsと称す】に、引き続きEU域内で事業を行うことを認める決定を下す意向であることが明らかとなった。
この度ESMAより事業認可を得られる可能性がある3機関は、いずれも英国に本拠地を構えるLCH LimitedとLME Clear Limited、そしてICE Clear Europe Limitedとのことだ。ESMAでは関連当局と議論を重ねた上で、この3機関が、欧州市場インフラ規則(European Market Infrastructure Regulation, EMIR)25条の第三国CCP(Third-Country CCP)としての認証基準に合致するとの判断に至ったという。ESMAから認証を受けることで、これらの3機関は欧州の金融機関に対して継続的に清算業務を提供することができるようになる。
ESMAによるこの度の決定が下されることで、EU域内の金融システムに多大な影響を及ぼすと見られる中央清算業務の混乱を回避する狙いがあると見られている。
ESMAの監査役会が従来より、英国のCCPsが欧州市場にて継続的に事業を営む考えを支持していたことから、今回ESMAが英国地盤CCPsへの事業認可を与える見通しとなったこと自体は、大きなサプライズとはならないであろう。なお、ESMAと他のEU諸国当局は2月1日、英国金融行動監視機構(The Financial Conduct Authority, FCA)と覚書(MoU)を交わしている。これにより、ハードブレグジットになった際には、各国金融当局が緊密な協調体制を構築すると共に、スムーズな情報交換を行うとのことである。また、ESMAはデリバティブ取引報告義務の詳細な適用計画の公表も行い、デリバティブ取引の適正化を図っている。ESMAでは今まさに、欧州各国金融当局と連携をとる形で、ハードブレグジットを想定した事務管理上の混乱回避に向けた施策を矢継ぎ早に打ち出している状況だ。
release date 2019.02.19
今後英国とEUとの関係がどのようになるのか、英国の離脱予定日となる3月29日が迫ってきている中、未だに明確にはなっておらず、EU圏内は緊張感が高まり混乱は広がるばかりである。現状考えられるシナリオとして、ハードブレグジット(合意なき離脱)、ソフトブレグジット(合意の下離脱)、または新たな国民投票が行われたた場合イギリスはEUに留まる可能性もあるが、もしも、ハードブレグジットとなった場合には、英国は、貿易、資本および人材などのあらゆる種類の権利の喪失を伴うものとなるため、英国としてもこれは避けたいところだろうが、そうなる可能性は低くはないだろう。昨年、ESMAは英国企業に情報提供の要請を行い、ブレグジットに関連する影響や、様々なリスク軽減策を実施している。英国が離脱した場合、EUに加盟している東欧各国も英国に続く可能性があるとも言われており、EUにとって2019年は予断を許さない状況が続く1年になるかもしれない。
作成日
:2019.02.19
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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