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ESMA、デリバティブ取引報告義務の詳細な適用計画を公表

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update 2022.01.27 15:20
ESMA、デリバティブ取引報告義務の詳細な適用計画を公表

update 2022.01.27 15:20

ハードブレグジットを想定し、事務管理上の混乱回避を模索

欧州証券市場監督当局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】は2月1日、デリバティブ取引の適正化を図るべく導入された欧州市場インフラ規制(European Market Infrastructure Regulation)【以下、EMIRと称す】に基づくデリバティブ取引情報の報告義務に関して、英国が合意なき離脱(ハードブレグジット)となるケースを想定した上での詳細な適用計画をまとめた声明文を公表した。

ハードブレグジットを想定したEMIRに基づく取引情報の報告義務に関する適用計画は、デリバティブ取引情報の報告義務を始め、中央清算機関(Central CounterParty, CCP、金融機関の間で生じた取引に伴う債権・債務を引き受け履行する機関)などのレコードキーピング(取引記録・管理)義務、法規制の遵守、データアクセス、取引情報蓄積機関(Trade Repository、デリバティブ取引情報を規制当局へ報告する機関[1])への取引情報の集約及び英国とEU(欧州連合)間での取引情報のポータビリティ(移管、持ち運び)など9つの項目にまとめられている。[2]

仮に英国が合意なき離脱をした場合、英国企業はEMIRに基づくEU27か国域内に拠点を設ける取引情報蓄積機関への報告義務など、EUが加盟国に遵守を求めているほとんどの規制策に縛られることがなくなる模様だ。他方で、依然としてブレグジット情勢は混沌とした状態のままであるが、方向が確定した後、迅速な対応を迫られる市場関係者の事務管理上の混乱を回避するために、この度ESMAがデリバティブ取引情報の報告義務に関する声明文を公表したと考えられよう。

また、英国金融行動監視機構(The Financail Conduct Authority)【以下、FCAと称す】も2月1日、ハードブレグジットとなった際、企業が遵守すべき規制策などをまとめた声明文を公表している。FCAでは、英国地盤の取引情報蓄積機関が引き続き英国におけるプレゼンスを確保すべく、ESMAの規制枠組みの下でも、EU域内に拠点を移すことなく事業を継続できる仕組みを検討している模様だ。

ESMAやFCAを始めとする欧州当局が、ハードブレグジットを想定した規制策の修正などの準備を粛々と進める中、2か月を切ったブレグジットは依然はっきりとした道筋が見えてきていない状況である。欧州を拠点とする企業は、引き続きブレグジット動向を踏まえた柔軟な対応が求められていると言えよう。

release date 2019.02.01

出典元:

ニュースコメント

EU店頭デリバティブ規制となるEMIRとは

2008年リーマン・ブラザーズの経営破綻により、日経平均株価も含む株価が世界的に大暴落したリーマンショック以降、金融規制の新たな構築が求められ、EUでは規制のグローバルスタンダードと呼ばれる金融商品市場指令、MiFIDやEMIRの制定が相次いで行われた。 EMIR(欧州市場インフラ規制)とは、2009年9月に行われたピッツバーグ・サミットでのG20参加国が合意した共同声明を受け、EU域内での店頭デリバティブ取引に関する規制として2010年9月に公表された。その後、欧州連合理事会と欧州議会による交渉ののち、2012年2月に最終合意され、同年7月に交付・8月に発効された。EMIRは、全9編91条から構成されており、欧州経済に影響を与え得る店頭デリバティブ市場の安全性や透明性の向上、リスク低減を目的として発効された包括的な規制だ。ハードブレグジットを想定し、ESMAやFCAから適用計画が発表されているものの、当事者にとって混乱は避けられない状態になることが予想される。ブレグジットまであと2か月、引き続き動向に注視していきたい。


Date

作成日

2019.02.01

Update

最終更新

2022.01.27

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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