作成日
:2023.11.02
2023.11.02 17:13
仮想通貨(暗号資産)の運用方法の一つに、価格の上下動を狙って売買する方法があります。しかし、価格の予想はプロでも難しく、想定と逆に動けば大きな損失を被ることもあるでしょう。
そこで、値動き以外に着目して稼ぐ方法に注目が集まっています。具体的には、イールドファーミングとステーキングです。これらの運用方法は、預け入れるだけで報酬が得られるという共通点がある一方で、特有のメリットやリスクがあります。
そこで、当記事では、これらサービスの特徴や、運用できる場所などを解説します。
イールドファーミング(yield farming)とは、2種類の仮想通貨をDeFi(分散型金融)サービスに預けて報酬を稼ぐ手段です。トレーダーが取引をすると取引手数料が発生し、それを原資にして報酬をもらいます。
例えば、上の図のようにDeFiのイールドファーミングを通じて預けられたUSDTとETHを使って、他のユーザーがトレードします。このときの売買手数料が、イールドファーミングで預け入れた人への報酬の原資です。
似たような仕組みとして、流動性マイニング(リクイディティマイニング)があります。こちらは、流動性を提供したユーザーに対して、主にガバナンストークンを付与する仕組みです。原資は、主にネットワークが新規発行したトークンです。イールドファーミングと違い、他のユーザーによる取引等は必要ありません。
イールドファーミングと流動性マイニングは同時に実行されることがあり、プロジェクト開発チームによるユーザー集めの手段として使われています。
また、この2つは似ているので、イールドファーミングと流動性マイニングの用語を区別せずに使用することもあります。
イールドファーミングのメリットは、利率の高さです。仮想通貨の種類によっては、年率数十%以上を期待できます。また、流動性マイニングを同時に利用すれば、利率をさらに高めることも可能です。
その一方、変動損失(インパーマネントロス)のリスクがあります。下の図を使って、これを解説します。
上のDEX説明図で「?」の仮想通貨価格が暴落するとします。すると、トレーダーは手元の「?」を急いで売ってイーサリアムに交換しようとするでしょう。この結果、流動性プールのイーサリアムはなくなって「?」で満たされることになります。
その後、ユーザーがイールドファーミングをやめて、預け入れた仮想通貨2種類を引き出すと、イーサリアムはほぼ存在しないため「?」だけが返却されることになり、損します。これがインパーマネントロスです。
このような極端な例でなくても、2つの仮想通貨の価格バランスが少しでも変わると、インパーマネントロスが発生します。
この損失は手数料報酬でカバーしますが、手数料で実際にカバーできるかどうかについては、将来になってみないと分かりません。
そこで、Maverick Protocolなどでは、インパーマネントロスを回避する仕組みが採用されています。
ステーキング(staking)とは、仮想通貨(暗号資産)を一定期間ロックアップして報酬を得る仕組みです。ロックアップ期間中は、その仮想通貨を送金したり売却したりできません。そして、ステーキングには2種類の意味があります。
本来、ステーキングとは、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)系のブロックチェーンにおけるブロック承認プロセスを意味します。対象の仮想通貨を預け入れてバリデーターになれば、ブロックの生成に貢献して報酬を獲得できます。
PoSはブロック生成ルールの1つです。ビットコイン(BTC)などが採用するPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と比較して、電力消費が少ない点や拡張性が高い点などで注目されています。
また、バリデーターにならなくても、バリデーターに委任することでブロック生成に参加して報酬を得ることもできます。一般のユーザーは、主にこちらの方法でステーキングに参加します。
もう一つの意味のステーキングは、CEXやDappに仮想通貨を預け入れ、その対価として報酬をもらうことです。ステーキングよりもレンディングに近い仕組みです。
ユーザーに仮想通貨の長期保有を促す効果があり、様々なプロジェクトで採用されています。
本来の意味のステーキングは、ブロックチェーン自体の仕組みであって、取引所と関係ありません。このため、ブロックチェーン上で直接参加できますし、取引所経由で参加することもできます。
また、メジャーな仮想通貨のステーキング報酬は、おおむね年利10%以下に設定されており、レンディングよりも高利率という特徴があります。
さらに、リキッド・ステーキングなどで運用を効率化することも可能です。
ステーキングに参加するには、仮想通貨をロックアップします。そして、いつでも自由にロックアップを止められる場合もあれば、ロックアップ終了手続きをしてから実際に手元に仮想通貨が戻るまでに、1週間以上の時間を要する場合もあります。
このため、ステーキング実行中に仮想通貨価格が下落すると、損失額がステーキング報酬を上回るかもしれません。
また、バリデーターに委任してステーキングする場合、バリデーターがルール違反を犯すとペナルティが課され、仮想通貨を没収されてしまう可能性があります(スラッシング)。
スラッシングとは、バリデーターがルールに違反した場合、そのバリデーターが預けた仮想通貨を没収する仕組みです。スラッシングはバリデーターだけでなく、委任したユーザーも対象となります。
各運用方法の違いをまとめると、以下のとおりです。
項目 | イールドファーミング | ステーキング |
---|---|---|
報酬の原資 |
・預け入れたDeFiサービスの取引手数料
・ネットワークが新規発行したトークン(流動性マイニング)
|
・ブロック生成への貢献に対する報酬 |
利回り水準 | ・数%〜数十%以上 | ・数%〜数十% |
メリット | ・利回りの高さ |
・ブロックチェーン上で直接参加可
・リキッド・ステーキングなどで運用効率化
|
リスク | ・インパーマネントロス |
・ロック期間
・スラッシング
|
難易度 | ・中〜上級者 | ・初心者〜上級者 |
報酬の原資
イールドファーミング |
・預け入れたDeFiサービスの取引手数料
・ネットワークが新規発行したトークン(流動性マイニング)
|
ステーキング | ・ブロック生成への貢献に対する報酬 |
利回り水準
イールドファーミング | ・数%〜数十%以上 |
ステーキング | ・数%〜数十% |
メリット
イールドファーミング | ・利回りの高さ |
ステーキング |
・ブロックチェーン上で直接参加可
・リキッド・ステーキングなどで運用効率化
|
リスク
イールドファーミング | ・インパーマネントロス |
ステーキング |
・ロック期間
・スラッシング
|
難易度
イールドファーミング | ・中〜上級者 |
ステーキング | ・初心者〜上級者 |
ステーキングは初心者でも理解しやすい一方、イールドファーミングは仕組みがやや複雑なため、中級者から上級者向けです。
イールドファーミング、ステーキングができる主なプロトコルは、以下の通りです。
イールドファーミングの代表的なプロトコルとして下記の2つを紹介します。
UniSwapは最大規模のDEX(分散型取引所)で、イーサリアムを筆頭に複数のブロックチェーンに対応しています。
イールドファーミングをすると、手数料収入やガバナンストークンのUNIを獲得できます。
Curve Financeは代表的なDEX(分散型取引所)であり、仮想通貨のスワップやイールドファーミングなどのサービスを提供しています。
イールドファーミングすると、報酬やガバナンストークンのCRVを獲得できます。
ステーキングの代表的なプロトコルとして下記の2つを紹介します。
Lido Financeは、最大のリキッド・ステーキングプロトコルです。通常のステーキングでは、預け入れた仮想通貨がロックされる一方、リキッド・ステーキングでは、預け入れた仮想通貨と等価のリキッド・ステーキングトークンが付与されます。
ETH、MATIC、SOLでリキッド・ステーキングが可能で、ステーキングすると、stETH、stMATIC、stSOLをもらえます。これらのトークンを使って運用可能です。
Rocket Poolは、イーサリアムのステーキングサービスを提供するプロトコルです。Rocket Poolでは、以下の2つの方法でステーキングができます。
イーサリアム上でステーキングのノードを運用するには本来32ETHが必要ですが、Rocket Poolを使えば8ETHで可能です。さらに、Rocket Poolの独自仮想通貨RPLも受け取れます。
また、リキッドステーキングで獲得できるrETHは、LidoのstETHと同様に運用してさらなる利回りを得ることも可能です。
初心者の場合、CEX(中央集権型取引所)のサービス利用もおすすめです。例えば、大手取引所Bybitでは、イールドファーミングやステーキングを含む、統合的な運用サービスを利用できます。
Bybitの運用サービスは、操作が簡単で管理の手間もほとんどかからず、多様なサービスにアクセスできるのがメリットです。
作成日
:2023.11.02
最終更新
:2023.11.02
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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