作成日
:2020.12.28
2021.08.31 15:31
米証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission)【以下、SECと称す】は、連邦証券法に基づいて仮想通貨市場の統制強化を試みる中、未登録の仮想通貨カストディアンに5年間の猶予期間を与えることを提案した。
SECの提案によると、企業は特定の条件下で仮想通貨を対象としたカストディサービスを提供することができるが、事業を開始する前にブローカーディーラーとして当局に登録する必要があるという。登録に際し企業には5年間の猶予期間が与えられ、その間、顧客保護規則に基づく執行措置の対象から除外されるとのことだ。SECは仮想通貨カストディが既存の証券法の対象となることを説明し、最終的に企業が顧客資産を物理的に保持すると同時に、取り扱い資産を仮想通貨に限定することや関連法の遵守、リスク規定への準拠、顧客へのリスク開示などを行う必要があると述べた。
しかしながら、SECはブローカーディーラーが秘密鍵を保持している事実について、仮想通貨が正しく管理されていることを保証し得るかに関して、その見解を明示しなかった。実際にブローカーディーラーが帳簿や財務諸表から、仮想通貨が存在する証拠を提示することは困難だと考えられる。この問題に関してSECは、仮想通貨カストディの基準とベストプラクティスについて新たな考察を得るために意見を求めているという。
現在、既存のブローカーディーラーは事前承認なしで仮想通貨の取り扱いを開始することを禁じられている。従って多くのフィンテック企業やブロックチェーン企業が当局の管理下に置かれ、金融業規制機構(Financial Industry Regulatory Authority)【以下、FINRAと称す】のメンバー企業となる事などが義務付けられるが、この規制強化の流れがどのような変化をもたらすのか、今後も米国市場の動向を見守っていきたい。
release date 2020.12.28
昨年、ブローカーディーラーの監督機関であるFINRAが仮想通貨関連企業に活動報告を依頼するなど、当局は仮想通貨市場で規制フレームワーク確立に向けた動きを見せている。しかしながら、その間にも米国内の仮想通貨市場は拡大しており、Winklevoss兄弟によって設立されたジェミニが仮想通貨カストディサービスを開始したのに加え、大手仮想通貨関連企業が積極的に事業を展開しているようだ。その他にも、米国を代表する大手仮想通貨カストディ企業であるBitGoが仮想通貨レンディングサービスを開始して事業を多角化するなど、企業を取り巻く仮想通貨市場の環境は徐々に複雑化している。このような状況の中、仮想通貨関連企業やコミュニティは明確な規制フレームワークが導入されることを望んでいるが、米当局はこの課題をどのように解決するのか、今後もその取り組みに注目していきたい。
作成日
:2020.12.28
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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