作成日
:2020.11.10
2021.08.31 15:33
韓国の規制当局である金融委員会(Financial Services Commission)【以下、FSCと称す】が、国内の仮想通貨サービスプロバイダー(Virtual Asset Service Provider)【以下、VASPと称す】にユーザーの顧客確認(KYC)を義務付けるための法改正を提案していることが明らかになった。
今月4日の発表によると、この改正法案は仮想通貨の購入と販売および仮想通貨取引に従事する事業者、カストディアン、デジタルウォレットサービスプロバイダー、仲介業者をVASPと定義し、マネーロンダリング防止(AML)に関するルールを強化することを目的にしているという。これにより法改正が予定される2021年3月25日から、VASPはユーザーとの取引に実名口座を使用すると同時に、顧客資産を自己資産と分けて管理することが求められるようだ。
加えて、VASPは第三者の金融機関によるマネーロンダリングのリスク評価や、政府機関のKISA(Korea Internet and Security Agency)からデータセキュリティ承認を取得する必要がある。これに伴ってVASPは、過去5年間に罰金やその他罰則の記録がないことを前提に、ユーザーの取引記録を管理することが求められるという。この改正法案では仮想通貨だけでなく、法定通貨と交換できないデジタルトークンや電子マネー、電子化された株券、電子証券、商品などが規制の対象となっているが、プリペイドカードやモバイルギフトカード、電子債権の類は除外されている。
今回、FSCはこの法改正が金融活動作業部会(Financial Action Task Force)【以下、FATFと称す】のTravel Rule(送金時に個人情報を提供する規定)に準拠するためのものだと説明し、これに対するパブリックコメントを募集している。最近、香港SFCが全仮想通貨取引所を規制する方針を示すなど、他国でもFATFの国際的な規制に準拠する流れが生じているが、韓国の仮想通貨コミュニティはどのような反応を見せるのか、今後も同国での動きに注目していきたい。
release date 2020.11.10
これまで韓国政府は仮想通貨市場を後押しするために官民一体となったプロジェクトを展開しており、最近では非上場株式の取引サービスや中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)の開発などで活発な動きを見せている。また、今年初めに韓国政府は仮想通貨取引の利益に20%課税することを検討するなど、仮想通貨市場の拡大を受けてルールを明確化しつつある。結果的に韓国では仮想通貨やブロックチェーン技術などのテクノロジーを用いたサービスが相次いで登場しているだけでなく、国内大手銀行のウリィ銀行(Woori Bank)や新韓銀行(Shinhan Bank)も仮想通貨市場への参入を計画しているという。既に国民銀行が仮想通貨カストディサービスの提供に踏み切るなど、韓国の金融業界では仮想通貨の統合が進みつつあるが、これがどのような変化をもたらすのか、今後も同国での展開を見守っていきたい。
作成日
:2020.11.10
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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