作成日
:2020.09.24
2021.08.31 15:31
中国大手イーコマースのJD.comは、中国人民銀行(People's Bank of China)【以下、PBoCと称す】が主導する中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】であるデジタル人民元のインフラ開発に協力することを明らかにした。
現地メディアの報道によると、PBoCはデジタル人民元イニシアチブでJD.comと戦略的パートナーシップを締結し、モバイルおよびブロックチェーンプラットフォームを共同開発することを決定したという。両社は協業して仮想通貨ウォレットのオンラインおよびオフライン機能を開発し、更にJD.comは利用促進を目的としたプロモーション活動を行うことを計画しているようだ。
PBoCのデジタル人民元は、6年前にDCEP(Digital Currency/Electronic Payment)の正式名称でイニシアチブが立ち上げられた。PBoCはデジタル人民元をモバイルアプリでの支払いに利用可能なCBDCとして開発し、中国内で現金の代替として普及させることを想定している。最近、PBoCはCBDCのテスト実施に向けて20社以上の企業と提携しており、大手配車サービスのDiDi Chuxingや、テンセント(Tencent)が支援する食品配達のスタートアップ企業であるMeituan Dianpingなどとも協業関係にある。
JD.comはAlibaba(アリババ)に匹敵する規模のイーコマース企業となっており、その売上高は約830億ドルに達し、Fortune Global 500にも選出されている。今回、PBoCがJD.comとパートナーシップを結んだことはデジタル人民元の開発において大きな前進となる可能性があるが、各国政府はどのような反応を示すのか、今後も仮想通貨市場での展開を見守っていきたい。
release date 2020.09.24
米中の対立が激化する中、中国に対する金融制裁が現実味を帯びてきており、その回避策として中国政府はデジタル人民元の発行を急いでいるようだ。デジタル人民元が世界貿易や経済にどのような影響をもたらすかは未知数だが、これに同調する形で西側諸国もCBDCの研究開発を加速させている。最近ではイングランド銀行がCBDCと互換性のある決済インフラの構築を見据え、2022年までに現行のRTGS(Real-Time Gross Settlement Service)をアップグレードすることを発表した。これに加え、米国ではデジタルドル財団がアクセンチュアと協業するなど、官民一体となった取り組みが進められている状況だ。中国がデジタル人民元の発行に踏み切れば、西側諸国もそれに追従することが予想されるが、仮想通貨市場での覇権争いはどのような展開を見せるのか、今後も各国政府の動きに注目していきたい。
作成日
:2020.09.24
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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