作成日
:2020.09.03
2021.08.31 15:32
バミューダ政府は、独自仮想通貨による日用品やサービスの支払いを実現することを念頭に決済プラットフォームのStablehouseと提携し、パイロットプログラムを開始したことを発表した。
2019年、バミューダ政府はブロックチェーンベースのデジタルIDシステムの開発に着手し、米ドルに裏付けられたステーブルコインのUSDコイン(USD Coin)を用いた納税を可能にした。元々、同国政府は包括的な仮想通貨エコシステムを構築するためのイニシアチブを推進していたが、新型コロナウイルス(COVID-19)による景気後退を受けて独自仮想通貨の開発に踏み切ったようだ。これに関してバミューダ首相のフィンテックチーフアドバイザーを務めるDenis Pitcher氏は、国民に対して失業手当を迅速に配布する手段を確立する必要があることに触れ、最終的にモバイル決済の普及を目指していると説明した。
英国領のバミューダ諸島はテクノロジーの普及率が高く、2019年時点で総人口7万1,000人の約99%がアクティブなインターネットユーザーで、87%がモバイルインターネットを利用している状況だ。Pitcher氏の見解によると、バミューダ諸島には企業や政府と一般国民が実際にトランザクションを実行し、新しいソリューションのユーザーエクスペリエンスを向上させるための環境が整っているという。今回、この独自仮想通貨は初めに国内3カ所でテストされ、後にその範囲を拡大することが計画されている。
米国では景気刺激法案の一環でデジタルドルを発行することが検討されているが、バミューダ政府は中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】を実現するよりも、民間企業のステーブルコインを活用することが良策だと考えているようだ。一方で、国内銀行はコルレス銀行との関係に依存するなど、仮想通貨分野への投資という観点でいくつかの課題を抱えているため、このパイロットプログラムではあまり重要視されていないという。しかし現在、バミューダ諸島の金融業界は変革点に差し掛かっており、USDコインのようなステーブルコインが普及することになれば、国内銀行がカストディアンとしての役割を担う可能性がある。
今の所、パイロットプログラムの進捗は順調な推移を示しており、David Burt首相がモバイルデバイスを通じて独自仮想通貨で決済するテストランも行われている。バミューダ政府は先進的なソリューションを確立し、世界の仮想通貨市場をリードしようと試みているようだが、Stablehouseとのパイロットプログラムがどのような成果を生むのか、今後も同国での動きを見守っていきたい。
release date 2020.09.03
これまでバミューダ諸島を始めとする小島嶼国連合(Alliance of Small Island States)【以下、AOSISと称す】加盟国の多くは、税制や金融規制を緩和して企業を誘致し、金融サービスを中心とした国内産業の創出に成功してきた。しかしながら世界的な規制強化を背景に、バヌアツがリテールブローカー向け新規制策を制定してライセンス要件を厳格化しており、オフショア地域の国々にも徐々に変化が現れ始めている様子がうかがえる。これを受けてマーシャル諸島政府が独自仮想通貨の発行を試みるなど、金融市場から仮想通貨市場に重心をシフトする国家も出てきているようだ。中国政府によるデジタル人民元やその他CBDCのローンチが現実味を帯びてくれば、AOSIS加盟国の動きも更に流動的になってくる可能性があるが、各国政府はどのような反応を見せるのか、今後も仮想通貨市場での展開に注目していきたい。
作成日
:2020.09.03
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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