作成日
:2020.03.25
2021.08.31 15:28
米下院では新型コロナウイルスの影響で低迷する国内経済を回復させることを目的に、デジタルドルの発行を含む景気刺激法案が提案された。
現在、米国では自宅待機命令が出されると同時に、多くのビジネスが休業を強いられており、結果的に失業率の大幅な悪化を招いているという。これに対して米下院では「Take Responsibility for Workers and Families Act」および「Financial Protections and Assistance for America's Consumers, States, Businesses, and Vulnerable Populations Act」が提案され、連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board, FRB)がデジタルドルおよび電子ウォレットを介して失業者の生活を支援する計画が浮上した。これが可決されれば、未成年は1,000ドル、成人は2,000ドル相当のデジタルドルを受け取ることができる。
これらの法案で引用されるデジタルドルという用語は、連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)の負債として記録される残高、または適格金融機関が換金可能な電子的な値だと定義されているものの、それが明確に仮想通貨やブロックチェーンを指すかは記されていない。米国にとってデジタルドルの実現は、もはや避けることができないものとなりつつあるが、元米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission)のJ. Christopher Giancarlo氏や経済学者のJudy Shelton氏は、この政策の失敗が米国政府の金融覇権を揺るがす可能性があると警告した。しかしながら米国では、中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】の発行に向けてデジタルドル財団がアクセンチュアと協業するなど、民間でも積極的な取り組みが進められており、その実現に向けたソリューションの開発が加速している。
それに加え、下院ではRashida Tlaib議員が「Automatic BOOST to Communities Act」と呼ばれる法案を策定し、国民にプリペイド式のデビットカードを配布することを提案した。このデビットカードにはあらかじめ2,000ドルがチャージされており、今後1年間、新型コロナウイルスの脅威が去るまで継続的に1,000ドルずつ追加支援が給付されるという。Tlaib議員の法案の下では、将来的にこのデビットカードインフラを財務省が管理可能なデジタルウォレットシステムに置き換え、既存の金融システムを補完する「eCash」として活用する予定だ。
共和党が政権を握る上院では、民主党が5,000億ドル規模の景気刺激法案を2度阻止しており、企業への資金分配方法について透明性が確保されていないことを指摘している。先日、米国株式市場でダウ・ジョーンズ工業株価平均(Dow Jones Industrial Average)が600ポイント近く暴落するなど、経済的な観点から早急な対応が求められている状況に陥っているが、米政府はどのような判断を下すのか、今後も同国での展開を見守っていきたい。
release date 2020.03.25
これまで米国政府は、Facebook(フェイスブック)のリブラ(Libra)のような米ドルを代替する仮想通貨が普及することを懸念し、同社の取り組みに難色を示していたが、ここにきてその態度を軟化させている。特に下院では金融サービス委員会(House Financial Services Committee)が、公聴会にてザッカーバーグ氏にリブラに関する証言をさせるなど、反対派の議員が結託した動きを見せていたものの、最近では仮想通貨を支持する者も目立ち始めているようだ。実際に国内ではリブラに対抗するCelo Alliance for Prosperityが発足したのに加え、CBDC発行に関する議論が高まっている様子がうかがえる。今回提案された法案が可決されれば、国内経済の復活に向けた起爆剤として仮想通貨が普及することが現実味を帯びてくると言えるだろう。
作成日
:2020.03.25
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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