作成日
:2019.10.24
2021.08.31 15:29
Facebook, Inc.(本社:1 Hacker Way, Menlo Park, California 94025
)【以下、Facebookと称す】のCEOを務めるマーク・ザッカーバーグ氏は、今月23日に下院金融サービス委員会(House Financial Services Committee)が開催した公聴会で、同社が政府当局の規制要件を満たさずにリブラ(Libra)をローンチした場合、同仮想通貨の運営を担うLibra Associationから撤退すると発言した。今回、委員会はザッカーバーグ氏に世界的なステーブルコインとして開発が進むリブラに関する様々な質問を投げかけたが、同氏はFacebookがこのプロジェクトを主導しているわけではないことを強調すると同時に、同仮想通貨の発行前には当局の懸念を払拭すると言及している。これに対してBill Huizenga議員はLibra AssociationがFacebookから独立しているとの主張を受け入れた上で、その制約が守られなかった場合について質問しており、ザッカーバーグ氏は同社がこの協会から脱退せざるを得ないと返答した。今月初めにはVisaやマスターカード、eBayに加えてペイパルがLibra Associationからの脱退を表明しているが、ザッカーバーグ氏の発言が本当であれば、Facebookもこれに続く可能性が出てくる。
また、リブラ向けに開発されている仮想通貨ウォレットのカリブラ(Calibra)に関して、Carolyn Maloney議員が身元確認なしではこの機能が提供されないことを明確にするよう求めた。ザッカーバーグ氏は様々な種類の仮想通貨を取り扱う可能性があると前置きした上で、規制に準拠した代替手段を構築し、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与(CFT)の基準にも従うことを公言している。Maloney議員の追求は続き、カリブラが匿名性を維持すれば、犯罪の温床になる可能性があると警告したものの、ザッカーバーグ氏は同ウォレットが強力な身元承認システムを有していると反論した。
今回の公聴会の中でザッカーバーグ氏はLibra Associationが独立した組織であることを強調したが、Ayanna Pressley議員が「Facebookはリブラそのものである」と述べたように、実際にこれらが別々の判断で動くと考えることは難しいと言えるだろう。Facebookのリブラに対する逆風はその勢いを増しているが、今後も同社の取り組みには注目していきたい。
release date 2019.10.24
先日、米国で開催されたG20の財務省中央銀行総裁会議の中で、各国首脳はリブラなどの世界的なステーブルコインに厳格な規制を設けることに合意した。これに参加した日本銀行の黒田東彦総裁は、想定されるリスクに対処できるまでステーブルコインの発行を控えるべきだとの見解を示している。これまで日本政府はリブラに関するワーキンググループを立ち上げ、同仮想通貨がおよぼす影響を精査してきたが、金融政策や犯罪利用の抑止などの観点からそのリスクがあまりにも大きいと判断したようだ。また、黒田総裁が仮想通貨規制に国際的な協力を求めるなど、日本政府は仮想通貨先進国としてイニシアチブをとる形で率先して動き始めている。Facebookおよびザッカーバーグ氏はリブラのビジョンを実現するために、これからも仮想通貨業界でのチャレンジを継続することが考えられるが、各国政府はどのような対応をとるのか、今後も仮想通貨市場の動向を見守っていきたい。
作成日
:2019.10.24
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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