作成日
:2019.10.07
2021.08.31 15:29
オンライン決済サービス大手のPaypal Holdings Inc.(本社:2211 North First Street San Jose, California
)【以下、ペイパルと称す】は、Facebook(フェイスブック)が主導する非営利団体であるLibra Associationへの参加を見送ることを発表した。ペイパルの広報担当者はFacebookの仮想通貨プロジェクトへの参画を控えると述べ、同社のミッションおよびビジネスの推進に引き続き尽力し、人々のための金融サービスを拡大していくとの意向を示した。その一方でペイパルは、Facebookは長年にわたる戦略的パートナーであると発言しており、今後も様々な方法で両社の協業を促していくと言及している。ペイパルは今月3日に開催されたLibra Associationの会合に出席せず、このプロジェクトへの参加に難色を示したが、その他、VISA、マスターカード、Stripeなどの企業も同様の動きを見せているという。現在、リブラ(Libra)の運用はLibra Investment Tokenと呼ばれるトークンを使ってメンバー企業の投票で行われることが提案されており、今月14日の理事会で正式にその採用が決定する見通しのようだ。
Libra Associationの政策責任者であるDante Disparte氏は、このメンバー企業の撤退に関して次のようにコメントしている。
先進的で低遅延な安全性の高い決済ネットワークを構築し、数十億人へのサービス提供を実現することは旅に出るようなものです。決済ネットワークの確立を望むリブラの旅路は簡単ではありません。変化を促すことは難しいですが、それぞれの組織がリスク・リワードを査定し、リブラがもたらす変革にコミットする必要があると言えるでしょう。Libra Associationへの参加に興味を示す1,500社の詳細や、アップデート情報が公開される最初の理事会が開催されることを楽しみにしています。
Dante Disparte, Head of Policy and Communications of Libra Association - BUSINESS INSIDERより引用
今年6月にFacebookはリブラを通じて後進国を中心に金融包摂を拡大する目論見を公にしたが、世界経済におけるリスクになると各国政府から猛反発を受ける結果となった。米国ではMaxine Waters下院がリブラの開発を停止するよう求めていることに加え、フランスやドイツでも政府機関がプロジェクトの阻止に動いている状況だ。この流れを受けてUber(ウーバー)、eBay、Spotify、Lyft(リフト)などのメンバー企業間もLibra Associationから脱退する可能性が浮上しているが、リブラの開発企業であるCalibraで責任者を務めるDavid Marcus氏は、リブラの正当性に自信を持って取り組みを進めていると主張した。
Facebookはリブラのバウンティプログラムを開始するなど、ローンチに向けた準備に着手したものの、Waters下院を含め、米国政府関係者は依然として同社のような大手企業が世界的なステーブルコインを発行することを問題視している。米上院がFacebookのリブラに対する公聴会を開催し、同社は懸念が解消されるまでローンチを控える方針であることを公言しているが、どのような動きに出るのか、今後もその動向に注目していきたい。
release date 2019.10.07
ブロックチェーンや仮想通貨が安価で高速なトランザクションを実現可能とすることから、送金業界ではこれらテクノロジーの採用が進んでおり、パートナーシップの締結や買収などの動きが加速しているようだ。特に人気仮想通貨のXRPを手がけるリップル社は開発者向けプラットフォームをローンチするなど、送金業者やフィンテック企業をエコシステムに取り込み、同社製品の利用を拡大しようと取り組んでいる。また、リップル社はAlgrimの買収や大手送金業者のマネーグラムなどの企業に総額5億ドルもの資金を投資しており、事業拡大を積極的に推進しているようだ。一方、200カ国以上に事業を展開するペイパルは仮想通貨業界への目立ったアプローチはなく、Libra Associationへの参画が変革点だと考えられていたが、この脱退がどのような影響を及ぼすのか、今後も同社の取り組みを見守っていきたい。
作成日
:2019.10.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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