作成日
:2019.08.28
2021.08.31 15:30
Facebook, Inc.(本社:1 Hacker Way, Menlo Park, California 94025Facebook独自の仮想通貨プロジェクトであるリブラ(Libra)の脆弱性を排除することを目的に、1万ドルの報奨金が付与されるバウンティプログラムを開始したことが明らかになった。
)【以下、Facebookと称す】が、VIsaやPayPalなどの企業連合が加盟する非営利団体であるLibra Associationは以前からリブラのバウンティプログラムを実施することを計画していたが、今月27日に同プログラムの開始をホームページ上で発表した。オープンソースプロジェクトでは外部リソースを取り込むことが重要なため、Libra AssociationはバグバウンティプラットフォームのHackerOneなどとの協業を通じて、50名のセキュリティ研究者の貢献を募るベータプログラムを立ち上げたという。このようなバウンティプログラムはサイバーセキュリティ業界では標準的なものだが、テストネットが開発中の段階でリブラの脆弱性を発見することは、リリース版の信頼性を向上させるためにも有効なようだ。
これと同時にFacebookは米国でのロビー活動も加速させており、コンサルティング会社のFS Vectorと契約し、ブロックチェーンに関わる政策を変更するよう議会に働きかけている状況だ。FS Vectorは、フィンテック企業のコンプライアンスや公共政策、ビジネス戦略に関する問題解決を専門にこれまで多くのブロックチェーン関連企業をサポートしてきている。また、FS Vectorの共同経営者であるJohn Collins氏は仮想通貨取引所のコインベースで政策責任者を勤めていた他、米国銀行協会(American Bankers Association)の子会社で国際政策に携わっていた人物であり、今回、同氏がFacebookのロビー活動を担当するという。
これ以前にもFacebookはSternhell GroupやCypress Group、Davis Polkなどのロビイスト団体に750万ドルを支払ったことに加え、Mike Crapo上院議員の元補佐官であるSusan Zook氏を組織に招き入れるなど、少なくとも7名のロビイストと協力しているようだ。しかしながら、未だに米議会はリブラに対する懸念を払拭できておらず、Maxine Waters下院議員は大手IT企業が私的な通貨を発行することを危惧する旨の発言を繰り返しているほか、ドナルド・トランプ大統領もリブラに対し批判を述べている。一方、欧州連合(EU)もリブラが決済業界で独占禁止法に抵触する可能性があるとしており、好転しないリブラの進捗を受けて既に複数の企業がLibra Associationからの脱退を表明した。
開発に関しては数十のチームがイスラエルのLibracampプログラムに応募し、リブラのテストネットの検証を始めているという。Facebookは米当局の承認が降りるまではリブラのブロックチェーンをローンチしないと明言しているが、どのような動きに出るのか、今後の展開を見守っていきたい。
release date 2019.08.28
米国では直接的なロビー活動が合法であることから、ビジネスと政治の関係が日本よりも親密なものとなっており、様々な企業や業界団体が有利な法案を成立させようと巨額の資金を投じているという。特に仮想通貨業界は潤沢な資金力を背景に積極的なロビー活動を展開し、米国での市場を拡大するためにフレームワークの制定や規制緩和を推進しているようだ。昨年9月にはBlockchain Associationと呼ばれるロビー団体が米国で設立されており、コインベースや決済サービスを提供するCircleや、その他仮想通貨ファンドなどが参加している。このような仮想通貨業界のロビー団体は過去にも存在したものの、仮想通貨市場の低迷と共に消滅し、当初の目的は達成されなかった。先月、米上院でFacebookのリブラに対する公聴会が実施されるなど、同社の動きには注目が集まっているが、今後も米国における仮想通貨市場の動向を注視していきたい。
作成日
:2019.08.28
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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