作成日
:2020.08.18
2021.08.31 15:33
中国商務省(Chinese Commerce Ministry)は、中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】であるデジタル人民元のテストプログラムを北京などの発展した地域に拡大する計画を明らかにした。
これまで中国では、中国人民銀行(People's Bank of China)【以下、PBoCと称す】が深セン、蘇州、成都、西安の4つの省で政府職員の一部給与をデジタル人民元で支払うなど、CBDC発行に向けた取り組みが進められてきた。中国商務省は今年末までにこのテストプログラムを完了することを目指しており、今回、その対象エリアを天津や北京、河北省、広東省、長江デルタ地域などに拡大する予定だという。これに加え、PBoCは広州、深セン、香港、マカオを含む9つの都市でデジタル人民元を流通させると発表している。
最近、PBoCはこのテストプログラムとは別に、大手配車アプリのDiDi Chuxingや、テンセント(Tencent)が支援する食品配達のスタートアップ企業であるMeituan Dianpingと提携し、仮想通貨インフラの構築にも着手している。その他、PBoCはマクドナルド(McDonald's)やスターバックス(Starbucks)、サブウェイ(Subway)などの小売りチェーンを取り込もうとアプローチをかけているという。
今の所、PBoCはデジタル人民元のローンチ時期を明示していないものの、米国との関係悪化を危惧してその発行を急いでいるようだ。中国では習近平国家主席が仮想通貨およびブロックチェーン技術を広く採用する意向を示しており、今年1月には中国政府が暗号法を施行するなど準備を着々と進めているが、今後も当局の動向を見守っていきたい。
release date 2020.08.18
中国政府がCBDC発行に向かって突き進む中、米国でも仮想通貨を公共サービスなどに有効活用すべきだとの声が高まっている。実際にCFTC元会長がデジタルドルの重要性を示唆するなど、中国政府の取り組みを追従する形でCBDC発行を支持する流れが生じているようだ。これに加えて、米国最大の同盟国である日本では、日本銀行がCBDC導入の技術的な実現可能性を模索しており、ユニバーサルアクセスと強靭性が課題になると言及しているという。その他にも欧州では複数の国家がデジタルユーロの開発を進めるなど、より具体的なプロジェクトが進行している状況だ。中国政府がデジタル人民元の発行に踏み切れば、米国を中心とする国家もそれに続く可能性があると考えられるが、今後も仮想通貨市場での展開に注目していきたい。
作成日
:2020.08.18
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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