作成日
:2020.07.07
2021.08.31 15:33
日本銀行が中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】に対する検証を開始し、技術的な実現可能性を模索していることが明らかになった。
今月2日に発行されたレポートの中で日本銀行は、技術的な観点からCBDCの実現可能性を模索し、他国の中央銀行や関連機関と協力してその導入を検討すると述べている。日本銀行によると、CBDCの導入にはユニバーサルアクセス(Universal Access)と強靭性(Resilience)の2つのハードルがあるという。前者に関しては日本におけるスマホの普及率が65%に留まっていることが障害となっており、後者は緊急時などに備えてオフラインでのアクセスを保障することが課題になっているようだ。
また、日本銀行は中央集権型システムと分散型システムのメリット・デメリットを比較しており、CBDCの基盤にブロックチェーンを利用できるか評価を行なっているという。中央集権型システムでは高速なトランザクション処理が保障されるが、単一障害点でネットワーク全体がダウンする可能性がある。一方、分散型システムの場合、ノードが構成するネットワークの堅牢性が向上するものの、コンセンサス形成のプロセスでトランザクション処理が遅延するリスクがあるようだ。これらを考慮して日本銀行は、大規模なトランザクション処理を行うのであれば中央集権型が優れているが、強靭性と将来性の点で分散型システムの利用を検討する余地があると説明した。
日本は国際的にも優れた技術力を有する国となっているが、依然として現金への依存度が高いことが指摘されている。そのため日本銀行はデジタル円などの仮想通貨を含む非接触型の決済手段が、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大予防にも貢献する可能性があると考えているようだ。また、日本の銀行システムは旧型のソフトウェア上で動作しており、技術的なアップデートが必要であることは明らかだが、CBDCの導入は実現するのか、今後も日本国内での展開に注目していきたい。
release date 2020.07.07
これまで日本銀行は副総裁である雨宮正佳氏がCBDCは日本のメリットになり得ないとの考えを示すなど、仮想通貨に対して否定的な態度を取ってきた。しかしながら年初から中国政府が暗号法を施行したことを受け、他の先進諸国と同様に日本政府もCBDC導入に向けて何かしらのアクションを取る必要に迫られているようだ。実際に米国では、議会で景気対策の一環としてデジタルドルを利用すべきだとの議論が行われているのに加え、民間ではVISAが新技術の特許を申請しCBDC実現に向けたインフラ開発を進めている。中国政府は冬季オリンピックが開催される2022年をデジタル人民元の発行年と定め、ビットコイン(Bitcoin)のマイニングメカニズムを国立大学のテストに出題するなど仮想通貨の受け入れ体制を着々と整えているが、日本政府はどのような動きに出るのか、今後も当局の取り組みを見守っていきたい。
作成日
:2020.07.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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