作成日
:2020.01.03
2021.08.31 15:33
中国政府は中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】導入に向けた法整備を目的に、2020年1月1日付で暗号法と呼ばれる新しい法律を施行した。
地元メディアの報道によると、中国政府は昨年10月にこの法案を可決しており、存在し得る暗号化技術を核心暗号、一般暗号、商用暗号の3種類に分類し、これらの利用を厳格に管理する狙いがあるという。仮想通貨は商用暗号に属すると考えられ、この法律が実際に機能すれば、中国人民銀行(People's Bank of China)【以下、PBoCと称す】はCBDCの導入にまた一歩近づくと言えるだろう。
当初は昨年中に発行を予定されていたデジタル人民元だが、PBoCはCBDCの運用テストを実施するだけに留まっており、同行の計画は2020年に延期されている。中国政府はデータ改ざんのリスクを防ぐためにこの暗号法が必須だと言及し、PBoCのプロジェクトを支援する方針を示した。これに加え、国内の仮想通貨市場ではPenghua FundがブロックチェーンETFを申請するなど、習近平国家主席の仮想通貨採用を促す発言を受け、仮想通貨関連テクノロジーへの投資が拡大しているようだ。
今の所、中国政府はPBoCのプロジェクトを軸に世界の仮想通貨市場をリードしているものの、マーシャル諸島政府が仮想通貨プロジェクトを立ち上げたことからもわかるように、仮想通貨分野の覇権をめぐる争いは各国政府を巻き込んで激化している状況だ。今回の中国政府による暗号法の施行には、国内での仮想通貨開発を加速させる意図があるようだが、今後も同国での展開に注目していきたい。
release date 2020.01.03
現在、中国ではキャッシュレス決済やオンラインバンキングなどの金融サービスだけでなく、様々なシーンで暗号化技術が利用されており、システム全体を保護する上でその重要度が増しているという。これに対して中国政府は国家基準の暗号化アルゴリズムであるSM3を開発し、6億人のユーザーを抱える送金ネットワークや、4億人が利用する高速道路のモニタリングシステム、10億人に影響する銀行の承認システムを保護することに成功している。今回、中国政府が暗号法を施行した背景にはこのような基幹システムにおけるハッキングなどの危険性を排除する目的があるようだが、中国内では当局の監視が強まることに対して仮想通貨コミュニティを含む多くの人々が警戒心を露わにした。暗号法の内容に個人のパスワードに関する記述は見当たらないものの、将来的にその適応範囲が拡大される可能性もあるだけに、今後も中国政府の動向を見守る必要があると言えるだろう。
作成日
:2020.01.03
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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