作成日
:2020.07.03
2021.08.31 15:32
イーサリアム(Ethereum)ネットワークにおける手数料(GAS)が高騰し、その改善策としてEIP(Ethereum Improvement Proposal)1559への期待が高まっているようだ。
現在、イーサリアムの手数料メカニズムは上手く機能しておらず、先月、あるユーザーが130ドル相当のETHを送金した際に送金額の200万%にあたる260万ドルの手数料を支払ったことに加え、別のユーザーも86,400ドル相当の送金に対して同等の手数料を課せられているという。これに関してイーサリアムは、偶発的なトラブルまたはウォレットの誤作動が原因と説明したものの、一部では手数料支払いを介したマネーロンダリングや不正行為の可能性があると指摘されている。この手数料はマイニングプールであるBitflyとSparkpoolが獲得しており、両社はこれらを返還するための方法を模索していると伝えた。
HyperSphereの創設者であるEvgen Verzun氏は、この問題がイーサリアムのトランザクションシステムに起因すると言及し、取引完了を急ぐユーザーが必要以上に割高な手数料を支払う仕組みになっていると指摘した。また、OKCoinのコンテンツディレクターであるOlivia Lovenmark氏は、多くのウォレットが手数料の見積もりを事前に表示する機能を備えているが、それが100%正確な訳ではなく、結果的にユーザーが過大なトランザクションコストを支払わされるケースもあると語っている。これに対し、トランザクションコスト削減を目的としてイーサリアムはEIP1559の実装を検討しているという。EIP1559が正式に採用されるかは明らかにはなってないが、イーサリアムコミュニティではこれが将来的に不可欠であると感じているようだ。
EIP1559では、ネットワークにおけるトランザクション量と利用量に基づいて手数料を自動的に調整するシステムが用いられ、BASEFEEと呼ばれる市場レートを導入するという。イーサリアムユーザーはBASEFEEを参照してトランザクションの実行を判断すると同時に、FeeCapで取引手数料の上限を設定できるようになる。これによりイーサリアムは手数料を容易に最適化することが可能となるが、BASEFEEはETH建てで支払われるため、長期的には同仮想通貨のデフレを促進する要因になり得るとの懸念もあるようだ。
これに加え、EIP1559はセキュリティ上の懸念も抱えており、実装までにクライアントソフトの更新や仕様監査、デバッグなどのプロセスを経て検証を行わなければならない。イーサリアムの開発者達はコミュニティに開発資金の援助を求めているようだが、同プロジェクトは最終的にEIP1559の実装を実現することができるのか、今後もその動向を見守っていきたい。
release date 2020.07.03
これまでイーサリアムはETH2.0への移行に向けてハードフォークを重ねてきたが、それがシステムを複雑化させており、結果的に各方面で様々なリスク要因が生まれている。最近ではクライアントソフトであるGethへの依存度が高まっていることを背景に、イーサリアムは次期ハードフォークを延期するなど、ブロックチェーンのアップデート計画に遅れが目立ってきているようだ。そもそもハードフォークを繰り返す行為自体がブロックチェーンシステム全体のリスクとなり得るが、既にイーサリアムは数千単位の仮想通貨プロジェクトや分散型アプリをホストしており、次々と浮上してくる問題へ対処する必要に迫られている。過去にイーサリアムはハードフォーク実装のテストネットが停止するなど、トラブルに見舞われた経緯があるだけに、システムの可用性を担保することが今後の課題になってくると言えるだろう。
作成日
:2020.07.03
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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