作成日
:2020.07.02
2021.08.31 15:33
イーサリアム(Ethereum)はクライアントソフトであるGethへの依存から脱却するために、次期ハードフォークのベルリン(Berlin)に関連する作業を今年8月まで延期し、その他クライアントソフトがシェアを獲得する機会を与えることを決定した。
現在、イーサリアムには11種類のクライアントソフトが存在しており、その中でGethは79%ものシェアを占め、昨年12月からその比率が5%上昇しているという。イーサリアムはPoS(プルーフ・オブ・ステーク)ベースのマイニングアルゴリズムを採用することを目的に、ETH2.0への移行および現行のブロックチェーンの継続的なアップデートを行う見通しだが、イーサリアム開発者達はGethに依存する現状に危機感を抱いているようだ。クライアントソフトの多様化はネットワーク全体にとってポジティブな要素になると考えられるため、イーサリアムはGo、Solidity、Java、JavaScript、Pythonのプログラミング言語をサポートしている。
しかしながら各プログラミング言語には欠点があり、ネットワークをアップデートする際にそれがバグとなって現れる可能性があるという。イーサリアム開発者のAlexey Akhunov氏は、Gethへの依存度が高くなりすぎている事実を指摘し、その他クライアントソフトがシェアを獲得することがリスク分散につながると言及した。昨年12月、Parity TechnologiesはイーサリアムのクライアントソフトであるParity Ethereumを廃止しており、ConsenSysのGnosisが資金供給するDAO(自律分散型組織)がOpen Ethereumという名称でプロジェクトを引き継いだものの、既にノードの60%近くを失っている状況だ。
Gnosisの創設者であるMartin Köppelmann氏は、複数のクライアントソフトが33%以下の比率でシェアを分け合うことが理想的だと語っている。イーサリアム開発者達はGethに技術的問題が発生することを懸念し、ETH2.0の立ち上げを遅らせてでも多様なクライアントソフトが共存できる環境を構築しようとしているようだ。ビットコイン(Bitcoin)などの主要な仮想通貨と比較すると、イーサリアムは頻繁にハードフォークを行なっているのに加え、多くの分散型アプリ(DApps)をホストしていることから、クライアントソフトが重要な役割を担っていると言えるだろう。
イーサリアム開発者のGreg Colvin氏は、クライアントソフトの寡占化がビジネス上の問題になり得ると説明し、Geth以外のクライアントソフトとの連携を強化すべきだと主張した。Gethの開発責任者であるPéter Szilágyi氏は、ブロックチェーンが24時間年中無休で稼働していることが責任をより重大なものにすると語っているが、イーサリアムは健全なシステムを維持できるのか、今後も同仮想通貨プロジェクトの動向を見守っていきたい。
release date 2020.07.02
仮想通貨市場で第2位の時価総額を誇るイーサリアムは、その汎用性の高さから様々な仮想通貨プロジェクトに利用されており、幅広い分野でエコシステムを拡大している。最近では大手仮想通貨取引所のOKExがイーサリアムオプションの提供を開始するなど、デリバティブ市場でも原資産として活用され、大量の取引需要が生じているという。また、金融業界ではスイスの大手銀行であるデューカスコピーがイーサリアムによる入出金サービスを開始しており、法定通貨との等価性も認められ始めている状況だ。その他には、先日、ステーキングプログラムの立ち上げを発表したMaticもERC-20を規格としたネイティブトークンを発行し、注目を集めている。このようにイーサリアムのPoS移行は仮想通貨市場だけでなく、同仮想通貨を採用する企業やプロジェクト全体に関わる重要なイベントとなっているだけに、失敗は許されないと言えるだろう。
作成日
:2020.07.02
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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