作成日
:2020.06.23
2021.08.31 15:33
過去10年間、フィンテック分野は電子署名やブロックチェーン、人工知能、クラウドコンピューティングなどの登場で劇的な発展を遂げており、金融業界に新しい5つのトレンドを巻き起こしている。
近年、多くの仮想通貨関連企業が誕生しているが、これを背景に金融活動作業部会(Financial Action Task Force)【以下、FATFと称す】が仮想通貨と仮想通貨サービスプロバイダー(Virtual Asset Service Providers)【以下、VASPと称す】を定義するガイダンスを公開したのに加え、米国の金融犯罪捜査網(Financial Crimes Enforcement Network, FinCEN)などの金融情報機関(Financial Intelligence Units, FIU)がそれに準ずる動きを見せているようだ。FATFのTravel Rule(送金時に個人情報を提供する規定)および決済とカストディに関する規制は、数十億ドル規模のVASPへのコンプライアンス基準を定めているという。現在、大手仮想通貨取引所のバイナンスは四半期で数十億規模の売上を計上しており、ブラジルで決済サービスを開始したFacebook(フェイスブック)のWhatsappなども初年度に87億ドル、2年目に170億ドルの売上を記録したと推測されている。これらの企業やFacebookのリブラ(Libra)は間違いなくVASP規制の対象となるため、それに準拠した健全な経営を行うことが求められると言えるだろう。
多くのフィンテック企業はコンプライアンスコストを最小限に留める傾向があり、証券の登録やその免除申請、疑わしい活動の文書化と報告、顧客確認(KYC)、サイバーセキュリティコンプライアンスの維持など、手間のかかる作業をデジタル化しているという。また、FinTRAC(カナダ版のFinCEN)も、REST APIおよびバッチレポートシステムを構築し、そのプロセスをデジタル化することで新型コロナウイルス(COVID-19)の感染や法的リスクなどの排除を試みている状況だ。こうしたデジタル化は、規制当局の監査や監督、調査活動をサポートする狙いもあるようだ。
各国の規制当局は自然言語処理やビッグデータ、機械学習などの最先端技術を取り入れており、効率的に市場を監視することができるようになった。実際にシンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore, MAS)やブリティッシュコロンビア証券委員会(British Columbia Securities Commission, BCSC)などは、ライセンス要件の遵守や報告義務を果たさないデジタル企業を積極的に摘発しているという。この規制当局の変化は、結果的に企業やエンドユーザーを煩雑なコンプライアンス業務から解放することになると考えられる。
これまで電子署名やテレビ会議、デジタルオンボーディング、デジタルID、デジタル公証人などの利用には多くの制限があった。しかしながらこれらの技術が容易に利用可能となったことから、Nasdaq(ナスダック)やCartaなどは私募市場へのアクセスを拡大する方向にシフトしている。通常、数週間から1カ月かかる決済や証券取引、顧客確認、マネーロンダリング防止【以下、AMLと称す】などの報告業務がデジタル化され、瞬時に処理できるようになったという。
世界的に金融業界では顧客情報を管理および保護することの重要性が高まっており、GDPR(General Data Protection Regulation)やSCA(Strong Customer Authentication)、IAM(Identity and Access Management)などの規定が設けられている。企業はこれに対応するために複雑なウェブツールを構築し、バイオメトリクス認証やプッシュ通知、詐欺防止機能、AML機能などを取り込んでコンプライアンスの強化を実現しているようだ。従来の米国企業はクライアント毎に最大で年間3万ドルものコンプライアンス費用を費やしているが、フィンテック分野の企業はこのコストを大幅に削減することに成功している。実際にSalesforceやBloomberg LEI、Apple(アップル)のApp Storeなどのテクノロジープラットフォームはその5%未満のコストで同様の機能を保持しているという。
これらのトレンドは保守的な金融業界に急速な変化をもたらしているだけに、今後もその動向を注視していく必要があると言えるだろう。
release date 2020.06.23
近年、金融業界におけるテクノロジーの影響力が増しており、世界中でフィンテック企業への投資が加速している。実際に東南アジアではシンガポールのフィンテック業界に多額の資金が流入するなど、それが同国でのイノベーションと経済発展を牽引するメインエンジンとなっているようだ。その他にもリップル社は、仮想通貨業界のAmazonを目指すという目標に向けてブロックチェーンを活用した国際送金ネットワークを拡大しており、銀行を取り巻く環境が徐々に変化し始めているという。この流れを受けて米国ではCFTC元会長がデジタルドルの重要性を示唆するなど、仮想通貨の利用を支持する声が高まっている。もはやこのテクノロジーによる革新は止めることのできない段階まできていると考えられるが、金融業界はどのように発展していくのか、今後もその展開を見守っていきたい。
作成日
:2020.06.23
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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