作成日
:2020.02.25
2021.08.31 15:33
大手コンサルティング会社のAccenture(アクセンチュア)によると、シンガポールのフィンテックおよび仮想通貨業界には、国内外の投資家から多額の資金が流入しており、その総額が2019年9月末時点の前年同期比で69%増となる7億3,500万ドルに達したことが明らかになった。
シンガポール政府のイニシアチブであるスマートネーションは、多くの分野でデジタルイノベーションを牽引しており、国内市場への投資を促進しているという。その額は昨年9月末時点で2018年の6億4,200万ドルを超えた一方で、案件数は133件から94件にまで絞られているようだ。これは業界が成熟期を迎えていることを意味する。また、今年に入ってシンガポールでは、新しくPSA(Payment Services Act)が施行されたことなどから、フィンテックおよび仮想通貨業界の継続的な成長が期待されている。
MarketOrdersのCOOであるSukhi Jutla氏は、シンガポールがマルタやスイス、ジブラルタルなどと同様のアプローチで投資を促してきた経緯に触れ、アジア市場への参入を検討する企業にとって戦略的に重要な場所になっていることを強調した。その上でJutla氏は、PSAがシンガポールのフィンテックコミュニティを後押しすると言及している。実際に今年1月に施行されたPSAは、仮想通貨取引所や決済サービスプロバイダーを含む仮想通貨関連企業を対象としたライセンス制度の導入を実現し、シンガポール金融管理局(The Monetary Authority of Singapore)【以下、MASと称す】の管理体制を強化することに貢献しているようだ。これに関してMASのマネージングディレクター補佐であるLoo Siew Yee氏は、実態に即したリスクに合わせた規制を構築することで環境の変化に柔軟に対応できるようになったと述べ、急速に発展する仮想通貨市場を、当局がルールを明確に保ちながらサポート可能なことを示唆した。
これまで世界各国では、仮想通貨市場に対する規制の不明確さがその発展の妨げになってきたという。例えば、CRUXPayおよびCoinSwitch.coのCEOであるAsish Singhal氏は、EU(欧州連合)が単一の法律で既存の金融業界と仮想通貨業界にアプローチしており、領内の仮想通貨関連企業が撤退する要因になっていることを指摘した。一方、Singhal氏はシンガポールがPSAを通じて対照的な方法で仮想通貨市場をコントロールしていることを賞賛し、国際的に魅力的な市場環境を整えつつあると評価している。現にオーストラリアの取引所であるIndependent Reserveが、PSAの成立でシンガポールに事業を展開することを決定したのに加え、大手取引所のバイナンスがシンガポールでサービス開始するなど、多数の企業が同国への進出を実現しつつある状況だ。この現状に対してJutla氏は、バイナンス(Binance)のような信頼できる取引所が進出したことが、シンガポールにおけるフィンテックおよび仮想通貨業界の景観を様変わりさせる可能性があるとコメントした。
これに加え、Jutla氏は韓国や香港、中国を含むアジア諸国がブロックチェーン技術の早期採用を試みているため、シンガポールがこの分野をリードする存在になったとしても不思議ではないと述べている。同じくビットコイン(Bitcoin)協会の東南アジア地域担当を務めるElla Qiang氏も、シンガポールの金融業界がその実利用を模索しており、同国のフィンテックおよび仮想通貨市場に大きなチャンスが眠っているかもしれないと、前向きな見解を示しているようだ。実際にシンガポールのフィンテック企業は海外市場にも目を向け、インターネットにアクセスできる成人の69%がフィンテックテクノロジーを利用している中国や、52%が利用しているインド、インドネシア市場をターゲットに拡大しているという。特に移民による送金サービスに対する需要が高まっており、銀行送金に代わる効率的かつ安価なブロックチェーンベースのソリューション登場が望まれている。
今回、シンガポール政府がPSAを成立させたことで、国内では仮想通貨の実利用が更に拡大していく可能性がある。将来的に世界各国で仮想通貨やブロックチェーンの開発競争が加速していくことが予想されているが、シンガポールの仮想通貨市場ではどのような動きが見られるのか、今後もその展開を見守っていきたい。
release date 2020.02.25
これまでシンガポール政府は、新興市場を統制するために規制環境を整備するだけでなく、新しい事業の創出を目指して規制のサンドボックス制度を導入し、スタートアップ企業による実験的な試みを積極的にサポートしている。先日もMASのサンドボックス制度の管理下にあったSynOptionがFXオプション取引プラットフォームをリリースすることに成功しているという。また直近では、規制のサンドボックス制度を修了すると同時に、RMO(Recognised Market Operator)およびCMS(Capital Markets Services)のライセンスを取得したiSTOXがMASの承認を受けて正式始動したばかりだ。シンガポール政府は、成長が見込まれる同分野の産業発展に尽力する意思を明確にしているが、これがどのような成果を生むのか、今後も当局の取り組みに注目していきたい。
作成日
:2020.02.25
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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