作成日
:2019.07.10
2021.08.31 15:26
今年4月、シンガポールで仮想通貨取引サービスをソフトローンチしたBinance【以下、バイナンスと称す】だが、今月10日、Vertex Ventures【以下、Vertexと称す】およびVertex Ventures Southeast Asia and Indiaと共にBinance Singaporeによる仮想通貨取引サービスを正式に開始することを発表した。
これまでバイナンスはFAST(Fast and Secure Transfers)と呼ばれる電子取引システムを採用した仮想通貨取引プラットフォームを介して、シンガポールで法定通貨と仮想通貨の取引サービスを試験的に提供してきた。シンガポール政府が仮想通貨市場の拡大や金融分野でのイノベーションを歓迎していることもあり、その期間中、Binance Singaporeのユーザーベースは20%増加し、日間取引量も大きく上昇したという。
ここ数ヶ月の間、シンガポール政府は仮想通貨やブロックチェーン分野の成長を促すために、積極的な政策を推し進めており、最近では、シンガポール内国歳入庁(IRAS)が仮想通貨にかかる消費税の免除を議会へ提案することを表明した。既存の規定では、購入者と販売者の両方が仮想通貨取引において消費税の対象となっていたが、この案が可決されれば二重課税の問題を解消できるだけでなく、仮想通貨決済に対する心理的な障壁が取り払われることになる。このようにシンガポール政府は、仮想通貨に友好的な市場環境を構築し、ここ2年間で多くの仮想通貨関連企業の誘致に成功している。
シンガポール政府の方針についてバイナンスのCEOであるChangpeng Zhao氏は、以下のようにコメントした。
シンガポール政府は仮想通貨に対して深い理解を持ち、金融分野でのイノベーションを先導しています。今の所、我社の見立てでは、次の革命はシンガポールから始まり、同国は主要な市場へと成長するでしょう。需要の拡大と規制環境の整備を両立させることが理想的ですが、後者がより重要で取り組みやすい課題だと言えます。我社は厳格な規制を遵守し、シンガポールやその他の市場で後発企業が参入しやすい環境を整えたいと考えているのです。
Changpeng Zhao, CEO of Binance - Binanceより引用
ビットコイン価格が1万ドルを突破したりと、昨年から続く仮想通貨市場の低迷が終わりを迎えたことから、カストディサービスや機関投資家向けの商品や仮想通貨、OTC取引などを提供する仮想通貨関連企業の業績に大幅な改善が見られる。しかしながら、韓国や米国、英国、日本などの主要な仮想通貨市場以外では、仮想通貨取引に関するソリューションや規制が欠如しているのも事実であるため、躍進を続けるバイナンスにはこの現状を打開することを期待したい。
release date 2019.07.10
今回、バイナンスの現地パートナーとなったVertexは、シンガポールの政府系大手ベンチャーキャピタルであり、東南アジア、米国、中国、インド、イスラエルの拠点から、フィンテックやインターネットサービス、エンターブライズテクノロジー分野のスタートアップ企業に積極的な投資を行っている。そのポートフォリオには大手配車アプリを展開するGrab(グラブ)なども含まれているが、最近ではヘルスケア分野への投資を拡大しているという。今回、Vertexがバイナンスに出資した背景には、仮想通貨やブロックチェーン技術の発展を望むシンガポール政府の意向も見え隠れしているものの、同社はバイナンスの高いコンプライアンス意識や多角的な事業方針、テクノロジー開発の有効性を評価しているようだ。シンガポールでの正式なサービス開始に漕ぎ着けたバイナンスだが、今後は同国でのサービス強化および仮想通貨の普及に尽力することが求められるだろう。
作成日
:2019.07.10
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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