作成日
:2019.07.10
2022.01.03 18:28
FX関連テクノロジープロバイダーであるMatch-Trade Technologies LLC(本社:123 Waterleaf, Irvine, CA 92620, United States
)は、FXトレーダーからの人気が最も高い2大取引プラットフォームであるMetaTraderとcTraderの徹底比較を行った。両ツールそれぞれの特徴を吟味した上で、自動売買を積極的に行う投資家にはMetaTraderを、充実した板情報を基にスキャルピング取引を多用するトレーダーにはcTraderが向いていると指摘すると共に、両ツールともFX取引初心者のニーズを十分満たすことができるとの考えを示した。ロシアのソフトウェア会社MetaQuotes Software Corp.【以下、MetaQuotesと称す】が開発したMetaTraderは、FX業界において世界で最も利用されている取引プラットフォームだ。現在では、トレーダーの間で広く普及している旧型のMetaTrader 4【以下、MT4と称す】と、先進的機能が付帯した最新版のMetaTrader 5【以下、MT5と称す】の2種類が利用可能である。最近ではMetaQuotesがMT5をアップデートして顧客の利便性向上を積極的に図っており、GBE Brokersがヘッジ機能付きMT5をリリースした他、FXFlatがMT5上でユーレックスとCME先物取引を提供開始するなどブローカー各社での利用拡大が進んでいる状況だ。MetaTraderの主な特徴としては、自動売買用プログラムであるエキスパートアドバイザー(Expert Advisor)【以下、EAと称す】を活用したアルゴリズム取引が可能であることや、多言語に対応していることから、世界中のユーザーにとって非常に利便性が高いことが挙げられる。また、同プラットフォームは直感的で使い勝手が良いため、FX投資初心者に適しているといえる。
一方でSpotwareの基幹製品であるcTraderは約10年前にリリースされ、MetaTraderの取扱いシェアには及ばないものの、PepperstoneやIC Marketsなど有力海外FXブローカーによって導入されることで確実に認知度を高めており、最近ではSpotwareは新興ブローカーへのcTrader提供を強化している状況だ。また、SpotwareはcTrader Web 3.3上に新機能を追加するなど、高機能な取引ツールを利用する経験豊富なトレーダーの獲得を望むブローカーに人気がある。cTraderの主な特徴として、マルチ、シングル、フリーの3種類のチャートを用いて市場のトレンドを捉えられると共に、スタンダード、プライス、VWAP(加重平均価格)の3つの板情報を参照することで市場の流動性を的確に把握した取引が可能となっている。また、移動平均やMACD、ボリンジャーバンドなど多岐に亘るインディケータを提供している他、様々なタイムフレームが設定可能だ。その他にも、cAlgoを用いた既成の自動売買プログラムであるcBotsを搭載し、MT4のEAに似た自動売買やインディケータ作成、ストラテジー最適化、バックテストなどの実行ができるとのことだ。
両ツールの相違点を探っていくと、まずユーザーインターフェースに関しては、MT4がシンプルなレイアウト設計であると共に、利用価値の高いEAを搭載している。一方でcTraderはMT4、MT5よりも洗練されたデザインと高い拡張性を誇ることに加え、MT4には付帯していない充実した板情報や高機能な注文システムを利用することが可能だ。また、MT4上で多数提供されているMQL4(MetaQuotes Language4)を用いた既成のEAプログラムを利用すし、経験豊富なトレーダーが提供する取引シグナルやストラテジーをコピーしたトレードを行うことができることも、高い市場シェアの背景のひとつと言えるだろう。しかしながら、MetaQuotesはMT4の一部バージョンに対するサポートを既に終了していることから、今後ブローカー、トレーダーのMT5への移行が更に加速する見込みとなっている。
取引プラットフォームに関しては、MT4とMT5がデスクトップやモバイルアプリを開発しており、特にモバイルアプリは各ブローカー共通のアプリを提供している。一方で、cTraderは独自のウェブプラットフォームを構築し、如何なるブラウザーからでも容易にアクセスすることが可能な他、Macに対応したデスクトップアプリを提供している。更に両ツールともホワイトラベルサービスを提供しており、ブローカーが設定や機能、レイアウトなどをカスタマイズすることができる。特に、MetaTraderはプラグインやサポートアプリを追加することも可能であるため、安定性と認知度の高い取引プラットフォームを導入し独自ブランドのFXブローカレッジサービスを手掛けようとする新興ブローカーにとっては、非常に使い勝手の良い取引ツールとなっている。一方、cTraderで機能拡張を図る際には必ずSpotwareの専門チームが開発を行うことになる。
更に自動売買に関しては、MT4が機能性や取引ツール面において圧倒的な優位性を誇ってい る。個々のトレーダーの投資戦略に合わせてEAをカスタマイズできると共に、既成のEAプログラムが多数提供されていることから、プログラミングスキルを要せず容易に利用することが可能だ。一方、cTraderによるcBotsの提供数は限定的なものとなっている。MetaTraderとcTraderそれぞれが独自の特徴を有していることから、ユーザーにとっては両ツールの相違点を把握した上で、自身の取引ニーズに合致したプラットフォームを選択する必要があると言えそうだ。
release date 2019.07.10
昨今のFX市場の取引高減少と世界的な規制強化の流れにより市場の先行きに不安感が募る中、ブローカーの間では熾烈なトレーダーの奪い合いが行われている。このような市場環境の中、ブローカーはターゲットとする顧客層を限定し、トレーダーが求めるニーズを徹底的にサービスに反映させるターゲティング戦略を活発に展開している状況だ。トレーダーが数あるブローカーの中から取引先を選ぶ際、サポート体制やスプレッドの幅が選択の要素となり得るが、最近では対応しているプラットフォームの重要性が増しているようだ。MT4が圧倒的なシェアを背景に、多くの海外FXブローカーで利用可能となっている中、豊富な板情報を代表とする高機能な取引ツールを必要とする中上級者をターゲットとするブローカーにおいて、cTraderの導入が進んでおり、着実にシェアを拡大しつつある。2010年のMT5開発以降、MetaQuotesはMT4からの利用者の移行を促す政策を進め、一方のcTraderは高まる中上級トレーダーのニーズに合わせて導入が広がるなど、この数年でFXプラットフォーム市場に変革の兆しが現れつつある。ブローカー各社が複数のプラットフォームに対応することで、幅広い選択肢が生まれ、FX市場が更に活性化される事に期待したい。
作成日
:2019.07.10
最終更新
:2022.01.03
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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