作成日
:2019.07.10
2021.08.31 15:26
イラン・イスラム共和国中央銀行【以下、CBIと称す】の技術部門で副責任者を務めるNasser Hakimi氏は、国内でのビットコイン(Bitcoin)などの仮想通貨取引が違法であると明言し、それにまつわる価格変動や階層詐欺などのリスクについて警告している。
Hakimi氏はマネーロンダリング防止最高評議会(Supreme Council on Countering Money Laundering)が仮想通貨取引を禁止していることについて言及すると同時に、国民に対して高いリスクが伴う仮想通貨には関わるべきではないことを助言している。以前からCBIは仮想通貨規制の草案を公開しているが、この草案が仮想通貨市場を完全に規制するのではなく、むしろインドや中国のように違法な地下取引の増加を招く要因となり得ることが懸念されている。一方で、イラン国内では、既に自国通貨の為替レート切り下げの影響から、ビットコインを銀行機能の代替として利用する動きが加速しているという。
また最近、イランでは仮想通貨マイニングの活性化が電力供給を圧迫している状況から、違法性はないものの、当局はマイニング事業者に対する取り締まりを強化し始めている。石油燃料を利用した安価な電力コストが背景にあることに加え、イラン政府がマイニング事業を承認し産業化したことから、国内のマイニング事業が盛り上がりを見せているが、電力が無償で提供されるモスク内に設備を構える事業者が現れるなど、当局はその対応に手を焼いているようだ。加えて、今年に入り17か月ぶりにビットコイン価格は1万3,000ドルを超え高値を記録していることから、ネットワーク上のハッシュレートが記録的な高水準にまで達し、マイニング事業の拡大に拍車がかかっている。
反仮想通貨の姿勢を明確にしたイラン政府だが、ブロックチェーン技術の開発には積極的に取り組んでおり、現在も国内のスタートアップ企業と分散型台帳技術を基礎としたバンキングシステムを構築中だという。Bornaと名付けられたこのプロジェクトは、Linux Foundationが提供するオープンソースプログラムのHyperledger Fabricをベースに、国際送金を実現する金融インフラを開発し、国内の銀行や金融業界に進化を促すことを目的としている。あるアナリストによると、米国の圧力により、イランはSWIFTによる国際銀行間取引が禁止されており、その回避手段としてイラン政府が仮想通貨の利用を試みていると批判されているが、各国政府はこの動きをどのように見るのか、今後の展開に注目していきたい。
release date 2019.07.10
仮想通貨マイニングにかかる電力消費量は年々拡大しており、2018年にはその値がスロベニアの1年分の電力消費に匹敵する水準にまで上昇するなど、世界規模の問題として認識され始めている。これを受けて仮想通貨業界では、膨大な計算処理が必要なPoW(プルーフ・オブ・ワーク)型のアルゴリズムから、電力効率が良いPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へ移行する流れが起きるなど、徐々に意識が変わってきていることがうかがえよう。加えて、仮想通貨プロジェクトを手がけるCoinSharesの報告書によると、仮想通貨マイニングに使用される電力の74%以上が再生可能エネルギーで代替されていることが明らかになっており、自然環境に負担をかけない電力供給スキームが実現しつつあるようだ。特にマイニング事業者が多く集まる中国の四川省では全体の50%にあたるハッシュレートを生み出しているにも関わらず、消費電力の90%以上が再生可能エネルギーで賄われているというから驚きだ。資源が豊富なイランでは、石油エネルギーによる発電に頼っているようだが、マイニング分野の発展を願うのであれば、中国のようにクリーンエネルギーへの転換が必要だと言えるだろう。
作成日
:2019.07.10
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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