作成日
:2018.11.13
2022.10.22 07:53
国際銀行間通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)【以下、SWIFTと称す】は、米国と対立関係にあるイランをブラックリストに追加しており、今月12日からイラン国内の銀行での同協会システムを利用した取引を停止することを発表した。
SWIFTは、世界200か国以上1,1000もの金融機関が利用する国際決済システムだ。
この度、米国の圧力の影響を受け、イラン中央銀行を含む多くのイランの銀行の締め出しが決定されており、このことについて、米国アメリカ合衆国財務長官であるSteven Mnuchin氏は、世界金融システムの健全性を守る上では正しい決定だったと述べている。イランは、SWIFTへのアクセスを絶たれることで、輸出入の決済が不能となることが予測される。5月にトランプ大統領が米国の離脱を表明した共同包括行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)【以下、JCPOAと称す】による経済制裁からの経済状況の回復に支障をきたすことが懸念されており、同国は経済的存続をかけた対策に迫られている。
元金融ブローカーで現ブロードキャスターのMax Keiser氏によると、イランはエネルギー調達に関しては米ドル以外を利用することで米ドル依存を回避しているが、自国通貨の価値を裏付けるためにも、金やビットコインの保有量を高める必要があるという。今回の米国のイランに対する強行策は、米ドルの代替となる資産を保有する重要性を強調した結果となったと言えるだろう。Keiser氏は加えて、この動きは米ドル経済の崩壊を加速すると警笛を鳴らしており、米国はSWIFTをコントロールすることで、世界経済の米ドル離れを急速に進めようとしていることにも言及している。
既にロシアや中国などは、米ドル依存の状況から逃れるため、数百トンもの金の購入を進めると同時に、SWIFTの代替となるようなシステムの開発にも着手しているという。また、8月にトランプ大統領が新たな制裁を課すことが決定し、米国政府との関係が悪化しているロシアに限って言えば、金の保有量を830億ドル以上に増やすとともに、ロシアが保有する米国債は、3月から5月にかけて960億ドルから146億ドルまで大幅に減少している。
この状況について、Keiser氏は以下のようにコメントしている。
世界は、米ドルの狂気とも言える時代が終わることを切望しています。金やビットコインによる金融体制は、米ドル経済の終わりを意味します。SWIFTの代替となるシステムの開発は比較的簡単ですが、世界経済の惰性が問題と言えるでしょう。
Max Keiser, Broadcaster - RT.comより引用
8月にEUの首脳国は、JCPOAの救済措置として、米国主導の経済制裁から企業の自由を守る法律を制定したことにより、SWIFTは規則違反として罰金を受ける可能性が指摘されている。欧州ではイランとの国交を継続させるために、代替となる決済システムの開発が進んでいるが、少なくとも数か月はかかる見通しだ。
release date 2018.11.13
米国は、イランや北朝鮮、ロシアなどの敵対する国や地域に対して、幾多もの経済制裁を実施してきた。対象となった国は、外国からの投資や輸出入が停止することによる経済的な実害を受けてきたが、近年、ビットコインなどの仮想通貨の利用により、それを回避する手段が確立されつつある。例えば、今年9月には、米国が支持するイスラエルと戦闘状態にあるパレスチナではビットコインがライフライン化しており、ガザ地区やヨルダン川西岸地区の住民は、外国からサービスや商品を購入するためにビットコイン決済を活用していることが伝えられている。また、ある報告書では、度重なる核ミサイルの発射や核実験などで、米国を中心とした経済制裁網の中にあった北朝鮮で仮想通貨を金融制裁の回避策として利用していることも明らかにされた。ビットコインや仮想通貨の利便性の高さやボーダーレスな特性は、特に米国などにとっては制裁を無効化する厄介な存在となっていると考えられるが、多くの民間人を救っている正の側面を持つこともまた事実で、一概に悪だとは言い難いだろう。
作成日
:2018.11.13
最終更新
:2022.10.22
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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